髑髏天使
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第二十一話 人狼その十八
「私の勝ちだな」
「そうね。こうなっては認めるしかないわ」
魔物も遂に観念した言葉を出したのだった。
「もうね。これでね」
「では。倒れるのだ」
また告げる死神だった。
「このままな」
「ええ。私もあがく趣味はないから」
最早言葉に自信も笑みも消えていた。観念だけがそこにあった。
「大人しく受け入れるとするわ」
「魂は燃えるが苦しむことはない」
このことも告げる死神だった。
「そのまま安らかに死ぬのだ」
「そうさせてもらうわ。ただ」
「ただ。何だ」
魔物の今の言葉には反応を見せる死神だった。
「最後の言葉か」
「そうよ。私の蝿達もまた」
今その蝿達が彼女の周りに集まって来た。残っていた蝿達が。
「一緒に連れて行くわ」
「共にか」
「この子達は私そのもの」
こう言うのである。
「置いていっては可哀想だから。それでよ」
「ならばそうするといい」
死神は魔物のこの最期の願いを受けたのだった。
「共にな」
そして鎌を一閃させるとだった。紅蓮の炎はそれぞれ蝿達も包み込んだ。そのうえで魔物も蝿達も紅蓮の炎の中に消えた。死神はこの炎により勝利を収めたのだった。
「さて」
その勝った死神は言うのだった。
「残るはあいつか」
視線をそこにやる。すると髑髏天使はそこでまだ姿を見せない魔物と戦い続けていた。
赤黒い血の槍がまた襲い掛かってくる。それを身を捻らせて裂ける。だが相手は見えないままであった。そう、何処にもいないのであった。
「何処から投げたかさえ掴ませないのか」
「それをしては何にもなりませんので」
声も同じだった。何処から聞こえるのかわからない。
「それでなのですよ」
「そういうことか」
「はい。それでです」
魔物の声だけが聞こえ続ける。
「そろそろでしょうか」
「俺を倒すというのだな」
「そうです。貴方も疲れてきている筈です」
まるで学者の、人間のそれの如く冷静な声であった。
「そうではないですか」
「疲れか」
髑髏天使もその言葉に反応を見せた。
「俺に疲れが見えてきているというのか」
「動きが僅かですが鈍くなっています」
そのことも見ているようだった。
「違いますか」
「言葉でどう言っても動きは否定できないということだな」
「その通りです。貴方の動きは実際に鈍くなってきています」
ここでも冷静で分析し尽くしているかの如きであった。
「ですから。私が勝利を掴めます」
「このままではそうなるか」
髑髏天使もその言葉に応えて述べた。
「だが」
「だが?」
「俺にはまだカードがあった」
あった、というのである。
「今思いついたことだがな」
「思いついたのですか」
「確かに今貴様は見えない」
それは認めるのだった。
「だが」
「だが?」
「見えるようにするやり方もある」
次にこう述べてみせた髑髏天使なのだった。
ページ上へ戻る