髑髏天使
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第十話 権天その一
髑髏天使 第十話
権天
マニトーとの闘いのことは次の日に博士に話をした。やはりあの研究室で妖怪達に囲まれながらこのことを己の席にいる博士に対して話すのであった。
博士は彼のその話をじっと聞いていた。そして一通り聞き終えてから彼に対して言った。
「まさかもうなるとはのう」
「意外か」
「意外も何もこの前大天使になったばかりじゃったな」
「そうだな。まだ何週間も経ってはいない」
「それでじゃ。どうも調べていてわかったのじゃがな」
「天使の階級のことか」
「そうじゃ。普通大天使になるにも一年」
その翼ともう一本の剣を持つ天使の階級である。
「それもすぐでさらに上か」
「確か権天使だったな」
牧村はその階級を自分から言った。
「そうだったな」
「それじゃ。権天使じゃ」
博士もまたその階級について述べた。
「九の階級のうちのな。三番目じゃな」
「炎の力を持っているのか」
「後付けになるがそれも今わかったことじゃ」
博士はこうこ牧村に告げた。
「今のう」
「そうか。権天使は炎を司るか」
「どうも本来の天使の階級とは違う部分もあるようじゃ」
博士が次に言及したのはこのことであった。
「実際の天使達とはな」
「聖書の天使はまた違うのか」
「一説には炎を使うのは主天使となっておる」
「第六の階級のだな」
「そうじゃ。しかしそれは違った」
博士の目は探るような、深いものになってきていた。
「権天使が炎となっていた」
「そこに何かありそうなのだな」
「おそらくな。カバラがあるじゃろ」
「髑髏天使の謎が書かれているというあれだな」
「そもそもはユダヤ教の奥義なのじゃよ」
「それは前にも聞いたな」
カバラについては博士だけでなく牧村も述べた。二人共それぞれ調べているのである。しかし牧村はそのことはまだ何もわかってはいないのだった。
「本来はそうだとな」
「どうやら髑髏天使の謎はユダヤのそれとはまた違うのかもな」
「そうかも知れないのか」
「髑髏天使はそもそも遥か古代よりその姿を現わしていた」
博士はあらためてこのことも述べた。
「今はな。そうしてじゃ」
「調べていくのか」
「まず炎じゃった」
博士はまた炎に対して言及した。
「そして次じゃが」
「先にあるものも見るのか」
「うむ。他にも色々と調べるものはあるがな」
「魔神や魔物のこともだな」
「あのマニトーもじゃ」
彼が先に闘ったそのマニトーである。
「とにかくあちこちから来ているからのう」
「そうだな」
「魔神は各地に封印されておる」
博士はこのことも彼に話した。
「百目は日本で九尾の狐は中国」
「ああ」
「そしてウェンティゴはアメリカじゃ」
「まずはその三人だったな」
「あと九人もおるからのう。その連中のことも調べておく」
「魔物の神はその十二人だけなのか?」
牧村は不意にそのことについて述べてきた。
「他にはいないのか?奴等だけなのか?」
「奴等だけとは?」
「ギリシア神話では主だった神の他にも多くの神がいるな」
「そうじゃ」
当然博士もこのことを知っていた。ギリシア神話において神々はただオリンポスにいる十二人だけではないのだ。彼等はそれぞれ従神を持っておりまたオリンポスはあくまで天界を治めるゼウスの世界でしかない。他にはポセイドンの治める海界、ハーデスの治める冥界があるのだ。その二つの世界にもそれぞれ神々が存在している。ギリシア世界は三つの世界からなりそこにそれぞれの神々がいるのである。牧村はこのことを知っているからこそ今それを実際に博士に対して話に出したのである。
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