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IS《インフィニット・ストラトス》~星を見ぬ者~

作者:白さん
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第一話『居場所』

 
前書き
第一話です。まだIS成分はでませんが……どうぞ!! 

 
スウェンは先程まで遠のいていた意識が、ゆっくりと目覚め始める。


「っ……」


重い瞼を開け、頭を横にしてあたりを見渡す。スウェンは緩やかな斜辺の草むらに寝転がっている形で居る。ふと顔を正面に戻すとそこは彼が予想だにしない光景が広がっていた。


「そ、空……?星……?」


彼の視界に広がるのは、夜空。散りばめられた様に広がる星々だ。スウェンは目を疑う。先程は、意識が完全に覚醒していなかったから気づかなかったが、自分は宇宙にいて、あの機体のコックピットに居たはずだ。こんな草むらに居るはずがない。それに隣にいたあの女性が居ない。

彼は状況がうまく飲み込めていないようだ。これは夢なのか?それとも自分は死んでしまったのか?幾ら考えても答えは出てこない。だが、一つ解ることは、目の前に広がっている星空はとても美しいことだ。このような景色を見たのは初めてだ。スウェンは自然と微笑んでしまう。


身体に力が入らず、彼は再び意識が薄れていく。これは薬のせいではなく、純粋な睡魔なのだと彼は気づく。すると、誰かが彼に近づく。スウェンはそれを気に止めず、そのままゆっくりと眠りについた。




/※/




「…だ……とこ……」


話し声が聞こえ、スウェンは再び目を覚ました。今度は草むらではなく、ベッドの上だ。今度は身体がしっかり動く。彼はそれを確認しベッドから降りる。


「?」


スウェンは何か違和感を感じる。不意に近くの鏡に視線を送ると、そこに居たのは明らか背丈とその顔つきは10代前半の少年の姿だ。僅かに驚いた表情を見せ「ありえない」と一言。スウェンは20歳で、こんな幼さを残す顔や背丈はしていない。一度深呼吸をし、彼は声のする方へ向かった。




スウェンが来たのは居間のようだ。そこにはテーブルを挟んで座っている男性と女性が居る。


「ん? ああ、起きたのか!」

「あら?」


その二人に近づくスウェン。彼は二人の左手を見る。薬指には同じ指輪がはめられており、この男女は夫妻であるとスウェンは直ぐに解かった。


「君、身体は大丈夫かい?」

「身体の方は問題ない」

「そうか……あんな人気の無い草むらに倒れているから、どこか悪いのか心配したよ。おっと、自己紹介をしなきゃね。僕は『ロイ・グレーデュント』こっちが僕の妻の」

「『ネレイス・グレーデュント』よ。貴方のお名前は?」

「俺は……スウェン、スウェン・カル・バヤン」

「スウェン、良い名前ね」

「……前に同じ事を言われた」

「クスッ、そうなの」

「それで、スウェン。君はどうしてあんなところに倒れていたんだい?」

「その前に聞かせてくれ、ここは……どこなんだ?」


スウェンのその問いに、ロイとネレイスは顔を見合わせて困惑した表情を見せる。


「ここはドイツにあるブレーメンの片田舎だよ」

「ドイ…ツ? そんな馬鹿な、俺は宇宙に……地球から金星の狭間を……あのモビルスーツに乗っていたはずだ……」


その時、ロイからスウェンにとって信じられない言葉が放たれる。


「宇宙? それにモビルスーツとはなんだい?」

「!?モビルスーツを知らないだと!?」

「うん、聞いたことが無いね。君は?」

「いいえ、私も聞いたこと無いわ」


二人の言葉に唖然とする。スウェンは焦りの色を見せながら


「なら、オーブは? ザフトは? コーディネイターは?」

「すまない、どれも聞いたことが無いね……」

「そんな……馬鹿な……俺は一体……」


スウェンは混乱し頭を抑える。ネレイスは心配そうに声をかける。


「大丈夫? スウェン君」

「……問題ない」


持ち前の冷静さを取り戻し、直ぐに表情を戻す。


「どうやら君は疲れているようだね、家はどこだい? 送っていくよ?」

「家など、存在しない。身内も、両親も。言うなれば天涯孤独と言った言葉が合うだろうな」


ロイとネレイスは言葉を失った。目の前に居る少年は、家族が居ないことを平然と、しかも表情一つ変えず言っている。彼は一体どんな人生を歩んできたのか、二人は想像すら出来なかった。ロイとネレイスは顔を見合わせ頷き


「スウェン、君はどこか行くあてはあるのかい?」

「ないな」

「なら、此処で暮らさない?」

「なに?」


スウェンはネレイスの顔を見る。初めて真正面から顔を見たことで、スウェンは髪の色は違えど、ネレイスは誰かに似てると気づく。


「貴方のような子を一人であても無く居させるのは、私達は耐えられないの。貴方が迷惑でなければで良いの。一緒に暮らしましょう?」


この我が子を心から心配するような優しい表情。誰に似てるかと思えば、とスウェンは気づいた。


(似ているな……母さんに)


これは自分に与えられた、新しい人生なのかもしれない。自分が犯してきたことがどれ程なのか解かっている。それでも、このような優しい人達と人生を送れるのなら……、スウェンはそう思い


「俺には行くあても、居場所も無い。俺に居場所をくれるのなら……俺はここに居たい」


ロイとネレイスは笑顔を見せる。


「よかった、その言葉を聞けて。これからよろしく頼むよ、スウェン」

「こちらこそ、迷惑をかけることになる」

「そう堅苦しくなくてもいいのに。そうだ明日の朝、あの娘にもスウェンを紹介しなきゃね」

「娘?」

「ええ、今は寝ているわ。だから明日紹介するわね。べッドはさっき貴方が使っていたので寝ていいから」

「わかった。これから……よろしく頼む」


スウェンは浅く頭を下げる。


こうして…スウェン・カル・バヤンの新しい人生が、幕を開けたのだった。彼の行く先にあるのは一体……
 
 

 
後書き
一週間に1、2回更新して行こうと思います。 
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