髑髏天使
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第二十八話 監視その十七
「後ろからだ」
「むっ!?」
「来る。そうだな」
ここで魔物の背に死神の分身が彼の影から出て来た。そうしてその両手に持っている大鎌を振り下ろす。しかしその攻撃は。
「考えてはいる」
「だが、というのか」
「攻撃は来るのがわかっていればどうということはない」
そうだというのだ。
「そう。こうすることができる」
こう言ってであった。魔物の背中からもう一本腕が出て来た。それで防いだのだった。
「そう来たか」
「腕は二本とは限らない」
魔物は誇らしげに二人の彼に同時に言ってみせた。
「それは忘れていたようだな」
「そういえばインドではだ」
「そうだ。腕も顔も何本もあるものだ」
魔物はこう言って笑ってみせた。
「神も魔物もな」
「そうだったな。しかしだ」
「しかし。何だ」
「私は腕を増やすことはできない」
彼はそれはできないのだった。そうした術は持っていないのである。
「それでも闘うことはできる」
「そういうことか」
「それでは私はだ」
また死神が出て来た。三人である。
その三人になってそのうえで攻める。魔物を完全に囲んでいる。
しかし魔物は三本目の手を引っ込めて新たに肩から二本の腕を生やしてきた。左右にそれぞれ一本ずつ、肩まで出して二対の腕を並べていた。
その手には元の手が持っていた斧だけでなく槍を持っていた。右手に槍があり左手には一つに盾を、そしてもう一つには剣を持っていた。
そしてその武器で。三人の死神の相手をするのであった。
三つの武器で攻撃を仕掛け盾で守る。三人を相手に互角に闘っていた。
「腕が四本あればか」
「我等と闘える」
「そうなのだな」
「そういうことだ」
まさにそうだと答える魔物だった。
「俺の力を見たな」
「確かにそれはだ」
「見させてもらった」
「それは確かだ」
死神達はそのことは認めた。
「だが。ここで一つ言っておこう」
「何をだ?」
「私は三人だけではない」
それを言ってきたのである。
「まだ出せる。貴様の腕が四本あるのならばだ」
「むっ!?」
魔物は目の前にいる死神が右に分かれたのを見た。それでまた一人だ。
そのうえでもう二人右に出た。合わせて六人になったのだ。
その六人で彼を囲む。そうして彼に告げてきた。
「これでどうだ」
「六人ならばだ」
「貴様といえど」
「噂だけはある」
魔物は六人の死神に取り囲まれながらも冷静さを崩していない。
そのうえでだった。彼はさらに言う。
「それではだが」
「何をするつもりだ」
「今度は」
「貴様が今の様に増やせるだけではなく」
それだけではないというのだ。
「俺もまた今以上に増やせることができるのだ」
「腕をか」
「腕だけではない」
それだけではない。魔物は自信に満ちた声で言ってみせてだった。
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