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髑髏天使

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第二話 天使その十七


「別にな」
「そうか。いいのか」
「話は言葉に関するものではない」
 異形の者、つまり魔物はずいっと前に出た。そのうえで岸辺に手をかけるがその手には鋭い爪と水掻きがある。よく見ればその顔も人のものではなく人と魚の合いの子のようでありまた鱗があった。当然その手にも鱗がありそれが彼を魔物であるとはっきりさせてもいた。
「貴様に関することだ」
「俺か」
「そうだ。髑髏天使よ」
 岸辺から出ながら牧村を髑髏天使と呼んだ。
「貴様に用があるのだ」
「大体言いたいことはわかっているがな」
 構えを保ったままその魔物に言葉を返す。魔物の姿は背中と手に鰭があり足の指もまた水かきと爪がある。どう見ても魔物であった。しかも水棲の。
「俺を殺すつもりだな」
「わかっていたか」
「髑髏天使の話は聞いた」
 その魔物を見据えつつ答える。魔物を前にして今彼は己の中の闘う決意をはっきりと感じていた。
「貴様等を倒す存在だとな」
「では話が早いな」
 魔物もまたそれを聞いて納得したように応えてきた。その口は大きく開かれ鋭い無数の牙が見える。牙は三列にも連なっていた。
「倒してやる。いいな」
「はいそうですかと倒されるとでも思っているのか?」
「抵抗するつもりか」
 今の牧村の言葉に対して問うてきたのだった。
「この半漁人に対して」
「抵抗!?俺がか」
「そうではないのか」
「残念だがそれは違う」
 そのことははっきりと否定するのだった。
「貴様にとっては残念だろうがな」
「では何だ?」
「話は聞いたと言った筈だ。髑髏天使は抵抗する者ではない」
「ほう」
「闘う者だ」
 半漁人の赤い目にも負けない程の強い光をその目から放っていた。そのうえでの言葉である。
「貴様等と闘い倒す者だ。それは勘違いするな」
「では歯向かうというのだな」
「言った筈だ。貴様を倒すとな」
「抵抗しなければ苦しむこともないというのにな」
 また一歩出て来た。
「愚かな奴だ」
「俺が愚かかどうかは闘って見極めるのだな」
 半漁人に応えながら念じる。両手を拳にして胸の前でクロスさせる。この動きは己に気合を入れる為であったがそれにより身体が光に包まれたのだった。
「行くぞ・・・・・・!」
 この言葉と共に光の中で姿が変わっていく。服は鎧となり顔は髑髏となっていく。あの髑髏天使の姿になったのであった。
 その姿になりまずは右手を大きく開く。そのうえで握り締める。その間顔はずっと半漁人から離してはいなかった。
「半漁人だな」
「そうだ」
 半漁人は己の名前を認めたのだった。牧村、いや髑髏天使の問いにこくりと頷くことによって。
「人や他の同胞達は俺をそう呼ぶな」
「同胞か」
「貴様等が魔物と呼んでいる存在だ」
 博士や彼の周りの妖怪達の弁でもある。 
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