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スーパーロボット大戦パーフェクト 第二次篇

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第二十八話 同床異夢

                   第二十八話 同床異夢
 オデッサでの前哨戦に勝利したロンド=ベルはそのまま進撃を続けた。そしてティターンズ、ドレイク軍の拠点であるオデッサの軍事基地に到達した。そこには彼等の全軍が配置されていた。
「凄い数ね」
 ミサトはそれを見て一言そう呟いた。
「こっちの十倍は優にいるわね」
「十倍」
「ちょっとシンジ、びびってるの!?」
 アスカがそれを聞いて突っかかってきた。
「こんなのいつものことじゃない」
「アスカの言う通りだな」
 イサムがここで出て来た。
「十倍、つまり一人で十機落せばいいだけだ。楽勝楽勝」
「イサム、自惚れはよくないぞ」
 だがそんな彼をガルドがたしなめた。
「油断こそが命を落すもとなのだからな」
「ヘッ、悪いが俺は不死身でな」
 それでも彼は悪びれない。
「俺にとっちゃあ敵なんて倒される為だけにしかいねえのよ」
「そう、敵はただ倒すのみ」
 ドモンも出て来た。
「俺のこの拳で立ち塞がる者は全て叩き潰す!」
「ドモンさんはちょっと極端なのよ」
 しかしアスカはそれには賛成しなかった。
「何か拳だけで全てを語ろうとするし」
「それが悪いのか?」
「悪いってゆーーーか他の話し方ないの?」
「あるとでもいうのか」
「・・・・・・もういいわ」
 これには流石に呆れたようであった。
「ドモンさんに言ったあたしが馬鹿だったわ」
「あら、そうは思わないわ」
 レイがそう言葉を入れてきた。
「人間は口だけで話をするものじゃないから」
「拳だけで話もできないわよ」
「そうね。人は心で話をするから」
「そりゃまあそうだけれど」
「俺は心でも話すぞ」
 またドモンが言った。
「この熱き血潮でな!!」
「・・・・・・わかったからもういいわ」
 いつもの調子が崩れていた。どうもアスカは彼が苦手なようであった。
「何となくレインさんの苦労がわかったし」
「あら、慣れるとそうでもないわよ」
「レインさん」
「私も最初はドモンには手を焼いたけれどね。今でも少し」
「そうでしょうね」
「というか会話通じないし」
「そうなのよ。あんなのでしょ?最初は何度絶交だって叫んだか」
「それでも絶交しなかったんですね」
「まあね」
 シンジの問いに答える。
「ドモンが小さい時から知っていたし。色々と面倒を見てきたしね」
「そうだったんですか」
「おさなじみって・・・・・・。昔からあんなのだったんですか?」
「あんなのとは言ってくれるな」
「けど実際にあんなのだし。それでレインさん」
「はい」
「ドモンさんと今まで一緒にやってこれた秘訣って何ですか?」
「秘訣」
「ええ。何か異星人と話している気持ちになりませんか?」
「そうね。本当に手を焼いているし」
「でしょうね」
「ドモンの食事から服の洗濯までやってるけれど」
「えっ!?」
 皆それを聞いて驚きの声をあげた。
「それ本当ですか!?」
「ええ、それが何か」
「じゃ、じゃあドモンさんの下着なんかも」
「トランクスもね。当然よ」
「一緒にレインさんのも洗ってるんですよね」
「勿論よ。それがどうかしたの?」
「あ、あのそれって」
「恋人同士とかそんなんじゃ」
「あら、それはないわ」
 だがレインはそれを笑って否定した。
「ドモンは私にとってパートナーなんだから。単なる」
「そうですか」
 皆それを聞いていささか拍子抜けした。
「そうですね。驚いて損した」
「何を驚いているのかちょっとわからないけれど」
「なあ」
 それを聞いていたマサキが小声でデメクサに話し掛けた。
「もしかしてレインさんもかなりの天然か」
「それはマサキさんも良く知っている筈ではないでしょうか」
「どういう意味だよ」
「あれ、前一緒にレースのチームを組んでいませんでしたっけ」
「それは話が違うぞ」
「あ、すいません」
「少なくともあんたは言えた義理じゃないよ」
 最後にシモーヌの言葉が締めとなった。
「さて、話はお終い」
 ミサトが一同に対してそう言った。
「やるわよ。一気に」
「はい」
「全機出撃。正面から叩くわ」
「正面からですか」
「そうよ。ここまで来たら変な小細工は無用よ」
「それもそうだな。流れはこっちにある」
 クワトロもそれに同意した。
「私とアムロ中佐が先鋒を務めよう。それでいいか」
「ええ。お願いできますか、大佐」
「ふふふ、大佐か」
「あ、すいません」
 ミサトは思わず口を塞いだ。だがそれは実は正解であった。
「今は違いましたね」
「そういうことだ。では行くか」
「はい」
 皆格納庫に向かった。シンジはその途中でトウジに尋ねた。
「なあトウジ」
「何や」
「さっきミサトさんクワトロ大尉を大佐って呼んだよね」
「ああ」
「あれってやっぱりジオンの赤い彗星のことなんだね」
「当たり前やろが」
 トウジの答えは素っ気無いものであった。
「御前かてクワトロ大尉がホンマは誰なんか知っとるやろ」
「うん」
 ロンド=ベルでそれを知らない者はいなかった。それはクワトロの乗る赤い機体でもわかることであった。
「何で今更そんなこと聞くんや?」
「いや、階級が気になってね」
「それか」
「今クワトロ大尉って正式にはどんな階級になってるんだろ。まさか本当に大尉じゃないだろうし」
「一応佐官待遇にはなってるみたいよ」
 アスカがそれに答えた。
「アスカ」
「アムロ中佐と一緒にいあるから。同じ待遇みたいよ」
「そうだったんだ」
「どっちにしろあそこまでいくとね。関係ないかも」
「クワトロ大尉は凄いからなあ」
「うん。この前の戦いでも小隊単位で敵を倒してたし。マスターアジアみたいだ」
「あの人のことは出さないで」
 しかしアスカはそれに関してはいい顔をしなかった。
「どうして?」
「あんな不自然な人は御免よ。訳がわからないから」
「そうかなあ。僕は憧れるけれど」
「・・・・・・あんたホモ!?」
「な、何でそうなるんだよ」
 シンジはそれを聞いてかなり狼狽した。
「僕はそんなんじゃ」
「けれど憧れてるんでしょ」
「うん、そりゃ」
 それは素直に認めた。
「強いし。堂々としているし」
「確かにね」
 アスカは不承不承ながらそれを認めた。
「素手で使徒を倒しちゃうんだもんね」
「いや、それだけじゃないけれど」
「他にもあるの?」
「格好よくない?何かどんあことでも強引に解決しちゃうっていう雰囲気があって」
「強引過ぎるわよ」
「そうかなあ」
「いい、あれは人間じゃないのよ」
「じゃあ何なんだよ」
「宇宙人かも知れないわよ。そのうち大気圏を生身で突破しちゃうかもね」
「それじゃあゼータじゃないか」
「どうした?」
 それにカミーユが反応してきた。
「カミーユさん」
「言っておくがモビルスーツでもそのまま大気圏を突入したり突破したりはできないぞ。ゼータは別だがな」
 ゼータとその発展型であるゼータⅡは大気圏突入が可能なのである。これはそういったふうに設計、開発されている為である。モビルスーツに限らず他のマシンでもこれは無理であった。
「わかってますよ」
「けれどあの人なら」
「有り得る、か」
「ニュータイプでも無理ですよね」
「悪いがニュータイプは超人じゃない」
 カミーユの答えはそれであった。
「そんなことはできない。悪いがな」
「そうでした、すいません」
「謝る必要はないさ」
 シンジにそう返した。
「ただわかって欲しいだけだ」
「はい」
「それに誰だってなれるしな」
「誰にもですか」
「ああ。ティターンズにいる連中にしろそうだしな」
「アースノイドでもなれるんですか」
「ほんの些細なことからね。俺だってそうだった」
「カミーユさんも」
「アムロ中佐やクワトロ大尉だってそうだろうな。ティターンズにいるジェリドやヤザンがサイコミュ搭載のモビルスーツに乗れるのもそうだからなんだ」
「そうだったんですか」
 ヤザンのハンブラビ、ジェリドが乗ることもあるバウンド=ドッグはサイコミュ搭載型である。これは彼等がニュータイプ能力を僅かながら持っているからであるというのがカミーユの見方である。
「君達も最初に比べて勘や動きが比較にならない程になった。そういうことさ」
「能力を引き出すってことでしょうか」
「簡単に言えばそうなるかもな」
「カミーユ」
 エマが声をかけてきた。彼女は既にスーパーガンダムに乗り込んでいた。
「エマ中尉」
「貴方が小隊長でしょう?早く来なさい」
「すいません。じゃあシンジ君」
「はい」
「続きは後でな」
「わかりました」
 こうしてカミーユも出撃した。シンジ達もエヴァの中に入った。既にクワトロはもう出撃していた。攻撃に入っている。
「バカシンジ、急ぐわよ」
 アスカの声がする。
「クワトロ大尉にばかり活躍されたら困るからね」
「わかったよ」
 シンジは頼りない声でそれに応えた。
「けど焦らないでよ。敵の数は半端じゃないんだから」
「そんなのイサムさんと同じよ」
 しかし当然というかやはりというかアスカは臆してはいなかった。
「まとめてやっつけてやるから」
「そうなの」
「だからあんたも頑張りなさいよ。へたっていたら承知しないから」
「うん」
「じゃあエヴァ弐号機でまぁーーーーーーす!」
「エヴァ初号機、お願いします」
 四機のエヴァも出撃した。そして戦場に向かった。
 クワトロはアムロと共に戦場に入っていた。既にファンネルを放っていた。
「やってみるさ!」
 放たれたファンネル達がティターンズ、そしてドレイク軍を撃つ。彼の周りで爆発が次々に沸き起こった。
 彼だけではなかった。アムロも攻撃を仕掛けていた。彼もまたフィンファンネルを放っていた。
「うおおおおっ!」
 敵の弱点を的確に貫いていく。そして敵を屠っていく。まさに白い悪魔であった。
「チッ、あの二人が先鋒かよ」
 ジェリドはそれを見て舌打ちした。
「俺が行くか」
「待て、ジェリド」
 だがそんな彼をカクリコンが制止した。
「どうしたんだ!?」
「あいつが来ているぞ」
「あいつか」
 彼にはそれだけでわかった。見れば目の前に青い翼がいた。
「カミーユ!」
「ジェリドか!」
 カミーユにもそれはわかった。すぐに変形を解きモビルスーツ形態になった。それと同時にライフルを放つ。
「出て来なければ!」
「御前を倒す為ならな!」
 ジェリドはビームライフルをかわした。そして逆にカウンターを仕掛けながら言う。
「俺は地獄にでも出てやるさ!」
「何を勝手な!」
 カミーユもそれをかわしながら言う。両者はそのままサーベルを抜いた。
 そのまま切り合いに入った。それでもまだ互いに言い合う。
「御前を倒して俺は!」
「どうするつもりだ!」
 カミーユも負けてはいなかった。
「ただ乗り越えるだけだ!御前は俺にとって壁だ!」
「壁!?」
「そうだ、壁があれば乗り越える!それが俺のやり方だ!」
「戦いをそんなふうに!」
「悪いか!」
「だから戦いがなくならないんだ!」
 二人は戦いを続ける。それを見て舌打ちする男がいた。
「チッ、奴はジェリドにとられたか」
 ヤザンであった。彼もまたカミーユを狙っていたのだ。
「ジャマイカン少佐はもうシャトルに向かっているな」
「はい」
 ダンケルがそれに答えた。
「指揮はガディ少佐がとっておられますが」
「ガディ少佐ならいい」
 ヤザンはそれに頷いた。
「やりやすいからな。おい」
 そしてあらためてダンケルとラムサスに声をかけた。
「俺達は俺達でガンダムをやるぞ。あのスーパーガンダムだ」
 カミーユと同じ小隊にいるエマのものだ。
「あれなら相手には不足はねえ。いいな」
「了解」
「わかりました」
 二人はそれに頷いた。そしてヤザンに従い動いた。
「行くぜ!」
 エマのスーパーガンダムに襲い掛かる。だがスーパーガンダムのロングライフルが火を噴いた。
「うわっ!」
 何処からかビームも放たれていた。それによりラムサスとダンケルのハンブラビがダメージを受けた。
「大丈夫か!」
「はい、何とか」
「最小限に抑えました」
 二人は何とか無事だった。ヤザンの部下だけはあった。
「無理はするな、いいな」
「はい」
「誰だ、さっきのビームは」
 エマの他に来たビームの主を探る。
「何か妙なプレッシャーを感じるが・・・・・・。奴か」
 ガンダムマークⅢに気付いた。フォウのものであった。メタスもいた。
「女ばかりか。だがいい」
「ヤザン大尉ね」
 スーパーガンダムから問い掛けがあった。エマの声であった。
「エマ中尉かい」
「そうよ」
 エマは答えた。
「カミーユじゃなくて残念だったかしら」
「俺は贅沢は言わねえ主義でな」
 それに対しこう返す。
「誰でもやってやらあ。戦えるんならな」
「そう」
「行くぜ、覚悟しな!」
「そっちこそ!」
 彼等も戦いに入った。見ればカクリコン達もジュドー達と戦いに入っていた。戦いは熾烈なものとなっていた。
「ティターンズが本格的に戦いに入ったか」
 後方にいるゲア=ガリングから戦局を見守る男がいた。
「ビショット様、どうなされますか」
「ドレイクもおります」
 その男ビショットはルーザに対してそう答えた。
「ここは真面目にやりましょう。赤い三騎士を出します」
「わかりました」
 ルーザはそれに頷いた。反対する理由もない。
「彼等は遊撃に。まあ適度にやってもらいましょう」
「ショットも動いておりますしね」
「ほう、ショットも」
 ビショットはそれを聞いてその目を細めた。
「どうやらあの男も空気を読んでいるようですな」
「そうでしょう。ミュージィも出ているようです」
「ミュージィもですか」
「ここがとりあえずの正念場ということでしょう。ドレイクも前に出ています」
「確かに」
 見ればウィル=ウィプスは前線に出ていた。そして攻撃に加わっている。
「それでは我等も行くとしましょう。適度にね」
「わかりました」
 ゲア=ガリングも前線に出て来た。見ればスプリガンも動いていた。彼等もまた全面攻撃に加わろうとしていた。
「クッ、あの連中まで来たか」
「けれどそれは予想通りだろ?」
 ショウに対しトッドがそう声をかけてきた。
「俺達にとっても連中にとってもここが一つの正念場なんだからな」
「ああ」
「出て来るぜ、注意しな」
 そしてこう言ってきた。
「わかるだろ、来ているのが」
「ああ」
 ショウはまた答えた。
「とりあえず赤いの三人はニー達がやってくれ」
「わかった」
「ミュージィも来ているわよ」
「マーベル」
「彼女は私が相手をするわ。任せて」
「頼む」
「アレンの旦那とフェイは俺とガラリアで相手をするぜ。それでいいな」
「ああ」
 ガラリアはトッドの問いに頷いた。
「ジェリルとあの旦那は御前持ちだ。どっちかにした方がいいがな」
「ジェリルか」
「戦艦は女王様方にやってもらうか。スプリガンは何とかなるな」
「私がいるじゃない」
 何故かここでユリカが出て来た。
「あんたか」
「私に任せて。そのスプリンターってのやっつけてやるから」
「スプリガン」
「細かいことはいいじゃない。それでそのジェリルも」
「そうそう容易な相手じゃないぞ」
 ショウがそう忠告する。
「いいのか」
「その人はアキトさんにお願いします」
 ルリがここでこう言った。
「俺が」
「はい」
 ルリがアキトに答えた。
「アキトさんなら大丈夫です」
「ルリ」
 ショウが彼女に声をかけてきた。
「何でしょうか」
「ジェリルは生半可な相手じゃない。いいのか?」
「勿論です。だからこそアキトさんにお願いしているのです」
「アキト、いけるか」
「やってみる」
 アキトの答えはそれであった。
「とりあえずは。けれど何かあった時は頼むよ」
「うむ、任せておけ」
 それにダイゴウジがすぐに答えた。
「御前の後ろはこのダイゴウジ=ガイが守るからな」
「俺もいるしな」
「私も」
 サブロウタとナガレもいた。彼等もまたアキトと共にいたのである。
「じゃあ頼めるかな」
「そのつもりで御前と小隊組んでるんだよ」
「水臭いことは男にとってあってはならんことだ」
「そういうことです」
 ルリのその言葉が決め手となった。
「アキトさん、それではお願いしますね」
「わかった。それじゃあ」
「頼むぞ」
 ショウも声をかけた。そしてそこに迫る赤い悪魔に備えた。
「来たぞ!」
「アキトさん!」
「ああ!」
「あっはははははははははははははは!」
 異常な笑い声が戦場に木霊する。そしてジェリルのレプラカーンが姿を現わした。
「ショウ、そこにいたのかい!」
「ジェリル!」
「今度こそその首もらうよ!」
 ジェリルが突進する。だがそこにアキトのエステバリスが出て来た。
「御前の相手は俺だ!」
「何だい、この坊やは」
 ジェリルは動きを止めてそう問うた。
「あたしの前に出て来るのなら容赦はしないよ」
「最初からそのつもりだ」
「うんうん、それでこそ私のアキトよ」
 ユリカはジェリルと対峙するアキトを眺めて満足そうであった。
「そんな赤い髪のパンクなんかとっととやっちゃって」
「艦長、あれはヘビメタですけれど」
 メグミがそう注釈を入れる。
「パンクとヘビメタは違いますよ」
「あら、そうだったの」
 ユリカはそれを聞いてキョトンとした顔になった。
「同じものだと思ってたわ」
「パンクもヘビメタもどうでもいいんだよ」
 それに当人が答えてきた。
「今のあたしはね、血を見られればいいんだから」
「・・・・・・・・・」 
 それを聞きながらアレンとフェイは深刻な顔をしていた。彼等もまたそれぞれの相手と対峙していたのであった。だがジェリルのことは目についていた。
(やはりな)
(どんどんおかしくなってきていやがる)
 彼等は彼女をそう見ていた。そして危惧を覚えずにはいられなかった。
 しかしジェリル本人はそれに一向に気付かない。まるで鬼の様な顔でアキトを見据えていた。
「小僧、覚悟はいいね」
 今にも首を引き抜かんようであった。
「容赦はしないよ」
「そんなもの最初から求めちゃいないよ」
「アキトは私だけを求めてるのよね」
「艦長、ラーメンだったんじゃ」
 今度はハルカが突っ込みを入れてきた。しかしユリカには効果がない。
「何言ってるのよ、それは照れ隠し」
「そうでしょうか」
「ハーリー君、そう考えた方がいい場合もありますよ」
 ルリが彼をそう嗜める。しかしユリカの耳にはやはり入ってはいない。だがそこにスプリガンが迫ってきた。咄嗟にユリカが動いた。
「そこの戦艦にミサイル!」
「了解!」
 クルーはすぐにそれに反応する。そしてスプリガンにミサイルを放った。
「ヌッ!」
 そのミサイルが何発か命中した。ショットは思わず呻き声を漏らした。
「あの船の艦長、できるな」
「ショット様、御無事ですか」
 すぐに女の声が入って来た。
「ミュージィか」
 彼はそれを聞いて微かに笑った。
「心配無用だ。今は御前の戦いに専念しろ」
「わかりました」
 ミュージィは素直にそれに従った。そしてモニターから姿を消した。ショットはそれを確認した後で前に顔を戻した。
「あの艦は確かナデシコだったな」
「はい」
 部下の一人がそれに答える。
「艦長はミスマル=ユリカだったな。確かまだ若い筈だが」
「データによりますとその通りです」
 先程の部下がまた答えた。
「そうか。まさかこれ程までとはな」
「如何なされますか」
「決まっている。我々も迎撃だ」
「ハッ」
「容赦はするな。撃沈しろ」
「わかりました」
 スプリガンも反撃を仕掛けてきた。だがナデシコはそれを何なくかわした。
「そう、左!」
 ユリカがまた叫んでいた。
「それでかわせるから。ほらね!」
 艦橋ではしゃいでいた。今にも跳び上がらんばかりであった。
「艦長、落ち着いて下さい」
「いいのよ、私はこうなんだから」
 ルリの言葉も気にしない。
「どんどんやっちゃって!いいから!」
 そしてまたスプリガンに攻撃を仕掛けた。二隻の艦の戦いも続いていた。
 そしてショウもまた戦っていた。あの男がやって来たのだ。
「そこか、ショウ=ザマ!」
「バーン!」
 その男バーン=バニングスは一直線にショウのところへ向かって来た。そして剣を抜く。
「今日こそは貴様を倒す!」
「やらせるか!」
 しかしショウも負けてはいない。それを自らの剣で受け止めたのであった。
「ぬうう」
 バーンは剣を結び合いながらもショウを見据えていた。その目は憎悪に燃えていた。
「ショウ=ザマ、貴様がいる限り私は」
「この目」
 ショウはそれを感じハッとした。
「そしてこのオーラ、あの女と同じ」
「女のことなどどうでもいい」
 バーンはショウの言葉に対しそう言い返した。
「私は貴様さえ倒せればそれでいい!覚悟しろ!」
「ショウ!」
「わかってる!」
 チャムも彼のオーラに気付いていた。
「バーン、憎しみに心を支配されるか!」
「言った筈だ!私は貴様さえ倒せればそれでいい!」
 バーンは即座にそう返した。
「貴様さえな!」
「クッ、やはり同じか」
「ショウ、どうするの?」
「決まってる」
 チャムに対してそう答えた。
「バーン、御前を止める」
「私を止める必要はない」
 だがバーンはそう答えた。
「どういうことだ」
「私が貴様を倒すからだ。何度でも言ってやる!」
「ならば俺は」
 ショウのビルバインが剣を構えた。
「貴様のその悪しきオーラを切る!覚悟しろ!」
「オーラなぞ!」
 二人もまた死闘をはじめた。オーラバトラー達もまた死闘に入っていた。
 戦いは二つの戦域で激化していた。だがその他の場所でも戦いがはじまっていた。
 シャトルへ続く戦域で既にブランのアッシマー隊が戦いに入っていた。だがそこにいたのはアッシマー隊だけではなかったのである。
 ウッソはその時聴いた。あの音を。
「これは」
「ウッソ、どうしたんだ?」
 彼にオデロが声をかけてきた。
「オデロ、気をつけて」
「!?」
「後ろに下がって。すぐに」
「?あ、ああ」
 オデロは素直にそれに従った。すると彼が今までいた場所を太い一条の光が通り抜けた。
「な・・・・・・」
「やっぱり」
 ウッソはそれを見て悟った。そして光が来た方に目をやった。
「ファラさん、やはり生きていたのか」
「フフフ、相変わらず勘がいいねえ」
 そこに赤紫のモビルスーツが立っていた。その中に妖艶な顔立ちの赤紫の髪の女がいた。
「ウッソ、あんたを殺す為に地獄から舞い戻ってきたよ」
「馬鹿な、あんたは死んだ筈」
 ジュンコが彼女の姿を認めて驚きの声をあげた。
「木星の戦いで。それがどうして」
「偶然ってやつさ」
 その女ファラ=グリフォンはマーベットの言葉にそう答えた。
「偶然」
「そうさ、ティターンズの部隊に拾われてね。それで今ここにいるのさ」
「チッ、悪運の強い奴だね」
「言っておくけれどあたしだけじゃないよ」
「それはどういうことですか!?」
「わからないのかい?坊や」
 そう問うてきた。
「!?」
「このプレッシャーをね。あたしでさえ感じるってのに」
「!?まさか」
「ウッソ、間違いねえぞ!」
 オデロにも今感じられた。
「アハハ、その通りさ」
「その声は」
「ウッソ、私もいるんだよ」
 そこにはかって木星帝国でファラ=グリフォンのザンネックと並んで悪魔と恐れられたマシンがいた。ゴトラタンであった。それに乗る女は一人しかいなかった。
「カテジナさん、貴女まで」
「私も地獄の奥底から甦ってきたのよ」
 ウッソを見据えてそう宣言する。
「クロノクルと共にね」
「白いの、私もいるのだ」
 赤い髪の青年がそこにいた。かって木星帝国の女王の弟であったクロノクル=アシャーがいた。彼はリグ=コンティオに乗っていた。
「御前を倒す為にな」
「クロノクル、悪いけれど」
 カテジナ=ルースが前に出て来た。
「ウッソは私にやらせて」
「カテジナ」
「いい?」
「・・・・・・・・・」
 彼はそれに対して沈黙した。迷っていたのだ。だがそれを認めることにした。
「わかった。いいだろう」
「有り難う」
「ウッソ、あたしもいるんだよ」
 ファラもウッソに対してそう言った。
「あたしはねえ、誰と戦っていようがあんただけを見ているからね」
「クッ」
 その声と目には狂気が宿っていた。まるで魔物のようであった。
「いいね、その首あたしが貰い受けてやるから」
「マーベット」
「ええ」
 ジュンコとマーベットはそれを聞いて互いに頷き合った。そしてザンネックの方に向かった。
「おや、邪魔をするつもりかい?」
「邪魔じゃないわ」
 ジュンコが彼女にそう返す。
「ウッソはやらせない、それだけよ」
「その為に・・・・・・貴女を止めるわ」
「できたらね」
 二人を前にしてもその狂気は変わってはいなかった。
「あたしを止められる女なんてこの世にはいやしないんだから」
「何て女だ」
 オデロはそれを聞いて絶句していた。
「前に戦った時より酷くなっていやがる」
「オデロ、そう言っていられる場合じゃないかも」
 しかしここでウッソの声がした。
「ウッソ」
「オデロはクロノクルさんを頼む。いいかな」
「ああ」
 彼はそれに頷いた。
「俺はそれでいいぜ。どのみち相手を選ぶつもりもないしな。しかしな」
「何!?」
「ウッソ、気をつけろよ。カテジナさんはもう昔のカテジナさんじゃない」
「わかってるよ」
 認めたくはないがその通りであった。
「わかるから。プレッシャーで」
「ならいいけどな」
「僕も迷わない、カテジナさんが僕の前に立ちはだかるのなら」
「どうするの?」
 何とカテジナ本人が問うてきた。
「ウッソ、言ってごらんなさい。私をどうするのかしら」
「倒します」
 それが答えであった。
「カテジナさん、例え貴女でも」
「いい答えだわ。その通りよ」
「!?」
 オデロはその言葉の使い方に疑問を感じた。
「まさかまだ酷くなるのか?」
「私も貴方を倒すわ。さあ、ウッソ」
 またウッソの名を呼んだ。何故かそれは血の滴りを感じさせる声であった。
「いらっしゃい。可愛がってあげるわよ」
「・・・・・・・・・」
「ウッソ、気をつけろよ」
 オデロがまた声をかけてきた。
「わかってるとは思うがな」
「うん」
 それに頷いた。そして前に出る。
「カテジナさん、行きます!」
「ウッソ、私の手の中で!」
 両者は互いに激突した。こうしてシャトルの前でも激しい戦いが開始された。
 戦いは熾烈さを増していく一方であった。だがその中でそこから逃げようとする者達もいた。
「ええい、シャトルはまだ出ないのか!」
 ジャマイカンであった。彼はシャトルで宇宙に脱出しようとしていたのであった。
「このままではロンド=ベルに捕まってしまうぞ!」
 ヒステリックにシャトルのパイロットに対してそう喚く。だがパイロットは冷静に返した。
「もう少しです、お待ち下さい」
「その待っている間にやられるのだ」
 ジャマイカンはまた喚いた。

「貴様も軍人ではないのか。その程度のこともわからんのか!」
「ですが」
「ですがも何もない!」
 ヒステリーは収まらなかった。
「早く出せ、さもないと貴様を軍法会議にかけるぞ!」
「少佐、一つ御聞きしたいのですが」
「何だ」
 ジャマイカンは問い掛けてきたシャトルのパイロットをジロリと見据えながらそれに応えた。
「詰まらぬ質問なら答えぬぞ」
「今戦っている我等の同志はどうなるのでしょうか」
「あの者達か」
「はい」
「問題はない。作戦が失敗したならばサンクトペテルブルグを経て北欧に逃れるように伝えてある。サンクトペテルブルグまでの道はクロスボーンの者達が守っているな」
「はい」
「ドレイク殿の軍もある。それは問題ない」
「それを聞いていささか安心しました」
「全てはジャミトフ閣下のご指示だ。それを忘れるな」
「それでは少佐が宇宙に行かれるのも」
「うむ」
 ジャマイカンは頷いた。
「閣下のご命令だ。今厄介なことが起こっているらしくてな」
「厄介なこと」
「私も詳しいことはまだ知らぬ。だが重要なものであることは確かだ」
「はあ」
「わかったら早く行け。今宇宙には閣下とバスク大佐の部隊の他はシロッコのジュピトリスしかない」
「ジュピトリスですか」
「シロッコは信用できぬ。一度はバルマーに膝を屈した男だ」
「はい」
「それはわかるな。では行け」
「あと十秒です」
「十秒か」
「はい。十、九、八、七」
 パイロットはカウントをはいzめた。
「六、五、四、三、ニ、一」
 次第に離陸の時が近付いてくる。シャトルのエンジンに火が点いた。
「零!」
 そして離陸した。ジャマイカンを乗せたシャトルは瞬く間に空の彼方へと消え去ってしまった。
「行ったか」
「チッ、逃げ足だけは相変わらずだな」
 ロンド=ベルの面々はそのシャトルを見上げてそう悪態をついた。
「大将が逃げちまっちゃ話にならねえじゃねえか」
「いや、そういうわけでもない」
 宙にアムロが答えた。
「どういうことだ」
「このオデッサは東欧の要地だ。ここを抑えればそのまま北にも東にも西にも行ける」
「ああ」
「そして南にも。黒海を使ってな」
「そんなに重要な場所だったのか」
「そうだ。だからこそジオンもティターンズもここを狙った。そして」
「そして?」
「ティターンズとドレイク軍を叩くチャンスだ。今戦わなくてどうするというんだ」
「そうか、そうだな」
 宙はようやくアムロの言葉に頷いた。
「わかったぜ。俺も真面目にやらせてもらうか」
「宙さん、今まで真面目じゃなかったの?」
「ミッチー」
「それどういうことなの?」
「単なる言葉のあやだよ」
 彼はそれに対してそう答えた。
「言葉のあや」
「俺が戦いに手を抜くとでも思うのかよ」
「それはないと思うけれど」
「そういうことだ。わかったらついて来てくれ。ピッチを早める」
「ええ」
 やはり宙が中心であった。ミッチーはそれに従った。
「けれど宙さん」
「何だ」
「くれぐれも無茶はしないでね。言っても無駄でしょうけれど」
「俺は不死身なんだ、無茶は当然だ」
「またそんなことを」
「いいからミッチー、あれを出してくれ」
「あれって?」
「ジークドリルだ。大至急だ!」
「わかったわ。ジークドリル発射!」
「よし!」
 ジーグの手にドリルがついた。それで敵に突進する。そこには三機のバーザムがいた。
 だが彼等は一瞬で倒されてしまった。それ程までにジーグの動きと攻撃力は絶大であったのだ。そしてそれは彼だけではなかったのであった。
 彼等と小隊を組むゲッターチームもいた。ゲッターチームはライガーに変形していた。
「チェーンアタック!」
 隼人の声が戦場に木霊する。そして一体のハイザックを絡め取った。
「よし!」
 そしてそれを空中で振り回す。放り投げた後で大地に叩き付ける。その寸前にパイロットは脱出ポッドで逃れていた。
 ハイザックが爆発した。隼人はそれを見てクールに笑っていた。
「命だけは助かったようだな」
「HAHAHA,また隼人のキザデスネーーーーーー」
 そこでお決まりのジャックの声が聞こえてきた。彼もまたリボルバーを手に戦っていた。
「ジャックか」
「ユーの戦いぶりにはいつも惚れ惚れシマーーース!ミーの次に格好いいデーーーース!」
「もう、また兄さんたら」
 例によってメリーが困った声を出す。
「そんなのだから三枚目って言われるのも」
「ノープロブレム!」
 しかし彼は困ってはいなかった。
「ミーの格好よさはそうそうはわからないものなのデス!」
「そうだったのか」
 竜馬がそれを聞いて首を傾げた。
「ううん、世の中というのはわからないな」
「御前さんの声を聞いていると納得できるな」
 宙が彼に対してそう言った。
「どっかの拳法家や超人や街の狩人とかはなしだぞ」
「妙な組み合わせだな」
「そういう宙さんもピッチャーや聖闘士や超能力者だったんじゃなかったかしら」
「ミッチー、それは言わない約束だぞ」
 流石の宙もあまり言われたくはないことがあるようであった。
「御免なさい」
「わかってくれればいいけれどな。それでだ」
「ああ」
「今は竜馬が中心になって戦わないんだな」
「地上にいるからな」
 竜馬はそれに対してそう答えた。
「地上に」
「ああ。モビルスーツは地上にいることが多いからな」
「成程」
「それで俺が出ているのさ。ゲッターライガーでな」
「そうだったのか。海だったらまた別だな」
「その時は俺の出番だ」
 今度は弁慶が出て来た。
「俺のゲッターポセイドンが大暴れしてやるぜ」
「頼むぜ。俺も海での戦いはあまり得意じゃないからな」
「そうだったのか」
「まあ海の中で女神の為に戦ったことも・・・・・・いや何でもない」
「自分で言ったら何にもならないわよ」
「すまない」
 困った顔をするミッチーに対してそう謝罪した。
「とにかく今は一気に攻めよう。いけるか」
「ああ」
 隼人はそれに頷いた。
「速攻はライガーの得意戦法だ。御前さんこそ遅れるなよ」
「おい、俺は元レーサーだぞ。それはレーサーに言っていい台詞じゃないぜ」
「おっと、そうだったな」
「そういうことだ。隼人、遅れるなよ!」
「望むところ!ゲッタービジョン!」
 分身した。そしてそれで敵の攻撃をかわしながら突き進む。
 彼等もまた敵を次々と屠っていった。ティターンズもドレイク軍も十倍の数がありながら彼等に為されるがままであった。
「ふむ」
 ドレイクはそれを見て一言呟いた。
「どうやらここではまだ決着をつけるべきではないようだ」
「ではどう為されますか」
「そろそろではないのか」
 問うた家臣に対してそう答える。
「といいますと」
「北のあの街への道に配された者達だ」
 彼はサンクトペテルブルグのクロスボーンについて言及しているのであった。
「確か我等のいざという時の退路を確保していたな」
「はい」
「それを使うとしよう。連絡するがよい」
「わかりました」
 こうしてドレイクは部下に連絡させた。そしてウィル=ウィプスは徐々に後方に退いていった。それにまず気付いたのはルーザであった。
「ビショット様」
「どうなされました?」
「ドレイクが撤退しようとしております」
「まことですか?」
「はい、あれが証拠です」
 指差す。そこには後方に下がっていくウィル=ウィプスがいた。
「ふむ」
「あれが何よりの証拠と思いますが」
「確かに。では我々もそろそろ潮時ですか」
「そう思います。どうかご決断を」
「わかりました。それでは我々も退きましょう」
「はい」
 ゲア=ガリングも後方へ退きはじめた。それを見てショットも不審に思った。
「ドレイクもビショットも何を考えているのだ」
「ショット殿」
 そこにガディが通信を入れてきた。
「ガディ少佐」
「どうやら事情が変わったようです」
「といいますと」 
 それに答えながらドレイクとビショットの行動について考える。
「今戦局は我等にとって芳しくありません」
「はい」
 それは言うまでもないことであった。
「機を見るべきかと思いますが」
「それはドレイク閣下の御意見ですか」
「ドレイク閣下の」
「はい」
 実はティターンズの者の多くはドレイク軍が一枚板だと思っているのである。それはガディも同じであった。
「違いますか」
「確かにそうです」
 ショットはとりあえずはそう答えた。
「ここは退くべきかというのがドレイク閣下の御考えです」
「やはり」
「ガディ少佐はどう思われますが」
「そうですな」
 ガディは考えた後でそれに答えた。
「私はドレイク閣下と同じ考えです」
「そうですか」
「今我が軍の損害は五割に達しようとしております」
「それはこちらもです」
 三割で全滅とされる。それを考えると今の両軍のダメージはかなりのものであった。
「既に大勢は決しました。指揮官であるジャマイカン少佐もシャトルで宇宙に出ました」
「はい」
「ここはやはり撤退すべきかと思います。既に援軍が北から向かっております」
「我が軍のクロスボーンですな」
「はい。どうなされるべきかもう答えは出ていると思いますが」
「確かに。ではショット殿、ここは北欧に撤退します。それで宜しいですな」
「はい」
 ショットも頷いた。そして再びガディに対して言った。
「クロスボーンが来るまで後詰は我等が引き受けましょう」
「宜しいのですか?そちらもかなりのダメージを受けているのでは」
「何、心配いりません」
 ショットはそう答えてニヤリと笑った。
「こちらにも切り札がありますのでね」
「そうですか。切り札が」
「ええ」
「ではお任せします。こちらもパイロットを集めて戦場を離脱しなければなりませんので」
「お気をつけて。後ろをお任せ下さい」
「はい」
 こうしてガディはモニターから姿を消した。それを見届けてからショットはミュージィに対して通信を入れた。
「ミュージィ」
「はい、ショット様」
 すぐにミュージィが答えた。
「暫くの間後詰を頼む。いけるか」
「お任せ下さい」
 彼女はそれに頷いた。
「ショット様のご命令とあらば。この命喜んで捧げます」
「いや、それは止めてくれ」
 だがショットはその言葉を拒んだ。
「何故」
「御前に何かあっては私が困る」
 それは駒としてであろうか。それとも別の視点からであろうか。それはショットにしかわからない。
「よいな。暫くでいい。危なくなったらすぐに退け」
「わかりました」
「確か今ガラリアと対峙していたな」
「はい」
「それは気にしなくていい。だから奴との戦いは退け。よいな」
「ハッ」
 ミュージィはそれに従った。そして彼女もまたモニターから姿を消した。
「これでよし」
 ショットは真っ暗になったモニターを見てそう呟いた。
「たまにはこうして得点を稼いでおかなくてはな。ドレイクやビショットに遅れをとる」
 彼もまた政治を見ていた。その目は戦場よりも政治を見ていたのであった。
 そうした点において彼とドレイクは同じであった。しかし彼は一つのことを見落としていた。そしてそれにはまだ気付いてはいなかったのであった。
 戦いは終幕に近付いていた。ティターンズもドレイク軍も北へ向けて兵を動かしていた。エースパイロット達も戦いを止めそれに従っていた。
「逃げるか」
「多分な」
 忍に真吾がそう答える。
「多分北欧にでも逃げるのだろうな」
「わお、フィヨルドね」
「何かあの旦那がまたあの言葉を言いそうなところだな」
「御前さん達北欧にも言ったことがあるのかよ」
 忍はそれを聞いて問うた。
「いや、ない」
 真吾はそれに対してそう答えた。
「言ってみたいとは思うがな」
「そうよね。ここもいいけれど」
「戦場よりは観光がいいからな」
「それはちょっと違うんじゃないの?」
 沙羅が異論を述べてきた。
「あら、何故かしら」
「あたし達がそこに行くってことはそこが戦場になるからね。だから観光はできないでしょ」
「あらら、そうだったわね」
 それでもレミーの軽い調子は変わらなかった。残念そうには見えないのが現実であった。
「難しいわね、そこは」
「けれど一度はゆっくりと見てみたいなあ」
「ローラとか、雅人」
「違うよ」
 亮の言葉に苦い顔をする。
「一人で言ってみたいんだよ。オーロラも見たいし」
「それは北極や南極で見られるんじゃないのか?」
 真吾がそう問うてきた。
「南極はもう殆ど消し飛んでいるけれどな」
「それでもペンギンやアザラシはいるらしいわよ」
「生命は偉大だね」
「いや、そういう問題じゃなくて」
「あれ、ペンギンじゃないのか?」
「俺が見たいのはオーロラなんだけれど」
「おっと、そうだった」
「見られればいいけれどな。サンクトペテルブルグで見られるかなあ」
「少し北に行けば見られるぞ」
 亮がそう答えた。
「フィンランドとかな。行ければだが」
「行けたらいいな」
「戦争だけれどな」
「それはもう諦めてるよ」
 そんな話をしながらもロンド=ベルはティターンズとドレイク軍の追撃に掛かっていた。ショットの部隊がそれを止めていた。しかし彼はそれ以上に状況を見ていた。
「そろそろか」
「ですな」
 部下の一人がそれに答える。
「では我々も引きますか」
「うむ。ミュージィ」
 ショットがミュージィのブブリィに通信を入れてきた。
「はい」
「撤退だ。もういい」
「わかりました」
 彼女はそれを受けて撤退した。しかしそれでもなお執拗に戦いを続けている者達がいた。
「カミーユ、まだだ!」
「まだやるtっていうのか!」
 ジェリドはそれでもなお執拗にカミーユと戦いを続けていた。徐々に退いてはいるがそれでも彼は戦いを止めようとはしなかった。
「ジェリド、まだやっているのか」
 カクリコンがそこに声をかける。
「カクリコン」
「ヤザン達も退いた。御前も退け」
「しかし」
「退くのも軍人だ。今はその時だ」
「・・・・・・チッ」
 カクリコンに言われては従わないわけにはいかなかった。彼は舌打ちをしながら戦場を離脱することにした。ゼータⅡと距離を置きながらメガビーム砲を放った。
「クッ!」
 カミーユがそれをかわす間に彼はメッサーラを変形させた。そして戦場を離脱した。
「ジェリド、また来るな」
「カミーユ」
 そこにファがやって来た。カミーユを心配そうな顔で見ている。
「どちらかが死ぬかまでやるしかないっていうのか」
「・・・・・・・・・」
 ファはそれに答えなかった。今はただ心配そうな顔をカミーユに向けているだけであった。
 ウッソとカテジナもであった。ファラはもうジュンコ、マーベットとの戦いを止めていた。しかしそれでも戦場に留まっていた。
「一体何をするつもりなんだ!?」 
 クロノクルは既に戦場を離脱していた。オデロは自由になったがファラの監視を続けていたのであった。
「フフフフフ」
 ファラは奇怪な笑みを浮かべていた。そしてザンネックを宙に浮かしていた。
「ファラさん、一体何を」
「ウッソ!」
 そこでカテジナの声がした。
「私から余所見をするなんていけない子ね!」
「うわっ!」
 そこにビームが来た。ウッソはそれを咄嗟にかわした。
「そうよ、貴方は私だけを見ていなければ駄目なのよ」
「カテジナさん・・・・・・」
 その目には最早狂気しか宿ってはいなかった。
「また余所見をして御覧なさい。今度こそ命を奪ってやるわよ」
「まずいな、これは」
 オデロはそれを見て目を顰めた。カテジナとファラから目を離さない。
「ジュンコさん、マーベットさん」
 そして二人に声をかけた。
「わかってるわ」
 二人はそれに頷いた。既にわかっているようであった。
 三機のガンダムが同時に動いた。そしてファラのザンネックも動いた。
「アッハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!」
 狂気じみた笑い声が戦場に木霊した。そしてファラのザンネックがビームを放ってきた。
「ウッソ、あたしのものになりな!」
「なっ!」
「ウッソ、上だ!」
 オデロが咄嗟に叫んだ。
「上に飛べ!」
「わかった!」
 それに従った。そして彼はザンネックのビームをかわした。
「チッ!」
 攻撃をかわされて悔しがるファラ。だがそこに一瞬の隙ができていた。オデロ達はそれを見逃さなかった。
「今だっ!」
 ザンネックに総攻撃を仕掛けた。そしてそれを大破させたのであった。
「ヌッ、ウッソ以外の奴に!」
「あたし達もいるってことを忘れて欲しくはないわね」
 ジュンコがファラに対してそう言う。
「それにウッソをやらせるつもりはないんでね」
「そういうことね」
 マーベットも言った。
「悪いけれど貴女には退場してもらうわ」
「クッ、覚えておいでよ」
 ファラはそう悪態をついた。
「ウッソの首を獲るのはあたしなんだからね。その可愛い首に接吻してあげるよ、フフフ」
「うっ・・・・・・」
 オデロはそれを聞いて背中に悪寒が走るのを禁じえなかった。何か生理的に受け付けないものすら感じていた。
「この女も」
「カテジナ」
「何!?」
 カテジナはファラの声を聞いて不機嫌そうに彼女に顔を向けてきた。
「退くかい、そろそろ」
「何を言ってるのよ」
 しかし彼女はそれに従おうとしなかった。
「ウッソが前にいるのに。何故去る必要があるの!?」
「ウッソは何時でも可愛がることができるよ」 
 その声に無気味なぬめりが混ざった。
「けれど二人でそれを競うのはできないんじゃないのかい?今は」
「貴女のせいでね」
「けれどこれは約束だよ。いいとこのお嬢さんは約束を守るんだろう?」
「・・・・・・フン」
 カテジナはそれを聞いて顔を顰めさせた。だがそれに従うことにした。
「わかったわ、ファラ。ここは貴女に従うわ」
「そういうことだね」
「けれど覚えておきなさい」
 これはカテジナの彼女への対抗心そのものであった。
「ウッソの首を愛でるのは私よ」
「今のうちに言っておきな」
 しかしそれでもファラの態度は余裕であった。
「今のうちだからね。夢を見られるのは」
「フン」
 カテジナはまた悪態をついた。だがここで彼女も撤退した。退きながらウッソに対して声をかけてきた。
「ウッソ」
「は、はい」
「愛しているわよ」
「・・・・・・・・・!」
 その目に禍々しいものを宿らせながら。それを見たウッソの背に悪寒が走った。彼もまたオデロと同じものを感じていたのだ。
「ずっとね」
 そして彼女は去った。後にはえも言われぬ禍々しいプレッシャーだけが戦場に残っていた。そしてまたここに憎悪の気を戦場に撒き散らす者がいた。
「バーン、まだやるか!」
「無論!」
 バーンはショウに対してそう返した。
「私は最早貴様さえ倒せればそれでいい!」
「まだそんなことを!」
「ショウ=ザマ、私は騎士の出だ」
「それがどうした!」
「その出自にかけて貴様に敗れるわけにはいかんのだ!それは私の全てだからだ!」
「まだそんなことを!」
 バーンにも意地があった。彼は今その為に戦っているといって過言ではなかった。だからこそ戦場にいるのだ。だがショウにとってそれは偏執的なものでしかなかった。そして彼以外の者もそう見ていた。
「おいバーンさん」
 そこに三機の赤いビアレスがやって来た。クの国の赤い三騎士である。
「む、お主達か」
 バーンは彼等に顔を向けてきた。
「そろそろ撤退したらどうだ。もうティターンズもあらかた撤退しているぞ」
「地上人なぞどうでもよい」
 バーンはそれに対して素っ気無くそう返した。
「今私はショウ=ザマと戦っているのだ。邪魔をしないでもらいたい」
「悪いがそういうわけにはいかない」
「何!?」
「ドレイク閣下も撤退されている。これ以上の戦闘は命令違反にもなるぞ」
「ドレイク閣下もか」
「そうだ。流石にあんたでもドレイク閣下に逆らうのはどうかと思うんだが。どうだ?」
「ううむ」
 ドレイクの名を出されて流石のバーンも考え込んだ。
「閣下のご命令にだけは背くわけにはいかない」
「そういうことだな」
「じゃあ帰るか」
「致し方あるまい。ショウ=ザマ」
 そしてまたショウに顔を向けてきた。そして最後にこう言った。
「勝負はお預けだ。だが貴様を倒すのはこの私以外にはない。よく覚えておけ!」
「まだそんなこと言って!」
「チャム、いい」
 ショウはチャムを制止した。
「今はな」
「そうなの」
「ああ。どのみち奴とはまた会う」
「しつこく向こうからやって来るしね」
「その時でいいさ。しかし」
「しかし・・・・・・何!?」
「バーンのオーラも・・・・・・。禍々しくなってきている」
「そだね」
 それはチャムも感じていた。
「ジェリルのものとは感じが違うけれど。何か変になってきているよ」
「増幅もしている。何もなければいいが」
「うん」
 二人はビルバインのコクピットでそんな話をしながら退いていくバーンのレプラカーンの後ろ姿を見ていた。赤い筈のその機体が何故か黒く見えていた。
 こうして戦いはとりあえずは終わった。ロンド=ベルは十倍の戦力差を覆し見事な勝利を収めたのであった。だがそれで戦いが終わったわけではなかった。
「ようやくオデッサを奪還したが」
 ブライトはラー=カイラムの艦橋でそう呟いた。それにモニターに姿を現わしたアムロが合わせる。
「これでお終いじゃないのが辛いところだな」
「ああ」
「その通り」
 そこにミスマル司令がモニターに出て来た。
「司令」
「オデッサの解放御苦労。これでティターンズとドレイク軍はウクライナから姿を消した」
「はい」
「しかし彼等は北欧に向けて撤退している。君達にはそれを追撃してもらいたいのだが」
「了解しました」
 ブライトは躊躇することなくそれに応えた。
「喜んで引き受けましょう」
「済まないな」
「いえ、これが仕事ですから」
 彼の言葉はあくまで軍人のものであった。
「作戦とあらば。それにティターンズもドレイク軍も敗れたとはいえまだかなりの戦力を持っております」
「うむ」
「それを何とかしなければなりません。彼等を地上から排除することは今の段階では不可能だとしても」
「その通りだ」
 司令はそこまで話を聞いて強い声で頷いた。
「それではやってもらえるな」
「はい」
「後のことは今からそちらに向かわせる部隊にやってもらう。君達はそのまま北に向かってくれ」
「わかりました」
「今そちらにティターンズの一部隊であるクロスボーン=バンガードが向かっている。彼等には注意してくれよ」
「クロスボーンが」
 シーブックがそれを聞いて顔を顰めさせた。
「やはり出て来るのか」
「予想はしていたけれど」
 セシリーもシーブックと同じ顔をしていた。
「私はコスモ=バビロニアから逃れられないのかしら」
「そんなことはない」
 だがシーブックがそれを否定した。
「セシリーはセシリーだ。そうじゃないのか」
「ええ」
「パン屋のセシリーだ。少なくとも俺はそう思っているよ」
「有り難う」
 セシリーはそれを聞いて顔を綻ばせた。
「じゃあ後でパンを焼くわ。また食べてね」
「ああ」
 シーブックも顔を綻ばさせてそれに応える。
「セシリーの焼いたパンを食べるのも久し振りだからな。楽しみにしているよ」
「うふふ」
「ところでだ」
 ミスマル司令はまだモニターに映っていたのである。そして声をあげた。
「ユリカはどうしているか」
「お父様、どうしたの?」
 それを聞いたのかユリカがキョトンとした顔でモニターに出て来た。
「戦いが終わってホッとしちえたところだったのに」
「おおユリカ」
 司令の顔が急に崩れてきた。
「元気だったかい!?お父さんは心配していたんだよ」
 目から涙を不自然なまで流している。そこには先程までの厳しい顔は何処にもなかった。娘を想う父の顔だとしてもかなり異様なものであった。
「大丈夫よ」
 しかし当のユリカは相変わらずであった。
「こんな戦い幾らやっても平気なんだから」
「十倍の戦力差でかよ」
 ビルギットがそれを聞いて呆れた声を漏らした。
「まったく凄い度胸だね」
 アンナマリーもであった。二人もこの戦いでかなり激しい戦闘を繰り広げていたのであった。二人共この戦いでの撃墜数は優に五機を越えていた。五機撃墜すればエースと認定されるのに、である。
「だから心配する必要なんてないのよ」
「しかしだなあ」
 司令の顔は崩れたままであった。
「お父さんはなあ、本当に心配だったんだよ。娘が戦場にいるというだけで」
「あの、司令」
 ここでブライトが話し掛けてきた。
「むっ」
 それを受けて顔が急激に元の厳しいものに戻る。
「何だね、大佐」
「・・・・・・百面相みたいだな」
「しーーーーーっ」
 アラドをレーツェルが嗜めていた。
「親から指揮官の顔に戻っただけだ。人間なんてそんなものさ」
「そうなんですか」
「アラド、そんなのだから貴方は子供だって言われるのよ」
 ゼオラも入ってきた。
「それ位わかりなさいよ。親の気持ちを」
「・・・・・・俺昔の記憶がないから」
 アラドはそれに対して暗い顔をしてそう答えた。
「えっ!?」
「気がついたらスクールにいた。そしてパイロットになったんだ」
「そうだったの」
「ゼオラは違うのかい?てっきり同じだと思っていたけれど」
「ご、御免なさい」
 彼女は急に謝ってきた。
「知らなかったわ。それは」
「そうだったのか」
「貴方のことなら何でも知っているつもりだったけれど、あの、その」
「いや、いいさ」
 アラドは戸惑うゼオラに対してそう言った。
「俺もゼオラの昔のことはよく知らないし。それでおあいこだろう?」
「そ、そうね」
 彼女はまだ戸惑っていたがそれに応えた。
「おあいこね。そうよね」
「そうさ。ところで」
「何!?」
「そろそろ熊のパンツは止めた方がいいんじゃないか。いい加減子供みたいだぜ」
「あんたもトランクス一週間もはきっぱなしにしてる癖に!」
 下着のことを言われてゼオラは激怒した。
「昔から下着は毎日替えなさいって言ってるでしょ!」
「いいじゃないか、ジュドー達だってそうだし!ドモンさんなんか一月程そのままの時があったって言ってるぞ!」
「あんな普通じゃない人と一緒に言わない!そんなのだからあんたは駄目なのよ!」
 いつもの二人に戻った。司令はその間もユリカとブライト達の間で交互に顔を変えていた。
「ユリカ、本当に気をつけておくれよ」
「それでクロスボーンの件だが」
「は、はい」
 これには流石のブライトも面食らっていた。戸惑いながら彼と話をする。
「暫く休んだらすぐに言ってくれるかね」
「わかりました」
「ユリカ、無理するんじゃないよ。御前に何かあったら」
「ロンド=ベルにいるから大丈夫よ。お父さんも気をつけてね」
「おお、何という優しい娘なんだろう!」
「そして一つ聞きたいことがあるのだが」
「え、ええ」
 まるで二人の人間の相手をしているようである。知ってはいても慣れるものではなかった。
「何でも銀色のマシンと遭遇したそうだね」
「あ、はい」
 ブライトはその質問にハッとした。
「そうです。何か素性の知れない少年が乗っていましたが」
「そうか、やはりな」 
 彼はそれを聞いて頷いた。
「彼から話はなかったが。やはり動いていたか」
「?彼とは」
「知らないのか、君達は」
「ゼオライマーのことでしょうか」
 ミサトがそれに答えた。
「葛城三佐」
「それなら知っておりますが。司令、それに関して何か」
「いや、それを知っているとなると話は早い」
「はい」
「今後そのゼオライマーがより活発に動くと思う。君達の前にも姿を現わすだろう」
「やはり」
 ミサトはそれを聞いて顔を引き締めさせた。
「司令、あのゼオライマーは破壊して宜しいでしょうか」
「破壊か」
「ネルフではそれも視野に入れておりますが」
「それも聞いているよ」
 司令のミサトへの返答はそれであった。
「冬月司令からね。だが少し待って欲しい」
「何故でしょうか」
「情報がまだ少ない。そもそもあれに乗っているのは少年だったな」
「はい」
「木原マサキではないようだが。なら一体どういうことなのだ」
「それは」
「破壊するのはもう少し様子を見てからにして欲しい。冬月司令にも私からそう言っておこう」
「そうですか」
「破壊するにしろそれからでも遅くはないだろう。だが気をつけてくれ」
「何をでしょうか」
「ゼオライマーの力だ」
 司令はブライトに対してそう答えた。
「あの力については私よりも君達の方がよく知っていると思う」
「はい」
 その通りであった。二機のマシンを一瞬で葬り去ったあの力を見て戦慄を覚えない者はいなかった程であった。
「くれぐれも気をつけて欲しい。君達でもあのマシンの相手をするのは困難かも知れないのだ」
「ですね」
 ブライトは表情を消してそに頷いた。ユリカも真摯な顔になっていた。
「あの力を使えば世界を灰燼に帰すことも可能でしょう」
「うむ」
「それは防がなければなりませんが。ですが覚悟は必要です」
「そういうことだ。だが今は気をつけるだけでいい」
「はい」
「そうなった時のことも考えていてくれ。今言えるのはそれだけだ」
「わかりました」 
 ブライトは敬礼した。それを合図とするかのように会談は終わった。ミスマル司令は最後まで娘との別れを名残惜しそうにしていたがそれでも別れる時が来たのだ。そしてそれに従わざるを得なかった。
 戦士達の戦いは続く。彼等には休息はなく次の戦場が待っていた。彼等はそこに向かう。それは何の為か。平和の為であった。


第二十八話   完


                                    2005・6・23


 
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