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髑髏天使

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第五十七話 挨拶その四


「牧村君ならここにいるけれど」
「だから。その牧村さんによ」
「あれ出してよ」
 娘達はまた母に話した。
「あれね」
「あれ出して」
「ああ、あれね」
 娘達の話を聞いてだ。母親もだった。
 笑顔になってだ。こう牧村に言うのだった。
「新しいスイーツできたんだけれど食べる?」
「新しい」
「そう、和風ザッハトルテね」
 それがだ。新しいスイーツだというのだ。
「それを作ったのよ」
「それをか」
「試作品だからただよ」
 しかもだ。値段も不要だというのだ。
「日本人の口に合わせたザッハトルテね」
「ほら、オーストリアのザッハトルテは甘過ぎるじゃないか」
 ここで言うマスターだった。
「その甘さを抑えたんだよ」
「日本人の甘さにしたのよ」
 また話す母だった。
「それをどうかしら」
「私も頂戴」
「私も」
 妹達もここぞとばかりに言う。
「ザッハトルテ大好きだから」
「だからね」
「ええ、いいわよ」
 母もだ。娘達の言葉に笑顔で応える。
「たっぷりと作ったからね。皆で食べましょう」
「勿論牧村さんもね」
「一番沢山食べてね」
「済まないな」
 牧村は声に微笑みを入れて彼女達の言葉に応えた。
「それならな」
「これからいつも食べられるからね」
「こうした風にね」
「いつもか」
「だって。お店に入るんだから」
「そうなるわよ」
 この二人もだ。かなり重要なことを笑いながら話した。
「これからはお姉ちゃんも入れて四人でね」
「お菓子食べられるわよ」
「そうよ。それで完成品はね」
 彼女達の母親もだ。笑顔で牧村に話す。
「今度ね」
「今度ですか」
「ええ、そうよ」
 笑顔での言葉だった。
「だから楽しみにしておいてね」
「わかりました」
 牧村は声に微笑みを入れて頷いた。その彼にだ。
 若奈の妹達がだ。また声をかけてきた。
「じゃあお兄ちゃん、今度ね」
「また一緒に食べようね」
 今からそうした話をするのだった。
「皆でね」
「お姉ちゃんも入れてね」
「そうだな。そうしようか」
 牧村も二人の言葉に頷く。そうしてだった。
 今はその試作のザッハトルテを食べる。今の時点でもだ。
 確かな、優しい甘さがあった。まさに日本の甘さであった。
 その甘さを味わってからだ。若奈と会う。会う場所はテニスコートだった。
 そこでジャージ姿でトレーニングしながらだ。話をするのだった。
「そうなんだ。あの娘達って」
「そんなことを言っていた」
 こう話すのであった。若奈にだ。今二人は走っていた。テニスコートから校内に出て走るのだ。若奈は自転車でその彼についていくのだ。 
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