髑髏天使
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第三十四話 祖父その十二
「そしてだ」
「そして?」
「見逃すつもりもない」
「じゃあやっぱり」
「少し行って来る」
一歩前に出ての言葉だった。
「御前はそこで見ていろ」
「危ないから?」
「そうだ」
当然のことだった。何しろ相手は三人だ。それだけの数を相手に妹を巻き込む訳にはいかない、これは当然の判断であった。
「だからだ。見ていろ」
「わかったわ。じゃあ」
こうしてだ。そのゴロツキ達のところに行く。そうして言うのだった。
「おい」
「何だ?」
「邪魔するんかい」
「まさかとは思うがな」
「そのまさかだ」
牧村は素っ気無く言葉を返した。
「それでここに来た」
「おいおい。ヒーロー気取りかい」
「またええかっこしいが来たな」
「何のつもりやっちゅうねん」
「格好をつけるつもりはないが」
こう断っての言葉であった。
「貴様等は好きにはなれない」
「ああん!?じゃあ御前からやったるわ」
「こら、覚悟せい」
「ほなやったるわ」
「ここまでの展開はマニュアルだな」
牧村は自分に向かって来た三人に対して落ち着いて返す。
「だが」
「だが!?」
「次の言葉は何やねん」
「ここからも同じだな」
こう言うのだった。
「マニュアル通りだ」
「何がマニュアル通りや」
「ふざけるなや、こら」
「しばくぞ」
「生憎だがやられることはない」
牧村は彼等の前から一歩も動くことはない。そのうえでの言葉だった。
「それを見せてやる」
「ほなしばくわ」
「何か御前見てたらむかつく」
「折角ガールハントしようと思ってたところにな」
その向かって来る彼等に対してズボンのポケットに両手を入れたままの姿勢でいる。そして一人が来るとだった。
よけた。それだけだった。だが相手はそれで前のめりにこけてしまった。派手に前に転倒して顔をアスファルトに激しく打ちつけてしまった。
「いててててて・・・・・・」
「て、手前!」
「何しやがった!」
「何もしていない」
こう返すだけだった。
「俺は何もしない」
「何っ!?」
「何もしねえだと!?」
「そうだ、何もしない」
また言う彼だった。
「俺は何もだ。御前等程度にはな」
「程度やと!?」
「俺等程度っちゅうんかい」
「そうだ。御前等程度だ」
牧村の言葉は変わらない。
「その程度だ」
「この野郎」
「ふざけんなや!」
一人が右の拳を振るって向かう。だがその彼に対してもだ。
身をかわすだけだ。すると相手はそれでまた前にこけてしまった。牧村はそのまま動いて最後の一人の前に来た。
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