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髑髏天使

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第二十話 人怪その二十三


「それはな。どうかな」
「違うというのか」
「力天使が使える力は氷だけではない」
 そしてこうしたことも言ってきた。
「水もあるということを忘れるな」
「水か」
「そうだ。水だ」
 彼は言うのだった。
「水も使える。それを忘れるな」
「ではその水を使ってどうするのだ」
 魔物はその水の力のことをあえて髑髏天使に問うた。
「その水の力を。どうするつもりだ」
「考えはある」
 応えながら再びその両手に持つ剣を構える髑髏天使だった。
「貴様を倒す考えがな」
「面白い。では見せてみるのだ」
 魔物の挑発めいた言葉はここでも出された。
「私をどうやって倒すのかな」
「水はただ出すだけではない」
 髑髏天使はその構えのまま魔物に告げた。
「吸い取ることもその中にあるのだ」
「吸い取るだと?」
「そうだ。こうしてな」
 言いながら左手に持つサーベルを一閃させた。一閃させるとその前に小さな水球が数個出て来た。それはそのまま飛び魔物の周りに来たのだった。
「水の球か」
「その通りだ」
 まさにそれだと魔物にも言葉を返した。
「これはその通りだ。水球だ」
「この小さな水がどうしたというのだ」
 魔物はその一つ目で己の周りを漂う水球を見回した。
「何でもないとしか思えないが」
「今言ったな。水は出すだけではない」
 また言う髑髏天使だった。
「吸い取ることもできるのだ」
「吸い取るか」
「この水球はどれも水分を吸い取っていく」
 髑髏連枝は言葉を続ける。
「周りにある水分をな」
「周りのだと」
「そう。それはあらゆるもののだ」
 また言う髑髏天使だった。
「そして貴様自身のものもな」
「私のだと」
「貴様のその身体」
 まだらミイラのその身体のことだった。
「その柔らかさこそが強さだ」
「それはわかるのだな」
「それ以上のこともだ」
 髑髏天使の言葉はこれまでになく鋭いものになっていた。それはまさに剣の鋭さであった。
「わかったのだ。つまりは」
「つまりは」
「水分を多く含んでいる」
 ミイラでありながらであった。
「だからこそ炎を遮り氷も剣も効かない。水分を多く含みそういった打撃や変化を中和するからだ」
「そこまでわかったというのか」
「そうだ。ならば」
 そこまで読んだうえで答えを出したのである。
「それを吸い取らせ無効化するまでのこと」
「考えたものだな」
 魔物は髑髏天使の今の力をここでも素直に評価してみせた。
「しかしだ」
「これも通じないというのか」
「いや、通じはする」
 言葉は限定したものにさせていた。
「通じはする。しかしだ」
「敗れるというのだな」
「見ればもう私の水分を吸い取り出しているな」
 水球達は既に大きくなりだしていた。何故大きくなるのかは髑髏天使はよくわかっていたし魔物にも容易に察しがつくことであった。 
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