髑髏天使
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第十話 権天その二十四
「口からだけでなく身体の全てからこの炎を放てることができるのだ」
「そういうことか」
「そうだ。貴様がそうやって炎を出せるのと同じだ」
こう髑髏天使に対して告げるのだった。
「それはな」
「どうやら。思った以上に一筋縄ではないな」
髑髏天使もそのことを認めるしかなかった。
「ならばだ」
「どうするつもりだ?」
「こうさせてもらう」
「むっ!?」
何とここで髑髏天使は。己の右手に持つその剣をポルトーに対して投げつけてきたのであった。
剣はそのまま一直線に向かう。ポルトーは彼の今の行動を見て眉を顰めずにはいられなかった。
「何を考えている!?」
その顰めさせた目での言葉である。
「己の武器を投げるなどと」
「すぐにわかる」
彼はその問いに対してこう述べるだけだった。
「すぐにな」
「すぐにだと」
「そうだ」
この時ポルトーは剣を見ていた。それ以外はほぼノーチェックだったのである。
「我が剣の炎をな」
「炎だと!?」
「そうだ。これならばどうだ」
剣はポルトーの前に突き刺さった。そうしてそこから激しい炎を噴き出してきたのであった。
「ぬうっ!?」
「普通にやったのではかわされ防がれる」
彼は言う。
「ならば。これならばだ」
「小癪な真似を」
だがその噴き出す紅蓮の炎を見てもその余裕は変わらない。
「その程度で俺は」
「どうするつもりだ?」
「俺の青い炎を溶かすことはできない」
こう言ってまたその全身を青い炎で包み込んだ。またしてもそれで防ごうというのは明らかだった。
「この青い炎。この程度でな」
「面白い。根競べをするつもりか」
「貴様がそう来るならばだ」
強い声で述べてきた。
「俺もまた。そうさせてもらう」
「面白い。ならば俺もその勝負を受けよう」
彼はここで剣の前に来た。そしてその身体からも紅蓮の炎を噴き出させてきたのであった。
「俺の赤い炎と貴様の青い炎、どちらが勝つのかをな」
「ふん。負けた方が滅びるというわけか」
「その通りだ」
まさに命懸けの勝負である。
「さあ。これならどうだ」
「思ったよりも気概のある男だな」
ポルトーはそんな彼の心を見て言うのだった。
「どうやらな」
「勝負は命を賭けるもの」
彼は言った。
「だからこそだ」
「貴様は俺が命を賭けるだけはある」
ポルトーはまた髑髏天使を褒め讃えてきた。
「まさにな」
「褒めずともいい。さあ、どちらが生き残るか」
「うむ」
「勝負だ。行くぞ」
「参る」
お互い言い合いそうして炎を出し合う。赤い炎と青い炎がせめぎ合う。互いの身体も紅と蒼に輝く。その闘いが暫く続いたがやがて。ポルトーの身体が揺れ動いてきた。
「むっ!?」
「俺の負けだな」
彼はこう言ってきた。
「髑髏天使よ」
「何だ」
そして髑髏天使に声をかけてきたのだった。
「どうやら貴様の勝ちだな」
「俺のか」
「そうだ。俺は最早限界だ」
見ればその青い炎が少しずつ弱まってきていた。
「これでな。負けを認める」
「そうか」
「どうやら貴様は俺が思っていた以上に恐ろしい男のようだ」
「随分と俺を褒めてくれるものだな」
「褒めているのは事実だ」
彼もそれは認めるのだった。
「しかしだ」
「しかし?」
「これは事実だ」
こう言うのだった。
「だからこそ貴様は勝った」
「そういうことか」
「この力比べにな」
今の炎の対決をこう表現したのだった。
「それが何よりの証拠だ」
「ならばその言葉受けよう」
こう言われては髑髏天使も受けるしかなかった。
「貴様のその言葉をな」
「遠慮することはない。ウェンティゴ様には申し訳ないがな」
「あの男の名前だな」
「その通りだ」
そのことも認めてきた。
「あの方のな」
「何時かあの男とも闘う時が来るのかもな」
「その時が早いことを祈る」
彼はまた髑髏天使に対して言ってきたのだった。
「できるだけな。それを見届けられないことだけが心残りだが」
「そうか」
「さらばだ」
ポルトーの身体をまた青白い炎が包んだ。しかしその炎は先程までの彼自身の炎とはまた違う炎であった。
「髑髏天使よ、貴様と闘えたことを俺の最後の誇りとしよう」
「その言葉、例を述べておく」
ポルトーはその型のまま青白い炎となって燃え尽きた。これで髑髏天使とポルトーの戦いは終わった。彼は牧村の姿に戻りサイドカーの置いてある駐車場に向かった。
その駐車場は百貨店の地下にあった。そこに入り暗い中を進みサイドカーの横に来てそのまま乗り駐車場を後にする。するとその横にハーレーダビットソンが来て彼を追い越していった。不意にそのハーレーを見てどうにも違和感を感じるのだった。
「あのハーレーは」
しかしそう思ったのは一瞬でハーレーはそのまま姿を消した。彼はそれでハーレーから考えを移しそのまま帰路についたのだった。この闘いはこれで終わりだった。
第十話 完
2008・12・31
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