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髑髏天使

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第三十二話 変貌その八


「頑張って下さいね」
「有り難う、それじゃあ」
「そういうことで」
 こうして二人をジェットコースターに向かわせた。彼女は笑顔でそれを見送る。そんな楽しい時間を過ごす三人であった。
 そしてそれが終わりであった。牧村は家でくつろいでいた。トレーニングも終わり今は落ち着いていた。
 リビングでテレビを観ている。するとそこにまた未久が来て声をかけてきた。
「ねえ」
「何だ?今度は」
「今度って何よ」
「昼あれだけ声をかけてきたからだ」
 だから今度だというのだ。
「それで何だ?」
「お風呂もう入ったわよね」
「今出たばかりだ」
「そうよね。じゃあ次入るわよね」
「そうすればいい」
「お父さんもお母さんも入ったのかしら」
 兄の言葉を聞きながらふと両親のことも考えるのだった。
「どうなのかしら」
「入ってもう自分達の部屋に入った」
「いないと思ったら」
「俺ももう少ししたら寝る」
 彼もそうするというのだ。
「御前も入ったら湯を落として寝るな」
「最後に洗っておくけれど?」
「別にそれはいいんじゃないのか」
 牧村はそれは別にいいのではないかというのだ。
「そこまでは」
「いや、綺麗にしておかないと駄目だからね」
 これが未久の主張だった。実際に彼女はそこまで考えて動いているのだ。家事もできる範囲でしていっているのである。
「お風呂とトイレは特にね」
「いい心掛けだな」
「だからね。お風呂はね」
「ならそうするといい」
 声はにこりともしていないがそれでも言うのだった。
「綺麗にするのはいいことだ」
「わかったわ。それじゃあね」
「何だかんだ言ってそれでいいっていうのね」
「そこまで言うのならいい」
 テレビから目を離した。そして妹に顔を向けて言うのだった。
「御前がそこまで言うならな」
「そうなの」
「それなら俺はだ」
 テレビに顔を戻す。そのうえで傍にあったリモコンを手に取ってだった。テレビのスイッチを切った。すると画面が暗転してしまった。
「これで寝る」
「あれ、次の番組観ないの」
「夜のニュース番組は観ない主義だ」
「だからなの」
「夜のニュース番組のキャスターは碌な人間がいない」
 だから観ないというのだ。
「観れいれば馬鹿になる」
「極論ね」
「実際に酷い内容だ」 
 それを言う。
「捏造も平気でやるニュース番組なぞ観ても百害あって一利なしだ」
「そんなことがあったの」
「マクドナルドの話だ」
 その時のことだというのだ。
「内部告発者は告発者ではなかった」
「どういうこと?それって」
「俳優だった。マクドナルドの店員ではなかった」
「つまり視聴者を騙そうとしていたのね」
「そしてその俳優は番組のメインキャスターの事務所の人間だった」
 これが事実だから恐ろしい。視聴者を騙し自分達の望む方に世論を誘導しようともくろんでいる番組もあるのである。
「だからだ」
「もうその番組は観ないのね」
「観ているだけで反吐が出る」
 何時になく嫌悪感を露わにする彼だった。
「人間として最低の連中だ」
「最低なの」
「そうだ、最低だ」
 まさにそうだというのだ。
「そんな連中の顔も見るつもりもない」
「そこまで嫌いなのね」
「今日はこれで寝る」
 こう言ってソファーから立った。 
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