髑髏天使
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第二十話 人怪その八
「登場人物達もな」
「牧村さんらしいね」
「全く」
「左様。食べ物は大事にせんといかん」
そしてここで博士の声も出て来たのであった。
「それができん奴は何かを口にしてはいかん」
「博士もそういう考えなんだね」
「案外厳しいんだね」
「食べ物がなくて死んだ者ものう」
博士の言葉も目の光も昔を懐かしむようなものになった。
「結構見てきたからのう」
「戦争の後にか」
「うむ」
その通りだと牧村に対して答えたのだった。
「そうじゃ。あの頃は大変じゃった」
「そうだな。あの時はな」
「あの時だけじゃないよ」
「昔なんかそういうこと多かったよ」
妖怪達もここでこのことを話すのだった。
「もうさ。飢饉とかになったらそれだけで」
「東北なんか死ぬか生きるかだったからね」
ここで東北の話も出るのだった。実際に東北というと飢饉に苦しめられてきた。また貧しさ故に娘を売るということも非常に多くあったのである。
「それだからさ」
「大変だったんだよね」
またここで顔を見合わせて話をしていた。
「僕達も食べ物がなくなってさ」
「どうしようかって思ったことあったんだよ」
「妖怪ですら食べるものがなかったのか」
牧村は妖怪達の話からそうしたことまで察したのだった。
「飢饉になると」
「そうだよ。人間が食べられないんだよ」
「だったら妖怪だって同じだよ」
「結局僕達は表と裏で共存してるんだし」
そして今度は表と裏という言葉が出されたのだった。
「人間の食べるものがなくなったら」
「僕達だって」
「もうそのまま消えちゃいそうになったよね」
「そうした状況になったのか」
「まあ東北はとりわけそうじゃったな」
博士はここでまた言うのだった。
「日本も地域によって色々とあったのじゃよ」
「それは知っている」
牧村も勉強しているということだ。やはり学生だけはある。
「それぞれでな」
「中には思うように食べられん場所もあったのじゃよ」
日本ではそれが東北だったということだ。江戸時代でも飢饉になればすぐに窮してしまう地域だったのだ。これは戦前まで中々改善されなかった。
「そういうことを考えるとのう」
「食べ物を粗末にする連中は許せないか」
「左様。じゃからわしはあの漫画は持ってはおらん」
そういうことになるのであった。
「全くのう」
「百巻を超えていてもか」
「百巻を超えていようともどれだけ売れていようとも」
博士はわざと素っ気無く言っているようであった。
「そこにあるものが屑ならばその漫画は屑じゃ」
「そうだな。それはな」
まさにその通りだというのだった。牧村にしても。
「俺もあの漫画は読んではいない」
「代わりにあれじゃない?雑誌社は違うけれど」
「ほら、あの顎の大きなお父さんが料理を作る漫画」
妖怪達が進めてきたのはその漫画であった。
「あれはいいよね」
「そうそう。レシピも出てるしね」
彼等はそちらは実に陽気に話し合うのだった。とても明るい感じで。
「かなり面白いよな」
「そうだよね」
「あの漫画は食べ物の有り難さがわかっておる」
博士もまた言うのであった。
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