髑髏天使
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第五十三話 怪地その十三
「巨人なんて負ければいいんだよ」
「全くだな」
マスターと牧村はこのことでも一致していた。アンチ巨人なのだ。
「だから置いていないよ」
「いいことだな」
「あと日刊ゲンダイも置いていないから」
それもだというのだ。
「品がないからね。マスコミは最近選ぶようになったね」
「そうあるべきか」
「そうだよ。君も」
マスターは話を牧村にシフトさせてきた。彼にだ。
「そのことはわかっておいてくれよ」
「俺もか」
「だって大学を卒業したらうちに入るんだろう?」
にこりと笑ってだ。彼に言ってきた。
「だったら。そういうこともね」
「マスターまで言うか」
「言うよ。女房なんて」
その笑顔のままだ。牧村にさらに話すのだった。
「完全に乗り気だからね」
「そうなのか」
「そうだよ。じゃあ楽しみにしてるから」
「楽しみか」
「凄くね」
まさにそうだというのだった。マスターは笑顔だ。しかしその笑顔はだ。本気であった。牧村に対して真剣に話しているのだった。
「しているからね」
「そうなのか」
「じゃあ。皿洗いはね」
話が最初に戻った。そしてだった。
彼はマスターと共にその皿や他の食器を洗ってだ。店の話を聞くのだった。そうして店でも時を過ごすのであった。
店を出るとだ。そこにであった。
男が待っていた。もうそこにだ。牧村はその彼を見て言った。
「待っていたか」
「そうだ」
その通りだとだ。男も答える。
「貴様が店を出るのをな」
「何時から待っていた」
牧村は男のその漆黒の目を見ながら問うた。
「それは何時からだ」
「ほんの数分前だ」
その時からだというのだ。
「少しだけだ。待ったのはだ」
「そうか。少しか」
「それについて何も思うことはない」
「安心しろ、それはない」
牧村もだ。それはないというのだった。
「貴様も何とも思っていないな」
「その通りだ」
「なら俺もだ」
こう男に答えたのだった。
「一時間程なら話は違ったがな」
「時間の長さの関係か」
「そうだ。人間としての時間の概念でのことだ」
「私にはないものだな」
男の言葉が微妙に変わった。妖魔の神のものになっていた。
「そうしたものはな」
「時間はか」
「私は気の遠くなるだけの時間を過ごしてきた」
「その中での一時間は何だ」
「瞬きするまでもない」
そこまでもないというのであった。
「何ということもない時間だ」
「それが貴様等の時間か」
「そういうことだ。それではだ」
「戦いか」
「後ろにもいるな」
男は振り向かない。だが後ろにいる気配も感じ取っていた。
そしてそのうえでだ。彼はこうその後ろに話した。
「貴様も来ているか」
「わかっていたか」
「そうだ、わかっていた」
男の後ろには死神がいた。その彼に対しての言葉だった。
「今来たな」
「貴様等の気配がすれば必ずそこに行く」
死神はこう男に述べた。
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