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髑髏天使

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第五話 襲来その十二


「闘うのがやっぱり最高のゲームだからね」
「ごたくはいい。はじめるのだな」
「うん」
 にこりと笑って頷いてみせた。
「そうだよ。じゃあいいね」
「よし」
 牧村はその両手を拳にし己の胸の前にやった。
「それならばだ」
「僕もね」
 烏男はその顔を徐々に烏のものに変えていく。それと共に背中には翼が生える。牧村は胸の前で両拳を打ち合わせた。眩い光が彼を包み髑髏天使となった。
「行くぞ」
 右手を一旦開き握り締めてからまた言った。
「貴様の大好きなゲームのはじまりだ」
「早速行くよ」
 もうあの弓矢を取り出して来た。早速何本も放つ。彼の周りに少しずつ烏達が集まって来る。
「今度はね。前とは違うよ」
「どういうことだ」
 髑髏天使は剣をその手に持ちつつ烏男を見上げて問い返した。
「何かあるというのか」
「そうだよ。羽根を一杯用意してくれているからね」
「用意してくれている?」
「ほら」
 楽しげに周りの烏達を見ながらまた言葉を出す。
「皆がこうして」
「むっ!?」
「羽根をプレゼントしてくれているからさ。だから幾らでもあるんだよ」
「そういうことか」
 見れば彼の周りを舞う烏達はその黒い羽根を次々と舞わしている。烏男はそれを手に取り弓矢に変えて放っているのだ。時折手裏剣にもして投げて攻撃に変化を持たせている。
 この空からの攻撃に対して髑髏天使は避けるしかできない。前後、そして左右に激しく動き手裏剣に弓矢をかわす。その度にアスファルトが無残に刺し貫かれていく。
「やっぱり動きはいいね」
「敵を褒めても何にもならないが」
「それでもだよ」
 相変わらず楽しむように述べてきている。
「動きがいいのは確かじゃないかい?」
「貴様はそう思うか」
「うん。テニスだね」
 彼のフットワークを見つつ言った。
「その動きは」
「やはり人間の世界での暮らしが長いようだな」
「っていうか生まれた時からずっと人間として生きているんだけれどね」
「生まれた時から?」
「そうだよ」
 橋の上に立ったまま楽しそうに語っている。
「人間としてね。生きてきているんだよ」
「そういえば前に言っていたな」
「だってさ。その方が便利じゃない」
 まるでゲームを楽しむようににこにことした言葉だった。
「人間が多いんだから人間の姿でね」
「そういうことか」
「そうだよ。別に悪いこともしていないけれどね」
「信用できんな」
「わかってないなあ。魔物だってさ、人を取って食べるわけじゃないし」
「人を取って食べるわけでもないのか」
「少なくとも僕はそうだよ」
 本人の言葉ではそうであるらしい。
「人間を襲ったり食べたりする魔物じゃないからね」
「ではどうして俺と闘う?」
「力が欲しいからだよ」
 これは博士から聞いた通りだった。魔物は髑髏天使の力を欲して彼の前に現われ闘いを挑む。烏男もそれはまた同じなのであった。
「それはね」
「力を手に入れるか」
「神様になるんだよ」
「神に!?」
「そうだよ。僕達の神様に」
 声はここでも楽しそうに笑っている。
「なる為さ。君の力を手に入れてね」
「神が何なのかわかりはしないが少なくとも俺の敵なのはよくわかっている」
「それだけわかればいいんだ」
「他のことはおいおいわかればいい」
 実に割り切ったものであった。
「今はな。貴様を倒すだけだ」
「そう。じゃあ」
 烏男は髑髏天使の今の言葉を受けて漆黒の翼を羽ばたかせてきた。そしてそれと共に天高く舞いそこから再び攻撃に入りだした。 
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