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髑髏天使

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第十話 権天その十二


「その二千年の間に人間は全く変わったわ」
「心はどうだ?」
「心は。変わっていないみたいよ」
 悠然と笑って男の問いに述べた。
「そちらはね。相変わらず善と悪の間で揺れ動いているわ」
「人間の善と悪でか」
「そうよ。あくまでその狭い中でね」
「それはどうやら変わらないようです」
 老人もまた述べてきた。
「人は。心だけは」
「そういうものか」
「ええ。それは変わらないわ」
「ただ。色々と学んではいるようですが」
「我々のように完全な善ではないのなら同じだ」
 男は二人の話をここまで聞いたうえで述べたのだった。
「魔物としての完全な善でないのならな」
「魔物として、ね」
「違うか?我等は魔神だ」
 自分達が何であるかということにまで話が及んだ。
「それならばだ。魔物の善である筈だ」
「そういうことになるのね。魔物として」
「魔物は魔物だ。人とは違う」
 彼はまた言った。
「力を追い求めそれを手に入れる。違うか」
「その通りよ」
 そして女もそれは否定しなかった。
「だから魔物なのよ。私達は」
「わかっているのなら言うまでもないな」
「けれど。人にも同じように力を追い求めるのがいるわ」
「この時代にもだな」
「何度も言うけれど人の心は変わっていないわ」
 女はまたこのことについて述べたのだった。
「それはね」
「だからか。いるのか」
「さて。それが髑髏天使にも及ぶかしら」
「及べば面白いのですが」
 老人はここでまたしてもにこやかに笑って述べたのであった。
「それで。また新たな」
「催しになるわね」
「ふん。若しそうなるのなら今度は早そうだな」
 男はそのことには二人程興味はなさそうだったがこう述べた。
「どうやらな」
「そうね。それじゃあ」
「宜しいですか?」
「ああ」
 また二人の言葉に応えた。
「行くのだな」
「そうよ。その天麩羅を食べにね」
「この時代は他にも色々とありますし」
「食べるのは好きだ」
 男は表情を変えずに述べた。
「相変わらずな」
「人はどうかしら」
「この時代の連中は美味くなさそうだな」
「ええ、それはわかるわ」
 女はそれについては男と同意であるようである。
「どうもね。匂いがね」
「それは昔とは違うようだな」
「食べているものがかなり変わっているせいかしら。少なくとも二千年前のあの味でないことはわかるわ」
「人はあの味に限る」
 男はこうも述べた。
「あの味でない限りは。食うに値しない」
「まして他にも美味しいものがあれば」
「そういうことだ。我等は神だ」
 そしてまたこの話をした。
「既に力を得る必要もないしな」
「そういうことね」
「まあ私は人を食べることはないので」
 老人は二人の話を聞きつつ穏やかな笑みと共に述べてきた。
「あまりそういうことはわかりませんが」
「そういえばそうか」
「あんたはそうだったわね」
「はい」
 二人に対しても答えるのだった。
「ですから。そちらのお話には」
「わかった。それではだ」
「この話はこれで終わりにするわ」
 二人も老人の言葉を受けて人食いの話は止めた。そのうえでまた元の話に戻るのであった。 
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