髑髏天使
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第五十二話 死風その一
髑髏天使
第五十二話 死風
牧村は博士の研究室にいた。そこでだった。
前の戦いのことを話した。するとだった。博士はすぐにこう言うのであった。
「いよいよじゃな」
「いよいよか」
「うむ、ここからが大変じゃぞ」
博士は真剣な面持ちで言うのだった。いつも通り自分の椅子に座り壁にもたれかかって立っている牧村の話を聞いて言うのだった。
周りにはこれまたいつも通り妖怪達がいる。彼等も話を聞いている。
「混沌の神々の中でもじゃ」
「強いか」
「その象徴とも言える者達じゃ」
「だからこそ余計にか」
「そうじゃ。強大じゃ」
博士はその強さをこう表現した。
「これまで以上にじゃ」
「激しい戦いになるか」
「うむ、これまでもそうじゃったが」
「死ぬ危険もか」
「あるぞ」
それを否定しなかった。博士もだ。
「むしろじゃ。そちらの方がのう」
「危険が高いな」
「言いにくいことじゃが」
それでもだと。博士は話す。
「君もな。あの死神も」
「今の天使の力でもか」
「相手が悪過ぎるわ」
ここに今の問題のポイントがあった。まさにそこにであった。
「流石にのう」
「クトゥルフだったな」
「あれは有名じゃがな」
「知られているだけはあるか」
「そうじゃ。そうした相手じゃ」
こう牧村に話していく。
「だからくれぐれもじゃ」
「死ぬなというのだな」
「絶対にじゃ。死んではならん」
いつもの飄々とした感じは消えていた。真剣そのものであった。
「よいな」
「当然俺もだ」
牧村自身も言うのだった。
「そのつもりはない」
「死なんな」
「俺は生きる」
断言だった。無論これまで以上に強い声での言葉になっていた。
「人間としてな」
「最後までじゃな」
「俺は生きて喫茶店に入る」
今はじめてだ。彼は自分から言った。
「そこで菓子を作って生きる」
「ではその為にじゃ」
「負けはしない。最後まで勝つ」
その決意を話した。はっきりとだ。
「絶対にだ」
「まさかここで封印が解かれるとはのう」
「それが予想外だったか」
「君がその伝説の天使長になれば若しくは」
「勝てたかも知れないか」
「しかし今ではじゃ」
その六枚の翼でもだというのである。
「危うい」
「危うくとも勝てる可能性が僅かでもあればだ」
「勝つのじゃな」
「零は零だ。だが」
「そこにコンマ幾つでも可能性があればじゃな」
「俺はそれを百にする」
これが今の彼であった。僅かな可能性を確実のものとするというのだ。
「何があってもな」
「ではじゃ。わしはじゃ」
「博士はか」
「その君に話そう」
いつも通り文献を開いての話になったのであった。
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