髑髏天使

「近くなってきているな」
「だからほんの少しの違いじゃよ」
　博士はこう牧村にも述べた。
「人間と妖怪の違いはのう」
「ほんのか」
「紙一重じゃ」
　それだけだというのである。
「大したことではない」
「そうだな」
　牧村は博士の言葉を聞いてだ。そうして言うのだった。
「俺も。危うくな」
「魔物になりかけたね」
「そうだったよね」
「そうだな。魔物にもなる」
　そう考えてなのだった。
「一歩間違えればな」
「人間とそれ以外の違いはほんの少しじゃよ」
　また話す博士だった。
「ほんのな」
「そうだな。心が少し傾けばな」
「人間のままでいられるし」
　そしてなのだった。さらに話す博士だった。
「妖怪にもなれば魔物にもなる」
「俺もだな」
「左様、君は余計にそうじゃな」
「髑髏天使である故にか」
「力があると余計にそうなるのじゃよ」
　博士はだ。その言葉をしみじみとさせていた。そのうえでだった。
　牧村にだ。こうも話した。
「智天使になった時は色々あったじゃろう」
「大阪でだったな」
「そうして人間で留まった」
「禅もして。心も鍛えてか」
「それがよかった。そしてじゃ」
「余裕だな」
　牧村は言った。それだった。
「こうして。余裕を感じて遊びも知ってか」
「そうじゃ。遊びと余裕は人間に必要じゃ」　
　そうしたものもだというのだ。博士はだ。
「働くこともそのうちの一つじゃ」
「働くこともか」
「そうじゃ。労働も遊びになるのじゃよ」
「博士の仕事もか」
「これも遊びじゃ」
　笑顔での言葉だった。そこには嘘がなかった。
「何故なら楽しめるからじゃ」
「だからか」
「働くことは楽しみを見出すことができるものなのじゃよ」
「そうだな。俺もな」
「わかるな」
「大学を卒業した時は喫茶店に誘われている」
　若奈の家でもあるその店にだ。実際に誘われているのである。
　それを自分で言ってだ。さらに話すのだった。
「そこでアルバイトみたいなこともな」
「はじめたのか」
「まだ少しだが」
　それでもだ。しているというのである。
「している」
「楽しいな」
「何かを得ている」
　その何かまではだ。彼はわからなかった。だがそれでもはっきりと感じているのは確かだった。それもまた否定できないことだった。
　それも話してだ。牧村はまた話した。
「それも遊びか」
「そうじゃ。遊びになるのじゃ」
「そうだな。まさにな」
「さて、君は遊びと余裕も知っておる」
「それを忘れずにか」
「これからも戦っていればいい」
　最後にだった。髑髏天使としての話になった。
　そんな話をしてだ。牧村は博士との話を終えた。それからだった。
　マジックに行きそこでマスターにだ。皿の洗い方を教わっていた。マスターはカウンターにおいてだ。彼にこと細かに話すのだった。