FAIRYTAIL-ダークブリングの力を操りし者-
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第六話 紋章と歓迎会
俺とエルザは今フィオーレ王国の東方にある街マグノリアにいる。ここに訪れた理由はもちろんフェアリーテイルのため。
到着するまで、それほど苦労はしなかった。このみすぼらしい服と子供ということでフィオーレ王国付近に用事があるという商人に無料で馬車に乗らせてもらえた。
その道中盗賊が現れエルザと共に撃退したり、夜中に魔獣が馬車目掛けて襲いかかろうとしたところを俺が撃退したためか商人さんが是非お礼をということでマグノリアまで直接連れてきてくれたのだ。
しかもお金も多少ながらもらえた。最初は商人なのだから後で、ぼったくられるのではと疑っていた自分が少し悲しい。いや、警戒心を持つことは大事なことなのだが。
しかしその道中というのが意外と俺は楽しめた。何せ敵が大量に釣れ、戦闘する機会が多かったのだから。
普通ならもっと早く着くはずらしいのだが盗賊やら魔獣やらが異常なほど現れたため結構時間が掛かってしまったらしい。だが俺としてはDBの実験ができたので満足だったが、エリザは若干イラついていた。ちなみにDBの存在はエルザには教えた。反応は薄かったが……つまらん。
そして俺のDBの例外の内のもう一つを試すことができた。
最上級DBデカログス。本来であれば俺はまだ普通のDBしか使えないのだが、このデカログスと牢屋を消滅させたマザーDBアルシェラは特別だ。
このデカログス、実は魔剣である。俺の身の丈を超える程の黒い大剣で鍔のすぐ上にDBが埋め込まれている。この魔剣は俺の首にアクセサリーのように付けているDBの中に入っていたようで出し入れが自由自在。俺としては助かる。こんなデカい剣の常備はさすがに気が滅入るからな。
デカログスは十の姿に変わる魔剣。この通常形態は第一の剣で鋼鉄の剣「アイゼンメテオール」という名前だ。相当な重量があるため普通俺のような子供に振り回せるわけがないのだが、俺自身の身体能力が高く何とか剣を振ることができた。といっても長時間はきついが。
これの他に爆発の剣やら音速の剣など全部で十の魔剣に変身することができる。
この剣を見てかなり羨ましそうに見ていたエルザが印象的だった。エルザは普通の剣で戦っていたからだろう。
そして俺は何故かエルザの剣の指導をしている。そのためよく模擬戦するのだが、異常なほどに強者だった。女でしかも子供ということで少し甘く見てたが、別に俺が指導なくても十分強く、指導なくとも勝手に強くなるんじゃないかと思わせるほどの才覚。
元々俺も剣など振るったことはないのだが、この身体に剣の、特にデカログスの扱い方が染み付いているかのように使うことができた。ただまだ思うように剣を振るうことができない。自分が理想としてる姿には程遠いが、修行していればいつかは……。
そんなこんなでマグノリアに到着し、街の人からフェアリーテイルの場所を聞きつけ今向かっている。この街は活気に満ち溢れ、街行く人達は、皆笑顔が絶えず良い街だということが容易にわかる。
ギルドに入ったら服や日用品、住まい探しなどしなければと思いつつ、さらに周囲をよく見渡す。魔法の道具か何かであろう水晶や実演販売をしている人が光るペンを空中で描き文字を書いている。やはり、戦闘以外でもいろいろと魔法が日常で使われているようだ。その時、エルザが俺を見てクスりと笑う。
「いや、すまない。ただルシアが年相応の少年のような顔で辺りを見ていたからな。珍しいと思って」
苦虫を噛み潰したような顔とはまさに今の俺のような表情なのだろう。恥ずかしい。
エルザはそんな俺の苦々しい表情にもまた笑みを浮かべ、そして足を止めた。俺も下を向いていた顔を上げ正面を見ると。
「これが、フェアリーテイル」
外観は思っていた以上に綺麗で見上げるほどの高い建物。入り口には大きな看板に【FAIRY TAIL】と書かれていた。入り口の扉を開け中に入ると、まぁいかにもギルドって感じの騒々しさだった。長テーブルがいくつもあり、そこでは皆が楽しそうに食事をしている……あのビール美味そうだな。エルザも物珍しそうに周囲を見渡し、考え深そうにしていた。
ギルドに入ってきた子供二人を興味深そうに見ているフェアリーテイルのメンバーであろう人達を尻目に真っ先に目をつけた人物の元へと向かう。見た瞬間にわかった。この世界にきて初めて自分よりも格上で圧倒的な魔力と雰囲気をもつ人物。カウンターであろう場所のテーブルの上に座っている見た目は小さいけれど大きく感じる老人。おそらくここのギルドの頂点に立つ人だろう。
「はじめまして。ルシア・レアグローブだ」
「コラ!敬語を使わないか! 失礼しました。はじめまして、エルザ・スカーレットです」
年上の相手に敬語なしは失礼なことだが、自身のポリシーの一つなので目をつぶってもらうとしよう。
「ほっほっほ、はじめまして。このギルドのマスターをしているマカロフじゃ。このギルドに何か用かの?」
マカロフは優しい笑みを浮かべながら、当然の疑問を俺たちにぶつけてきた。ここからは俺がでしゃばる事ではない。恐らくロブおじいちゃんという人物のこともマカロフならば知っているだろう。
俺はエルザに説明をまかせ、カウンターに座った。目の前に居る店員にメニューに載っている料理を頼む。もちろん上半身半裸で子供の俺にお金の心配をしてくるであろうことを見越して、商人から貰った報酬で先払いした。少し驚いた顔をして、ちょっと待っててねと言い残し料理を作りにいった。
この世界の通貨単位はJといい、報酬だけでなく道中に襲ってきた盗賊からもジュエルはギっているのでかなりお金はあるほうだ。といっても、日用品や防具などを買えば一気に残り少なくなると思うが。そういえば住居も探さなければならない。なるべく安くていい部屋があればいいのだが。
お待ちどうさまという声と共にカタッと音がし、目の前を見ると料理が並んでいた。美味しそうだ。いただきますと両手を合わせ料理を食べる。
やはり、馬車の中で食べた保存食よりこちらのそうが格段に美味い……まぁ当たり前のことだが。
だされたコップに目をむけると自身の顔が映っていた。前世の子供のときの自分とあまり変わりのない顔、ただ違うのは男にしては少し長めの金色の髪。そういえばこの世界に来てから初めてだな、自分の顔を見たのは。見れば見るほどRAVEに登場するルシア・レアグローブに似ている、いや似ているなんてものではない。同じなんだ。
「ルシア。こっちにきてくれ、フェアリーテイルの紋章を入れてもらうぞ」
エルザから声がかかる。美味しい食事中だったため、重い腰をあげるのに苦労したが大事なことでらしいのでエルザとマカロフのところへ行く。まぁそんなに距離は離れていないのだが。
紋章とはそのギルドに所属している証だという。刺青とは違い魔法でつけるため、消えないスタンプのようなものだと言われる。
「紋章をつける場所は身体のどこか一部分にいれてもらうことになっとるの。それに加えて衣服にも付けとる奴もいる。わしのTシャツみたいにの。依頼を受けるとき依頼人にその紋章を見せねばならん」
マカロフは自慢げに自分のTシャツの紋章を見せつけてくる。だとすると、すぐにわかる場所がいいだろう。それに衣服につけるというのも捨てがたい。悩んでいるとエルザは迷わず左腕に青い紋章をつけていた。
「よし、次はルシアの番だぞ。どこに入れるんだ? 私は左右どちらかの鎖骨のすぐ下が良いと思うのだが」
だったらエルザもそこに入れろよとは思ったが口には出さず、そうかの一言で済ませた。無論そこに入れるつもりはない。恐らく俺の態度で入れる気はないことに気がついたエルザは若干残念そうにしていた……鎖骨フェチなのか?
「マカロフ、俺は衣服にも入れたいと思うのだが、今はこんな状態だ。身体と衣服共に後日でいいか? あとで服をオーダーメイドで作ってもらう予定だ」
「ふむ、まぁ良いじゃろう。しかし、その間は依頼を受けることはできんぞ?」
「あぁそれでかまわない」
やはり紋章の有無で依頼を受けることができるかどうか決まるわけだ。だとしたら、好都合だ。俺が今すぐ依頼ができるようになるのは少し困る。このままではエルザが俺に依存してしまう可能性がでてくる(俺の勘違いだったらそれでいい。恥ずかしいけど)
そこで俺が共に依頼を受けられない状態にすればいい。それだけではエルザも依頼を受けなくなる可能性が出てくるがそれはマカロフと相談して無理やりにでも違う誰かと依頼を受けさせれば良い。少し荒療治だが出だしが肝心だからな。
だからエルザが今俺に睨みを利かせ無言を圧力をかけていてもスルーするべきなんだ。うん。俺も早くこのギルドに慣れる為にエルザ以外の誰かと依頼を受けるつもりだ。
……俺の顔に怖がらず一緒に行ってくれる人いるかな。ちなみに服のデザインはだいたい決まっている。もうここまできたら、とことこん原作のルシアと同じにするつもりだ。しかし、あのデザインは暑そうだな。
「さて、ではついでにお主の眼も治しに行くとするかの。エルザちゃん」
「えっ!? しかし、この目はもう……」
「まぁええから、騙されたと思って着いてきなさい。ルシアくん、君はここに居なさい」
「あ? …………あぁ、食事中だしな。そうするぜ」
「マスター……お気遣い、感謝します」
エルザは俺に隠しているようだが、ここに来るまでの間に気づいてしまった。エルザの右眼はもう……。しかし、このギルドに入ったのには正解だった。マスターマカロフも良い人だし、この人が上に立つギルドだ。信頼できるだろう。エルザをちゃんづけしてたしな。年齢差的に自然な呼び方だが、エルザはどこか大人っぽいからな。中々できないぞ。
マカロフとエルザがギルドを出て行き、俺が食事を食べ終えたときに隣の席にドンッと座る上半身裸で黒髪の男が座ってきた。正確には座ったと同時に脱いだのだが。
「よう、新入りだな。俺はグレイ・フルバスターだ。よろしくな」
「ルシア・レアグローブだ……何故半裸なんだ?」
「なっ! いつの間に!?」
「知らねぇよ……もしかして同じ半裸だから近づいてきたのか? だとしたら、誤解させて悪かったな。俺は今着る服がないだけで、仕方なくこの格好なんだ。悪かったな」
「悪かったなを二回も同じ文面に入れるんじゃねぇ! 俺も好きで半裸になってるわけじゃねぇよ!」
「恐ろしいほどの説得力のなさだ。ところで、グレイは俺よりも少し下ぐらいの年齢だろ? このギルド内にもそれぐらいの子供が結構いるようだが」
「あぁ、じーさんが身寄りのない子供をギルドによく入れるんだ。ルシアとあの女もそうだろ?」
「まぁな」
このギルドに入っている奴らは皆過去に何かしら背負って生きているということか。つくづくこのギルドに入ってよかったと思う。そういう背負っているものがある人達はむやみに過去を詮索したりしないからな。
「なぁ、ルシアって強そうだよな? すげぇ筋肉だし。これから勝負しないか?」
「それがここのギルド流の歓迎会ってか? いいぜ、手加減してやるから全力でかかってこいよ」
「て、手加減なんていらねぇよっ! 絶ぇぇっ対、後悔させてやる!」
グレイは怒りで震える拳を俺に突きつけ、ギルドの外で待ってるかな!と言い残し全力で駆けて行った。中々イジリがいのあるやつだったな。可愛いもんだ。俺はゆっくりと席を立ち上がりそのままグレイの走っていった方向へと歩き出した。
グレイがどんな戦い方をするか楽しみだと思いつつも、すぐにその思考を切り替え先程からこちらを窺っている俺より少し年上であろう少年について考えていた。その人物は金髪で少年にしては体格が良く、耳にヘッドホンのような尖ったモノを着けている。
だが、もっとも注目すべき点は俺に向けている好戦的な視線だ。佇まいからでもわかるほどの強者。今の俺でも戦えば、どうだろう。苦戦することは必至。俺はその相手にもわかるように口元を歪め、好戦的な視線を送り返すと相手は少し驚いた後、すぐに俺と同じように顔を歪めながら笑みを浮かべていた。
もしかしたら、この歓迎会すぐには終わらないかもしれない。
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