髑髏天使
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第七話 九階その十九
「そして皮もな」
「それがどうしたってんだ?」
「皮がない相手は実に脆いものだ」
彼が言うのはこのことだった。今の一撃は両手の剣を交互に一閃させたものだがそれはナックラ=ビーの両腕を斬った。傷はそれ程深くはなかったがそれでも彼にとっては痛いものであったようだ。その動きが止まってしまっていたからだ。
「剥き出しだからな」
「くっ・・・・・・」
「そうとなれば攻め方もある」
髑髏天使はまた言う。
「幾らでもな」
「ふざけるな。俺の力の前にはな」
「力の前には?」
「そんなものは不要なんだよ!」
右の拳を思いきり振り下ろそうとしてきた。
「力こそが全てなんだからな!・・・・・・ぐうっ!?」
「やはりな」
ナックラ=ビーの動きを冷静に見ての言葉だった。
「貴様の動き。やはりな」
「うう・・・・・・」
「ダメージが効いている。動きに限界が出ている。
「くそっ、まさかそれを」
「そう。その通りだ」
髑髏天使は宙に羽ばたいたままナックラ=ビーの呻きに答えた。
「ダメージは必ず動きに出るものだからな」
「それがわかっていてのことだったっていうのかよ」
「俺もまた同じだからだ」
実はこれは彼とてなのだった。
「俺もまた先程の貴様の一撃でな。思うように動けないところがある」
「それでどうしてなんだ?」
「鎧が護ってくれた」
彼が言うのはこれだった。
「鎧がな。確かにかなりのダメージを受けたことは事実だが」
「鎧かが」
「そうだ」
彼はまた言う。
「それにより助けられている。そういうことだ」
「ちっ」
髑髏天使の言葉を聞いて思わず舌打ちしたナックラ=ビーだった。
「そういうことかよっ」
「護りもまた必要だ」
髑髏天使は言う。
「攻撃と共にな」
「しかしな。それでもだ」
だがまだナックラ=ビーは諦めてはいなかった。
「俺は。この俺は」
「まだやるというのか」
「魔物の闘いはどちらか死ぬまでだ」
顔を上げての言葉だった。
「どちらかな。だからだよ」
「また来るのだな」
「殺してやるぜ」
殺意も全く衰えてはいなかった。
「ここでな。覚悟するんだな」
「ならここで決着をつけてやる」
髑髏天使もまた宙で構えを取った。再びその両手で。
「この一撃でな」
「死にな」
ナックラ=ビーもまた負けるつもりはなかった。
渾身の力で拳を繰り出す。それは髑髏天使の頭を狙っていた。それで髑髏天使の頭を砕き一気に勝負をつけるつもりだったのだ。己の力をわかったうえでの一撃だ。
しかしだった。ここはスピードが勝った。髑髏天使は何とここでナックラ=ビーのその拳を。左手のサーベルを一閃させ切り捨てたのである。
「何だとっ!?」
「もらった」
今度の言葉は一言だった。
「これでな」
そして返す刀で右手の剣を突き出した。それが魔物の胸を貫く。これで決まりであった。
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