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髑髏天使

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第十三話 衝突その十三


「あの時貴様は座天使の姿だったな」
「そうだったな。そういえばな」
 彼に言われてそのことを思い出しつつ述べた。
「貴様の前では最初から座天使だったな」
「あの時の続きになる」
 うわんはまた彼に言ってきた。
「だからだ。座天使の姿で来い」
「大天使の姿でなくか」
「そうだ。座天使だ」
 何度も言うところに彼のこだわりが強く見られた。
「その姿で来るのだ」
「そしてその座天使の俺を倒すのか」
「そうだ」
 ここでも返答は強いものだった。
「何度でも言う。そうでなくては闘う意味がない」
「魔物はもう何人も倒してきたが」
 髑髏天使はその剣を構えながら彼に対して告げる。
「どの魔物も闘いにこだわりがあるな。だから魔物か」
「そうだ。そして貴様を倒す為に貴様の前に現われる」
「五十年に一度この世に現われ魔物を倒すこの髑髏天使をだな」
「その通りだ。敵を倒しその力を手に入れる」
 声に楽しむような笑みが宿った。
「それこそが我等魔物の本懐よ」
「しかし。俺もまた髑髏天使」
 彼は髑髏天使としてうわんの今の言葉に返した。
「魔物を倒すその髑髏天使だ」
「だからこそ我等を倒すというのだな」
「この俺が髑髏天使である限りな」
 彼の身体は今全身に炎をたゆらせてきた。座天使のその炎だった。
「貴様等を倒す。何があろうとも」
「ならば。来い」
 うわんは言いはするが決して動こうとはしない。
「座天使としてな」
「言われずともな。それではだ」
 その炎の中で彼の姿が変わっていく。そして次には。
 翼に赤い鎧の姿となっていた。それこそが座天使の姿であった。
「この姿でか」
「そうだ。それだ」
 うわんはその座天使の姿を見て満足そうな声で応えた。
「その姿で来い。そして力でな」
「それではこの力で貴様を倒そう」
 既に左手にもサーベルがある。それは逆手で右手の剣は順手だ。そのそれぞれの剣を構えたうえでそのうえでうわんに対して告げたのだった。
「行くぞ」
「言われずともこちらから行く」
 うわんは自分から前に出た。
「この拳を受けて倒れるのだ」
 漆黒の姿が夕暮れの暗がりの中に消えた。そして。
 突如として髑髏天使の横に現われた。そのうえで拳を横から放ってきた。
「むっ!?」
「隙だらけだな」
 拳は右からのものだった。それで髑髏天使の頭を砕こうとしている。しかし髑髏天使はその拳を間一髪でかわしたのだった。屈んでそれをかわす。
「かわしただと!?」
「ただかわしただけではない」
 彼は応えながらそのうえで右手の剣を横薙ぎにする。それでうわんの身体を断ち切ろうというのだ。
 剣は一直線にうわんの腹に迫る。うわんはそれをかわせなかった。
「他愛もない」
 髑髏天使は剣を放ちながら呟いた。
「これで終わりか。言葉程もないな」
「果たしてそうか?」
 だがここでうわんの口から不自然な言葉が出て来たのだった。
「そうなるか?貴様の思い通りに」
「何っ!?」
「このうわんは影」
 彼は言って来た。
「影は消えるもの。そう」
「消える!?それでは」
「そうだ。こうなるのだ」
 今のこの言葉と共に身体を消した。そうして髑髏天使の剣をかわしたのだった。
「また消えたか」
「残念だったな」
 うわんの勝ち誇る声だけが聞こえてくる。 
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