髑髏天使
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第五話 襲来その四
「跳躍力も上がっているか。そういうことか」
「跳ぶなんて。まさか」
「しかしそのまさかだ」
急上昇していく。一直線に烏男に向かっている。
「これなら貴様にも直接向かうことができるな」
「くっ・・・・・・」
「行くぞ」
今までは弓矢を叩き落すだけだったその剣を構えなおしてきた。
「受けろ」
剣を繰り出す。だが烏男は咄嗟にさらに上にあがってそれをかわした。髑髏天使の剣は足にも届かず空しく空を切るだけだった。そこが彼の跳躍の頂点で後は落ちるしかなかった。
落下中は身体を烏男に向けた。そのうえで備えていたのである。
「残念だったね」
何とか危機を脱した烏男はとりあえずは胸を撫で下ろしていた。
「危ないところだったけれどね、こっちも」
「抜かった。逃げられたか」
「いやいや、こう来るとは思わなかったよ」
声はまだ笑っているがそこには先程までの余裕はない。
「まさかね。跳ぶなんて」
「甘く見ないことだな」
落下しながらも戦意は落ちていない髑髏天使だった。
「俺はどんな相手でも立ち向かう。それだけだ」
「どんな方法を使ってもだね」
「如何にも」
そしてそれを否定しない。
「何があろうとも。俺は闘う」
「それは立派だよ。けれどね」
ここでまた弓矢を構える烏男だった。
「まだ僕にはこれがあるんだよ。わかるかい?」
「わからないと答えれば嘘になる」
「そうだよね。それじゃあ」
弓を引き絞ってきた。しかし今はまだ放たない。
タイミングを狙っているのは明らかだった。そしてそのタイミングとは。
着地点だった。そこを狙っていた。着地するその瞬間が最も無防備となる。彼が狙っているのはまさにその瞬間であったのだ。
そして今髑髏天使は着地した。その時だった。弓矢が放たれる。その無防備な瞬間に。
「終わりだよ」
烏男の勝利を確信した声が響く。だがここで髑髏天使は。着地すると共にある行動に移ったのだった。
「なっ!?」
「一手も二手も先を読む」
今の髑髏天使の言葉だった。
「それが俺の闘い方だ」
「いいね、賢いっていうのは」
烏男も今の髑髏天使の言葉を褒める。見れば彼は着地の瞬間にすぐに後ろに跳んだ。それで弓矢の攻撃をかわしたのである。単純だが咄嗟にするのには機転がいる行動だった。
弓矢はさらに襲うが髑髏天使はそれも全てかわしていく。そのうちに烏男の攻撃は止まった。
「どうした?俺はまだ生きているぞ」
「悪いけれどもう矢がないんだ」
烏男はこう彼に答えた。
「だから。今は終わりさ」
「終わるというのか」
「そうさ。じゃあまたね」
闘いの後とは思えない明るい言葉だった。
「再戦といこうよ。それでいいかな」
「俺の方は構わない」
髑髏天使の言葉は何でもないといった様子だった。
「別にな。それで」
「それじゃあまたね」
「本当に帰るのだな」
「だからそれは今言ったじゃない」
笑いつつまた髑髏天使に対して語る。
「もう弓矢がなくなったからね。けれど今度は違うよ」
「俺を倒すというのか」
「その通り。それは覚えておいてよ」
「生憎だが都合の悪いことは忘れる主義だ」
無愛想に言葉を返すだけだった。
「悪いがな」
「やれやれ、人付き合いが悪い人だね」
烏男はそんな彼の言葉と態度を見て空中で肩を竦めてみせる。
「そういう態度はどうかなって思うんだけれどね」
「だからといって御前には何の関係も無い筈だが」
「まあね。けれど無駄話も何だし」
ここまで言って完全に姿を消した烏男だった。黒い羽根が羽ばたき烏達と共に姿を消す。後に残ったのは髑髏天使だけだった。しかしその彼もまた烏男が姿を消したのを見て牧村に戻った。とりあえず戦いはこれで終わった。しかしこれで完全に終わったのではないことは彼が最もよくわかっていた。
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