髑髏天使
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第三十話 智天その一
髑髏天使
第三十話 智天
牧村はまた博士の研究室に来ていた。そこでいつもの様に壁に背をもたれかけさせて立ち。そうしてその話を聞いているのであった。
「そうか、これで十一じゃな」
「そうだ。また出て来た」
「ふむ。早いのう」
博士はそれを言ってからまずは腕を組むのだった。そうして考える声で述べた。
「あと一人じゃ」
「これだけ次々に出るというのは」
「考えておらんかった」
そうだと答えるのだった。
「まさかのう」
「博士もか」
「いや、もっとゆっくりと出て来ると思っておった」
これが博士の予想であった。しかし予想は予想でしかなくそれが大きく外れてしまったのである。今はそうなってしまったのである。
「もっとのう」
「もっとか」
「そうじゃ。これはまた」
さらに言う博士だった。
「あれかも知れんな」
「あれとは?」
「君が影響しておるのかもな」
牧村を見ての言葉である。
「君がな」
「俺自身がか」
「君が強くなるのも尋常な早さではない」
そのことを言うのである。
「尋常なものではのう」
「それ程までか」
「そうじゃ。普通ではない」
博士の言葉は続く。
「十年で階級が一つあがるといった具合が普通の髑髏天使なのじゃよ」
「それが今や座天使だからね」
「半年かちょっとでね」
「やっぱり凄いよ」
ここで横でいつもの様に遊んで色々飲み食いをしている妖怪達が話に加わってきた。いつもの様に博士に対しても牧村に対しても砕けたものである。
「そこまでなるってね」
「有り得ない早さだよ」
「その通りじゃ」
博士は妖怪達のその言葉に合わせたまた言ってきた。
「まさにな。このままいくとじゃ」
「さらに上にか」
「左様、智天使じゃ」
この天使のことも話に出してきた。
「それになるのも間近じゃな」
「智天使か」
「どうもここからはじゃ」
「ここからは?」
「勝手が違ってくるようじゃな」
博士は怪訝な顔で述べた。
「どうやらな」
「違ってくるというと何がだ?」
「君は今まで普通の天使じゃったな」
「天使に普通があるのか」
「一つの力を階級があがるごとに身に着け」
牧村に応えながら述べてきた言葉だった。
「そしてその都度色は変わったな」
「そうだが」
「それが今までの天使じゃ。精々」
「大天使になった時だよね」
「そうそう」
ここでまた妖怪達が言ってきた。
「その時に翼が生えてさ」
「剣を持った位で」
「それだけだったけれど」
「智天使はどうやら違うのじゃ」
そうだという博士であった。
「どうやらな。ここから上の二つはだ」
「違うか」
「これは聖書にある話じゃが」
出して来た根拠は聖書である。言うまでもなくキリスト教徒にとっては絶対の書である。そこに信仰の基礎があり全てがあるとも言われている。
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