髑髏天使
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第十五話 子供その十七
「何の用だ」
「別に」
子供は自分に言葉を返してきた彼に対して素っ気無く言ってきた。
「ただの挨拶だよ」
「挨拶の為にここに来たのか」
「もっとも今のが僕の挨拶だけれどね」
無邪気な、しかしそれでいて何処か残虐さを感じさせる笑みを含んだ言葉だった。
「チョンチョン達には頑張ってもらったよ」
「生憎だがこの程度ならばだ」
死神も彼に対して言ってきた。二人は今顔も身体も彼に向けたうえで話している。
「私一人でも充分だった」
「だろうね。伊達に死神じゃないね」
そして子供もそれがわかっているようであった。
「それはわかるよ」
「そんなことはどうでもいい」
髑髏天使は二人の話を遮るようにしてまた子供に対して言葉を投げてきた。
「問題は何故貴様がここに来たからだ」
「それはさっき言ったじゃない」
「挨拶か」
「そうだよ」
何でもないといったような言葉だった。
「これからね。君達と会うことになるからね」
「そして俺を倒すつもりか」
「今は違うけれど。いずれ闘ってみたくはあるね」
そのことは隠すことはなかった。
「僕だって闘うのは好きだしね」
「しかし俺はまだそこには至っていないということか」
「その通り。まあ今日は本当に挨拶だけだから」
このことは念を押す子供だった。
「じゃあね。またね」
「帰るのか」
「うん」
踵を返したところで死神の言葉に対して述べるのだった。
「これでね。またね」
「そうか。これでか」
「ああ、そうそう」
去ろうとしたところで不意に立ち止まった。そうしてそのうえで言うのだった。
「すぐにもう一人来るよ」
「魔神がか」
「うん。この人にも宜しく言っておくから」
楽しそうな声で髑髏天使に応えていた。
「またね。楽しみにしておいて」
ここまで言うと姿を消した子供だった。後に残ったのは髑髏天使と死神だけだった。しかし二人もすぐに普段の姿に戻るのだった。
牧村に戻った彼は。今度は死神に対して問うた。
「これで五人目か」
「そうだ。早いな」
死神は五人目と聞いてこう考えていたのだった。
「思ったよりな」
「早いのか」
「集まるのが早い」
彼が言う早いとはこういうことであった。
「封印が解かれたとはいえ。思っていた以上に早いな」
「それは何故だ?」
「そこまでは私にもわからない」
死神はまずはこう返した。
「しかしだ」
「しかし?」
「どうも貴様に関係があるようだな」
ここで牧村の顔を見るのだった。
「そんな気がする」
「俺自身にか」
「やはり貴様の強さの上がり方は尋常なものではない」
彼はここでもこのことを指摘するのだった。
「その強さが魔神達をも呼び寄せているのかもな」
「俺がか」
「確かなことはわからん。しかし私はそう思ったりもするのだ」
「あくまで確定したものはないのだな」
「それはない。そんな気がするだけだ」
確かなものはないことは何度も言う。しかしそれと共にこうの彼に告げるのだった。
「十二の魔神が揃い貴様が奴等と闘うのに相応しい強さとなった時はだ」
「その時か」
「そうだ。本当の闘いがはじまるだろう、貴様にとってな」
牧村を見つつ述べた言葉だった。彼等は夜の街で闘いの後のお互いを見やっていた。そうしてやがて別れそれぞれの場所に戻るのだった。
第十五話 完
2009・4・16
ページ上へ戻る