髑髏天使
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第五十五話 魔水その九
「社内で仕事も出来ない、人間性も腐り果てた連中が行く場所だったな」
「そうじゃ。そうした人間がじゃ」
「ジャーナリストか」
「呆れた世界じゃよ」
「全くだな。しかし」
「しかし?」
「そうした世界はやがてなくなるな」
こう述べる牧村だった。
「腐り果てれば。やがてはだ」
「塵になって消える」
「そういうことだよね」
「そうだ。腐り続けるものも存在しない」
これもまた牧村の考えだった。彼はそれを述べるのだった。
「永遠というものがないのだからな」
「その通りじゃな。腐っている間が長い場合もあるが」
博士も牧村のその言葉に頷く。
「そのまま腐り続けるものはありはしない」
「世の中って。腐ったものも多いし」
「それが長い間続いてる場合もあるけれど」
「やがてはだね」
「本当になくなるからね」
妖怪達も話していく。
「消えてなくなっていく」
「そうだよね」
「不滅のものってないから」
「やがてはね」
消えていくというのだ。そしてだ。
妖怪達自身もだ。こんなことを話した。
「僕達は死んでもまた生まれ変わるけれどね」
「姿は同じで」
「だから死なないって言えるけれど」
「やっぱり死ぬから」
「そうだよね」
彼等の生死はだ。そうしたものだというのだ。
妖怪の生死と人間の生死が違う。それもだった。
「死んでも何度も蘇る」
「人間は姿が変わって記憶が消えるけれどね」
「僕達は受け継がれるからね」
「そうした意味で死なないんだからね」
「それでも」
けれどだというのだ。
「記憶は永遠だから」
「その辺り魔物もだけれどね」
「記憶は残ってそうしていってるから」
「その辺りはいいかな」
「だよね」
「妖怪の死はそうした意味での死か」
牧村も今それがわかったのである。
「肉体の死か」
「魂は不滅じゃよ」
博士が牧村の今の言葉に述べた。
「人間は記憶がなくなるがのう」
「しかし妖怪はか」
「そうじゃ。記憶が残る」
そこが違うというのだ。
「そして姿形もそのままじゃ」
「服を着替えるのと同じだね」
「同じ形の服をまたね」
「そういう感じなんだよ」
「人間は。違う服に着替えるけれど」
同時にこれまでの記憶をなくすというのだ。
「まあ。死なないっては言えるね」
「そうだね」
「そうなるね」
こう話していく。そしてだった。
博士がだ。ふと言うのだった。
「わしもこうなったらじゃ」
「僕達と一緒になる?」
「妖怪にね」
「なって遊ぶ?」
「そうするの?」
「ははは、あと五十年生きたら考えよう」
博士は顔を崩して笑って言ってみせた。
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