髑髏天使
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第十五話 子供その五
「お腹なんか壊さないし」
「それこそ腐ったものでも平気だしね」
「人間と妖怪は違うが」
牧村は今の彼等の問いに対して顔をすぐに少しむっとしたものにさせたうえで述べたのだった。その顔は実に真剣なものであった。
「身体の構造がな」
「ああ、それは大丈夫じゃよ」
しかし博士はこう言った博士に対して言葉を出してきたのだった。
「それはな。安心していいぞ」
「いいのか」
「君は髑髏天使に変身するじゃろ」
「それと関係があるのか」
「あるのじゃよ。ただ変身できるようになっただけではない」
博士は塩辛を瓶からそのまま箸で取りつつ食べている。そのようにして食べながら牧村に対して話していた。
「その身体も強くなっておるのじゃ」
「髑髏天使になることでか」
「左様。それは内臓もな」
「中もか」
「ただ表面だけが強くなるのではないのじゃ」
博士は彼に教えた。
「中もな。強くなる」
「そういうものか」
「だから多少以上のものを食べても平気じゃ」
こう言って太鼓判を押してさえしてみせた。
「もっとも味覚はそのままじゃからまずいとは思うじゃろうがな」
「ならあまり意味はないな」
「しかし腹を壊さなくなった」
博士はそこを指摘した。
「これは大きいぞ」
「確かにな。それはな」
このことには牧村も素直に頷いた。
「大きいな。しかしこのティラミスも実に」
「やっぱりお菓子は山月堂だね」
「だよね」
また妖怪達が笑顔で頷き合う。
「他にもいいところ一杯あるけれど」
「何もかもが違うよね」
「わしもあそこのは好きじゃな」
博士はまた酒をちびちびとやっていた。
「和菓子も好きじゃからのう」
「酒を飲むのにそちらもか」
「わしは何でもいけるぞ」
牧村に対して答えた。
「それこそな。甘いものも辛いものもな」
「そうなのか」
「君は甘いもの専門のようじゃがな」
「酒はどうしても駄目だ」
彼自身もそのことを認めた。
「身体が受け付けない」
「ふむ、なら仕方ないのう」
博士は今の牧村の言葉を聞いて腕を組んだうえで述べた。
「それならな」
「酒は体質が関係するな」
「そういうものじゃ。人によっては幾ら飲んでも酔わない者もいれば」
そうした人間もいるのである。
「逆に少し飲んだだけ、いや全く飲めない者もおる」
「粕汁もかなり酒を飛ばしてからでないと」
「飲めないのか。それはかなりのものじゃな」
それを聞いてまた言う博士だった。
「それではわしも勧めん。お菓子でも食べてくれ」
「そうさせてもらっている」
「酒は飲めれば楽しいが飲まなくともやっていける」
こうも言う博士だった。
「それはそれでな」
「俺は飲めなくとも困ったことはない」
牧村もこう言葉を返した。
「菓子が食えないのは困るがな」
「じゃあ糖尿病には注意だね」
「そうだね」
今の彼の言葉を聞いた妖怪達が横で言い合う。
「糖尿病になったら甘いものどころじゃないからね」
「そうそう」
「まあ身体動かしてるから大丈夫だろうけれど」
「むしろ足りない位?」
「特にそういうことは気にしてはいない」
牧村はその糖尿病と身体のことを話す妖怪達に対して告げた。
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