髑髏天使
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第三十話 智天その四
「まあそれはね」
「それは?」
「見間違いは誰にだってあるよ」
こう言ってまた慰めるのであった。
「だから気にしない気にしない」
「忘れていいんだ」
「うん、いいよ」
まさにそうだと言う。
「気の迷い、気のせいだからね」
「そう。それじゃあね」
「それよりもだよ」
さらに言う垢なめであった。
「そろそろお腹が空いてきてない?」
「確かに」
「お菓子はあるかな」
「おお、これじゃこれじゃ」
ここで子泣き爺が笑いながら何かを出してきた。それは。
プティングだった。それを出してきたのである。妖怪達はそれを見て一斉に子泣き爺のところに集まってきた。そのうえでそれぞれ言うのであった。
「いいねえ、それ」
「イギリスのお菓子だよね」
「美味しいんだよね、これって」
「イギリスの食べ物はまずいばい」
一反木綿の言葉である。
「それでもお菓子だけはいけるばい」
「その通りだ」
牧村の彼のその言葉を聞いて頷いた。
「イギリスで美味いものはお茶と菓子だけだ」
「他は?」
「口に入れれば後悔する」
一言であった。
「実際にお袋がイギリスの味付けでイギリスの料理を作ってみたが」
「まずかったんだ」
「そんなに」
「すぐに胡椒とソースをかけた」
そうしたというのである。
「そのうえで我慢して食べた」
「そこまでって」
「それじゃあ本当に酷いんだね」
「食うことは薦めない」
それは断じてだという口調であった。
「絶対にな」
「そうじゃな。わしもじゃ」
そしてそれは博士もであった。彼も言ってきたのである。
「ハギスというのがある」
「ハギス!?」
「何それ」
「スコットランドの名物料理じゃ」
それだというのである。
「簡単に言うとじゃ」
「うん」
「とんでもない代物じゃ」
いきなりこう言う始末であった。
「羊の内臓に野菜だのハーブだのミンチだのを入れたのじゃがな」
「ソーセージみたいなものかな」
「そうかな」
「ちと違う」
それではないと忌々しげに語る。
「むしろプティングに近いというがそれじゃが」
「それなんだ」
「それなの」
「そうじゃ。それでも最早じゃ」
忌々しげな言葉がさらに出されていく。
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