髑髏天使
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第五十四話 邪炎その五
「それならいいがな」
「うん、甘くてそれで食べやすいし」
「いい感じですよ」
二人もにこりと笑って牧村に返す。三姉妹はカウンターに座り牧村とマスターはカウンターの中でだ。立って食べているのであった。
その牧村にだ。二人は話すのだった。
「この味ならすぐにお店に出せます」
「本当に」
「いや、まだだ」
しかしだ。牧村はここでこう言うのだった。
「それはまだだ」
「まだですか」
「そうなんですか」
「もう少し工夫が必要だ」
牧村は冷静な声で述べる。
「もう少しな」
「もう少しですか」
「そうなんですか?」
「御客さんの舌は厳しい」
現実を見た言葉であった。それもかなり厳しくだ。
「だからだ。これでいいということはない」
「シビアですね、その辺り」
「とても」
「けれどそれでいいんだよ」
マスターはこう娘達に述べた。
「現状に満足しない、そうしてより高みを目指してこそなんだよ」
「何かの漫画みたいなこと言うわね、お父さんも」
「そうよね。探偵ものの女怪盗みたいに」
二人はここでこんなことを言った。
「けれど確かに」
「そうよね。今に満足したらね」
「それで終わりよね」
「進歩はしないわね」
「そうだ。満足したら終わりなんだ」
マスターは父親として語る。
「そういうものなんだよ、全部ね」
「全部なの」
「そうなの」
「この世の中にあるものは何でもそうなんだよ」
こう娘たちに話すのであった。
「全部ね」
「ううん、じゃあ何でも努力しないといけないのね」
「そうなんだ」
「そう。少しずつでもいいから努力を続ける」
言葉は継続にもなった。
「それが大事だからね」
「じゃあ私達もね」
「いつも。努力してね」
「そうしていかないといけないのね」
「先に進もうと思ったら」
「そういうことよね」
若奈もだ。ここで頷いた。
「私だって。やっぱり」
「そうだな。俺もだな」
「そう、牧村君はこのまま努力すればね」
「もっとよくなるか」
「うん、九十九パーセントの努力を続ければね」
「天才になれるか」
「お菓子作りの天才になれるよ。それに」
プラスアルファだった。そこに加えてだった。
「このお店を任せられるようになれるね」
「この店?」
「そうだよ。若奈と結婚するんだよね」
このことをだ。マスターも話すのだった。
「そうするんだよね」
「それは」
「あれっ、そうよね」
「牧村さんお姉ちゃんと結婚するのよね」
二人の妹達もだ。ここで話すのだった。
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