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IS〈インフィニット・ストラトス〉駆け抜ける者

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第2話

兎にも角にも、起きなければ何も出来ない。

ベッドから立ち上がり、一夏と改めて向かい合う。

「…おはよう」
「ああ。そういやさっきメールが来てたぞ、『トモ』のケータイ」

にこやかで親しげな一夏の態度に戸惑いながらも、ケータイのメールを確認する。

メールは、こんな内容だった。

『丹下智春君、先に騙す形になったことを謝罪しておく。
改めて、僕は実は神様だったのだ!
どう、驚いた?』

文面は続き、

『君の事だから、馬鹿正直に伝えても拒絶しそうだし、強引な手を取らせてもらったよ。
後、あのアイデア、アレだけだと少し物足りないから、コッチで色々付け足しと
いたから。
詳しくは、自分で確かめてね!

PS.このメールは読み終わった時点で消えるので、文句は受け付けません!サヨーナラー!!』

腹の立つメールを読み終わったら、突然ケータイの電池が切れた。

充電しながら電源を入れてみても、あのメールは無かった。

「何だった?」
「…イカレタIS製作者からの嫌がらせ。嫌になるな、ったく」

向こうにも事情や都合があったのかもしれないが、コッチは望んだ事態とは程遠い状況にいるのだ。愚痴の一つもこぼしたくなる。

「製作者って言うと…、噂のアレか?」
「噂?」
「ど忘れしたのか?トモが適正者だって事で、専用ISを送り主不明で送りつけてきたじゃないか」

ふむ、そういう事になってるのな。

「しかし驚いたのは、そのISで事故を防いだ事だな」
「…ん?」

はて?事故を防いだ?覚えがありませぬが?

「ほら、俺のIS、【白式】が来る少し前に、二人で弾の店に飯食いに行ったじゃないか、その帰りに、ここの生徒に突っ込んでくるダンプを見て、即座に展開させて真っ向から押し返して!…まあソレが原因で謹慎言い渡されて代表生逃したんだよな、トモ」

…これは、多分神様の辻褄合わせだろう。

俺が此処にいて違和感が無いよう、調整したに違いない。

「そう、だったな。今日までだっけ、謹慎は?」
「昨日で謹慎は終わりだから、今日から復帰だな!」

また都合のいい…。

「そうか、なら着替えて行くか」
「久々にトモとクラスで一緒か。女ばっかで肩身は狭いし、『ゼロ』は素っ気なかったし、ありがたい。」

…ゼロ?正義の味方ですかな?それとも、未来を見せてくれるのかい?

「『ゼロ・グランツ』。あんまり関わりが無いから、詳しくは知らないんだが…、適性はSらしい」

何という事でしょう、原作主人公を上回る才能の持ち主が出現。これが俺の転生した結果だと言うのか。

「ま、所詮はお上が押し付けた『記号』さ。鼻で笑って評価を引っくり返せば、勝ちだ」
「…そう言う所、トモらしいな。…やっぱトモが居ると気が楽だ」
「…そうか?」
「そうさ。箒は何かと突っかかってくるし、セシリアはセシリアで行動が読めないし…、」

なんだ、リア充じゃないか。ふざけやがって。

「鈴が加わると更に厄介で…、三人集まると姦しいって本当なんだな…」

遠い目をしながら、一夏は黄昏ていた。

いちいち相手をしていたら時間が無いので速やかに寝間着から制服に着替える。

白基調の赤のラインが入った目立つ制服。

サイズもぴったりだ。

「よっし、一夏、朝飯行こう」
「っと、今行く!」

一夏と共に学食へ。さて、誰と出会えるやら。

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

学食は混んではいたが、座れないほどではなかった。

「俺は和食セットにしたけど、トモはどうする?」

俺?決まりきった事を今更聞くとは、ナンセンスだなっ!!

「カレーうどん!」
「死ぬ気かトモ!?」
「俺は死なない!無傷で食べきって、授業を受けるんだ!!」
「トモっ!!」

とまあ、芝居を演じてみたが周りの目が冷たいので、大人しく席に座ることにする。

「…一夏、今のは何だ?」
「箒…、トモが戦地へ旅立つのを見送っていたんだ…」

席に座れば一夏さんは幼なじみに捕まったので、一人孤独な戦いに身を投じるとする。

出汁が効いていて美味い。ムッ、危ない!跳ねた汁が制服に掛かる所だった。

そんなこんなでカレーうどんと真っ向から闘い、後少しで始末できるその時、

ドンッ

「っと、悪い当たっちまった」

脇腹に偶然生徒の腕が当たってしまい、その衝撃で揺れた丼の中の出汁が一滴、制服の裾に掛かった。

「…ああぁぁ!」
「トモっ、しっかりしろ!」
「一夏…、もう駄目だ…、燃え尽きちまったよ…」

何という悲劇、俺の白い服でカレーうどんノーダメージ完食は失敗、累計1086連敗に達した。

「『ワンサマー』、何でソイツ灰になってんだ?」

?ワンサマー?

「一夏…、この借りはいずれ返す…、んで、ワンサマーって何?」
「紹介しとく、彼がゼロ。一夏の英語読みらしい」

明らかに本来の読み方より長い。そんな呼び方をするメリットもない。

「ゼロって、一夏嫌いなのか、篠ノ之?」
「口には出してないがな、丹下」

やっかみか、はたまた単純に嫌悪しているだけか、どんな理由にせよ、あの態度を見る限り、一夏に好意的には動かないに違いない。

「そうだ、なあ、丹下、だったか?今日はよろしく頼むぜ?」
「…何を?」
「悪い、放課後勝負する事に…」
「誰と誰が?」
「一夏、丹下が混乱する、私が説明する」

篠ノ之が言うにはこうだ、

俺の謹慎中に、我がIS
が解析され、同型機の開発に某企業が成功。

ゼロのガールフレンドがその保有者に選定されたが、スペックを出し切れない。

紆余曲折あってゼロと一夏で口論となり、売り言葉に買い言葉で今に至る。

…らしい。

「お手本見せてかませ犬やれって?…はあ…」

今更足掻こうが決まったものは覆せない。

「一夏、ゼロ。期待に応えられないかもしれないが、精一杯やらせてもらう」
「楽しみにしている」

毛嫌いしている一夏を一別した後、ゼロは去っていった。

「一夏、俺達も行こう。そろそろ時間が厳しい」
「トモ、負けるなよ!」
「善処はする」

食堂を出て教室へ。正直、勝率はかなり薄い。

どう戦えば僅かな勝機を掴めるか、頭の中で作戦を練り続ける。

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

時間というものは不思議なもので、来てほしくない事がある時程瞬く間に流れ、放課後になってしまっていた。

ずっと作戦を考えたが、何一つよいものは浮かばず、授業の内容も殆ど覚えておらず、昼食を食べた記憶も曖昧だ。

ただ、頭に痛みを感じてはいるので、織斑先生に頭をしばかれたのは理解できているが。

今俺は、第3アリーナのBピットで準備をしていた。

「なあトモ?」
「どったの一夏?」

制服から専用のISスーツに着替えながら、一夏の話を聞く。
「なんでトモのは『服』なんだ!?」
「知らんよ。制作者の趣味だろ」

確かに、一夏の言わんとする事も分かっている。普通、ISスーツは体にフィットするインナーのような物だ。

しかし、俺が今着込んでいるのはどこぞの銀〇美少年の戦闘装束。

何ともいえぬ雰囲気の中、待機形態であった右手首のISを起動。

濃紺の腕輪だったISは、両腕両足を護るかの如く装甲に変わり、背部に四機の巨大スラスター。

一拍遅れて腰と胸元を装甲が覆い、両肩の先が出っ張る。

頭部に一角獣のような角型センサーが出現し、手の甲の球が淡く輝き、起動完了。各部異常なし。

「準備OK。…えーっと、何て機体名だったかな?」
「…『ヴァンガード』、だ丹下」
「あ、織斑先生!」

様子を見に来た教官殿に、機体の名前を教えていただきました。

「愚弟がいざこざに巻き込んだこと代わりに謝っておく」
「千冬姉、それは!」

バシン

「織斑先生と呼べ、織斑」
「はい…、織斑先生…」

頭をしばかれる一夏と窘める織斑先生。今日だけですっかり見慣れた風景だ。

「それはそうと丹下、お前は謹慎開けだ、くれぐれも無理はするな」
「やれるだけやってみます」

¨戦闘待機状態のISを感知。操縦者、『宮間のぞみ』、ISネーム、『ブロッサム・レイ』、戦闘タイプ、高機動戦闘型、特殊装備、機能あり。¨

織斑先生と話ているとハイパーセンサーが察知した。背後に、ゲートの向こうに、待っているのが『視える』。

「…行ってきます」
「力を出し尽くせ。言えるのはそれだけだ」
「トモ、頑張れよ!」

織斑姉弟の激励にサムズアップで応える。

ゲートが開くまで後わずか。

【敵】は、目前まで迫ってきていた。 
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