髑髏天使
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第十九話 人狼その二十
「こういうことだ」
「氷も効かないというのか」
「我の身体は特殊だ」
ここで己の身体のことをまた言ってみせてきた。
「氷もまた通じることはない」
「そしてだ」
ここでその口のような場所から見えている不気味な鞭のようなものを振り回してきた。そうしてそのうえで髑髏天使に攻撃を仕掛けてきたのだ。
鞭は一振りすると忽ちのうちに倍以上の長さになった。その長くなった鞭で斜め上から髑髏天使に攻撃を浴びせてきたのであった。
「くっ・・・・・・」
鞭をかわしきれなかった。右肩にその鞭を受ける。鎧の上からとはいえ焼けるような痛みが彼を襲った。
「これが貴様の攻撃か」
「この鞭で貴様の気を吸い取ることもできる」
それも可能だというのだ。
「それもな」
「その鞭でか」
「そうだ。我はこの鞭で相手を打つとそれだけ気を奪い取ることができる」
「つまり。既にということだな」
「どうだ?今の身体の様子は」
そこから動きはしないがそれでも長い鞭を自由自在に操りながら髑髏天使に問う。
「少し疲れてきたのではないのか」
「さてな」
言葉にも態度にも出さない。その通りだと認めればそこからさらに攻められることがわかっているからだ。この辺りもまた駆け引きであった。
「生憎俺は髑髏天使だ」
「それを受けても平気だというのか」
「一撃で倒せると思うな」
彼はこうも言い返した。
「この俺をな」
「いい言葉だ」
魔物は髑髏天使のその言葉にさらに燃えたようであった。
「これは吸い取りがいがある」
「残念だがそうはいかない」
髑髏天使はその弱みを決して見せなかった。
「やらせてもらう。いいか」
「むっ!?」
「一度受けた攻撃をもう一度受けることはない」
また鞭が来た。今度は髑髏天使から見て左手からだった。彼はその鞭を後ろに下がることでかわした。その間合いを完全に見切ったうえでだ。
「今のはかわしたか」
「こうしてな」
「かわしたのは見事だ。だが」
「だが。何だ」
「だからといって我を倒せるとは思わないことだ」
また髑髏天使に対して言うのであった。
「貴様の攻撃は我には通じないのだからな。我は貴様に攻撃を与え続けそのうえで消耗していくのを待てばいい。違うか」
「攻撃が通じないか」
「違うか」
「確かに今までの攻撃は通じなかった」
彼もそれは認めた。
「しかしだ。斬ることが通じず凍りもしない貴様であっても」
「どうだというのだ?」
「無敵ではない」
髑髏天使は再び両手の剣を構えながら述べた。
「決してな」
「それがどうしたというのだ?」
「方法はあるということだ」
髑髏天使の言葉に動じたものはなかった。
「このような方法もある」
「むっ!?」
魔物が声をあげたその時だった。髑髏天使は跳んだ。そうしてその剣から水を放ってきたのであった。それはごく普通の水であった。
「水だと!?」
「そうだ。水だ」
跳んだのは一瞬だった。飛んでさえいなかった。
「これはな」
水はそのまま魔物に浴びせられた。髑髏天使はそのうえで着地する。彼のそれはとても攻撃を放ったとは言えないものであった。
しかしであった。それでも彼は何かを成功させたような様子であった。やけになったようなものではないことはこのことからわかった。
「何か考えがあるな」
「只の水でもだ」
彼は言うのだった。
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