髑髏天使
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第二十七話 仙人その十
「何がいいかのう」
「インドのお菓子なんかいいかも」
「確かに」
「いいかもね」
妖怪達もそのインドのお菓子に賛成した。
「たまにはそれもね」
「いいかもね」
「どんなのかな、それって」
「最近では色々なお菓子が食べられるようになった」
博士はそのことを喜んでいるのだった。
「インドもいいのう」
「そうだね。それでね」
「楽しく食べようよ」
そんな話をしているのを背中で聞いて部屋を後にする牧村だった。そうして講義が行われる講堂に行くとそこに仲間達がいた。
「よお、来たか」
「今日は結構早いんだな」
「そうだな」
仲間達に対しても言葉は変わらないのだった。
「いいものを貰ってきた」
「いいものって博士からか?」
「あの悪魔博士か」
この仇名がすっかり校内に定着してしまっている博士であった。
「また何だ?のろいの蝋人形か?」
「それとも髪が伸びる人形か?」
「何だ?」
どちらにしろオカルト関連である。ここに博士の評価が出ていた。
「それ何なんだろうな」
「悪魔の手かも知れないな」
「ああ、あの魔除けのか」
彼等は冗談で言っているのではなかった。本気である。本気で博士がそういうものを彼にプレゼントしたと思っていたのである。
牧村はその彼等にこう告げた。
「食べ物だ」
「じゃあイモリの丸焼きか」
「ヒキガエルの肝臓か?」
「違う。月餅だ」
ここでそれだと言うのだった。
「月餅だ」
「えっ、月餅!?」
「マジですか」
「本当にそんな普通のものなのかよ」
「あの博士がそれをか」
皆それを聞いてさらに驚いた。ここにも博士の評価が出ていた。
「意外と普通のもの食べてるんだな」
「そうだな。それもお菓子か」
「面白いもの食べるな」
「博士は甘いものが好きだ」
このことも皆に話す。話しながら鞄に入れているその月餅を皆に出す。そのうえで彼等のすぐ側の席に座って落ち着くのだった。
「講義が終わってから食べるとしよう」
「よし、それじゃあな」
「皆でな」
彼のその言葉に頷く仲間達だった。流石に教室では食べたりはしない。
その月餅を見ながら。またそれぞれ言う彼等だった。その口は止められなかった。
「しかし。博士が普通のもの食べてるなんてな」
「しかも甘いものが好きか」
「意外だな」
「酒も好きだ」
このことも一同に教えるのだった。
「それもだ」
「っていうと甘党でもあり辛党でもあるのか」
「何でもいけるんだな」
「日本酒だけでなく焼酎やビールやワインも好きだ」
酒の好みまで話す牧村だった。
「そういったものもだ」
「本当に何でもだな」
「そうだな」
皆それを聞いてまた意外な顔になった。
「普通のものを食べるのも信じられないのにな」
「仙人って噂あるからな」
これは高齢故である。
「百歳を超えてるらしいしな」
「悪魔と契約したって噂もあるしな」
「そうそう」
これも悪魔博士の仇名から来るものである。
「他には不老不死の霊薬飲んでるとかな」
「色々な噂のある人だからな」
「特に仙人でもない」
それは牧村もはっきりと知っていることだった。
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