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スーパーロボット大戦パーフェクト 第二次篇

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第十三話 ドクーガ現わる

                  第十三話 ドクーガ現わる
 ラングラン軍とシュテドニアス軍の戦いはなおも続いていた。徹底するシュテドニアス軍を追い、ラングラン軍は進撃を続けていた。形勢は最早誰の目にも明らかであった。
 それを見たゾラウシャルドはすぐに動いた。指揮官であるノボトニー元帥を即座に解任、そして更迭したのである。その時に彼はこう言った。
「敗戦の将が責任を取るのは当然だ」
 だが軍の多くの者はそれに納得はしていなかった。何故ならノボトニーは徹底する軍の指揮をとっており、彼の手腕により多くの将兵が何とかシュテドニアスに逃れることができていたからである。そして彼等の疑念をさらに深いものとしたのは後任の指揮官がゾラウシャルドの息のかかった人物であったことであった。
「大統領は責任を元帥に押し付けただけでは」
「権力闘争の結果か」
 軍の内部や議会ではそう囁く者が多かった。しかしそれはゾラウシャルドが大統領の強権で抑え付けてしまっており、表立った発言はできなかった。彼はその間にラセツ達特殊部隊にラングラン軍への攻撃を命じていた。表向きは撤退する主力部隊への援護であった。
 しかしそれを信じる者は少なかった。ラセツもまたゾラウシャルドと関係が深くこの作戦がゾラウシャルド本人の考えたものであるだけに余計であった。シュテドニアス軍も議会もゾラウシャルドとラセツに不信感を募らせていたがそれは言えずにいたのであった。
 そうしている間にも戦局はシュテドニアス軍にとって劣勢となっていた。ラングラン軍はそれに対して勢いを増すばかりであり戦いはシュテドニアスにとって面白くない状況となりつつあった。
 それを最よく感じているのは前線にいる者達であった。とりわけ指揮官達の悩みは深刻であった。
「今は中でゴタゴタ言うてる場合やないんや」
 ロドニーは移動要塞の艦橋において周りの参謀達に対してそう言っていた。
「それが上にはわからんのかいな」
「仕方ありませんよ、それは」
 参謀の一人が彼を慰めるようにしてそう言った。
「実際に戦場にいるわけではないんですから」
「それや」
 ロドニーは彼の言葉に突っ込みを入れた。
「そこが問題なんや」
「はあ」
「国家元首が直接戦争に出るわけにはいかんやろ。ましてや文民が」
「はい」
 その通りであった。国家元首が陣頭指揮を執る戦争は上の世界でも精々十九世紀の話であった。ナポレオンの頃までであろう。ラングランではフェイルが陣頭指揮を執ることが多いがこれは特殊な例だ。ましてやシュテドニアスでは大統領は軍の最高指揮官であるが文民である。文民が戦場に出るわけにはいかないのだ。ましてや何かあれば愚行とそしられても文句は言えないのである。
「けれどな、現場に迷惑をかけたらあかんのや。それはわかるやろ」
「はい」
 問われた参謀の一人はそれに頷いた。
「上にはそれがわかっとらんのや。現場の苦労がな」
「政治とはそういうものですよ」
「そうやな。それはわかる」
 ロドニーは観念したようにそう答えた。
「所詮戦場でのことなんか政治の一つのことでしかあらへん」
「はい」
「わい等はその中で動くだけや。命令に従ってな」
「極論すればそうなりますね」
「とりあえずは生き残ることを考えんとな。それでも。折角ここまで来たんやし」
「はい」
「で、新しく来た司令官はどうしてはるんや」
「援軍と共にこちらに向かっておられます」
「援軍」
「ええ。移動要塞を何個も連れて。かなりの数ですよ」
「最初からそれだけ送ってくれたらな。ノボトニー閣下も楽やったやろに」
「閣下、それは」
 別の参謀が彼を嗜めた。
「わかっとるで。けれどな」
 ロドニーも自分が何を言っているかはよくわかっていた。軍人、それも将軍の位にある者がこれ以上政府批判をすることはかなり危険なことであることも。
「ホンマ、何とかならへんのかいな」
「ですね」
 彼等はそんな話をしながら退却を続けていた。何とかシュテドニアス領に入ろうとしていた。
 そんな彼等をラングラン軍は激しく追撃していた。その手は緩められることはなく今にもシュテドニアス領に入らんばかりの勢いであった。
 その先頭にいるのが魔装機及びオーラバトラー達であった。彼等は攻撃の手を緩めずシュテドニアス軍を次々に打ち破っていた。
「明日またシュテドニアス軍を攻撃する」
 カークスは夜になり停泊したゴラオンの作戦会議室において集まった魔装機のパイロットや聖戦士達に対してこう言った。
「了解」
 一同それに頷く。それからショウが言った。
「明日はドレイク達は出て来ますか」
「それはありません」
 シーラがそれに答えた。
「ドレイク達はどうやら今は勢力の回復に務めているようです。やはり先の敗戦がこたえたのでしょう」
「そうですか」
「だが油断はできない。シュテドニアスはここにきて援軍を送ってきた」
「援軍を」
「そうだ。彼等は移動要塞を複数送ってきている。そして魔装機もかなりの数が増援に向かっているという」
「ここにきてですか」
「どうやら彼等も本気だということか」
「いや、それはどうやら違うらしい」
 カークスはヤンロンに対してそう答えた。
「といいますと」
「シュテドニアスの指揮官が替わった。ノボトニー元帥は更迭されたらしい」
「えっ、それは本当ですか!?」
 ニーはそれを聞いて驚きの声をあげた。
「こんな時に。シュテドニアスで何かあったのですか」
「おそらく。あの国は色々あってな」
「あそこの大統領は敵が多いからな」
 マサキがここでそう語った。
「タカ派で何かとやり方が強引だからな。議会にも軍にも敵が多いからな、あのおっさんは」
「けれどマサキさん」
 ザッシュが彼に問うた。
「あの大統領は確か今のシュテドニアスの与党のトップでもあるのでしょう。それなのに」
「ザシュフォード殿」
 そんな彼にアハマドが言う。
「政治の世界はそう単純ではないのだ。敵は同志の中にもいる場合があるのだ」
「どういうことですか」
「同床異夢ということだ」
 ヤンロンが故事成語を持ち出して説明する。
「同じところにいても求めるものが違うということだ。これならわかるだろう」
「あ、成程」
「あの大統領は権力志向も強くてな。それで与党の中でも敵が多いんだ」
「ドレイク達と一緒だな、じゃあ」 
 ショウがそれを聞いて納得したように頷いた。
「どの世界でも人間はあまり変わらないのか」
「まあそういうもんさ」
 トッドがショウに対してそう答えた。
「御前さんの国でも俺の国でもな。所詮人間なんてそんなもんさ」
「何かトッドの言葉っていつもシニカルねえ」
「こうなりたくてなったんじゃねえけどな」
 チャムにはそう返した。やはりいささかシニカルであった。
「まあ俺のことはいいさ。そのシュテドニアスのことだ」
「うむ」
 カークスはそれに応える。
「これに付け込むことはできねえかな」
「そうだな」
 カークスはトッドの言葉を聞いてさらに考え込んだ。
「今のところそれが我々にとっていい状況とはなってはいない」
 彼は増援のことを踏まえてそう答えた。
「だが隙は何処かに出来る筈だ」
「隙が」
「少なくとも前の司令官であるノボトニー元帥は優れた指揮官だった。それに兵も上手く統率していた」
「はい」
「今度は司令官はどうかな。そこに隙が出来るかも知れない」
「つまりは将としてどうかってことだね」
「そういうことになる」
 リューネにそう応えた。
「明日の戦いではそれを見極めるものとなるだろう」
「それでは明日は前哨戦のようなものでしょうか」
「そうですな」
 シーラの言葉に頷く。
「各員はそれに注意を払うように。そして隙があれば」
「そこに付け入る」
「そうだ。それでいく。よいな」
「了解」
 皆それに頷いた。そして彼等は明日に備えそれぞれの部屋に戻り休息をとるのであった。その中には当然タダナオもいた。
「さて、今度の敵将はどんな奴かな」
「何か期待しているようだな」
 彼のそんな様子を見てファングが声をかけてきた。
「まあね。楽な相手だったらいいな、と思ってな」
「楽な相手か」
「要するに大した奴じゃなければいいいってな。それはあんただって同じだろ」
「戦争に関してはそうだ」
 ファングはそれに落ち着いた声で答えた。
「だが闘いとなると話は別だ」
「それはどういう意味だい」
「戦士と戦士の戦いならば強い相手と戦いたいのだ」
 彼はそう言った。
「それは御前も同じだと思うが」
「そう言われてみれば」
 タダナオは彼の言葉に納得した。
「オザワとは少なくともそうだな」
「そういうことだ。俺の言ったことがわかってくれたようだな」
「まあな。しかしそんな奴はそうそういないぜ」
「わかっている」
「俺みたいなのは稀だろう。もっともそうなるまでは本当に色々あったが」
「どんなふうにだ」
「子供の頃からな。あいつとはその頃からの付き合いだった」
「そうだったのか」
「その時から喧嘩ばかりしていたよ。そして今も」
「何だ、喧嘩友達か」
「まあな」
 彼はそれを否定しなかった。
「だから余計そうした話は好きだな」
「そういうものか」
 ファングはそれを聞いて少し納得したようであった。
「ではこれからもそれを続けるのだな」
「まあな」
 タダナオはそれに頷いた。
「あいつが出て来たらな」
 ニヤリと笑った。そして彼は自室には入り休息をとった。
 翌日戦闘がはじまった。シュテドニアス軍は撤退を優先させ戦おうとはしない。だがラングラン軍はそのシュテドニアス軍に追いすがりさらに攻撃を仕掛けていた。
「ホンマ手強い奴等やで」
 ロドニーは最後尾で撤退する軍の指揮を執りながらこうぼやいた。
「あの地上から来た兄ちゃんはどうしとるんや?」
「オザワ少尉ですか」
「そや」
 彼は問うてきた参謀の一人にそう答えた。
「姿が見えへんのやけれどな」
「少尉ならもう出撃しておりますよ」
「ん、もうか?」
「はい。何でもあいつがいるとか言って。どうやらラングラン軍に知り合いがいるようですね」
「知り合いか」
「昔からの喧嘩友達だと言っています。それえこの前の借りを返すのだとか」
「戦争でかいな」
「ええ。本人はえらくやる気ですよ。今度こそやってやるとか意気込んで」
「まあ頑張れと伝えてくれや」
「はい」 
 ロドニーはそれを聞いて彼にとりあえず激励の言葉を送りはした。だが今一つ首を傾げていた。
「殺してもうたらどうするつもりやろな」
 しかし当のオザワのタダナオもそんなことは全く考えてはいなかった。彼等は今日も互いに一騎打ちを行っていたのであった。
「今日こそはミレーヌちゃんがいいってことを認めさせてやるぜ!」
「あん!?何言ってやがる」
 タダナオはオザワのジンオウを前にして不敵な声を出した。
「ミンメイさんの方がずっといいに決まってるだろうが」
「だから御前は年増好みだって言われるんだよ」
 オザワはそれに対してこう返した。
「やっぱり若い娘じゃなくっちゃな」
「御前のそれはロリコンっていうんだよ!」
「何、ロリコン!?」 
 オザワはそういわれて顔を赤くさせた。
「僕の何処がロリコンなんだ!」
「そのまんまじゃねえか!」
 タダナオが突っ込みを入れる。
「二十歳の兄ちゃんが十四の女の子に熱を入れて変だとは思わねえのかよ」
「アイドルだからいいだろ!それにミレーヌちゃんは唯のアイドルじゃない!」
「じゃあ何なんだよ」
「れっきとしたロックシンガーだ、それがわからないのか」
「残念だがファイアーボンバーは好きじゃないんでね」
 ファイアーボンバーとはそのミレーヌが所属するバンドのグループ名である。彼女を含めて四人のグループ編成である。今人気急上昇中のグループである。
「俺はもう少し穏やかなのが好きなんだ」
「ヘッ、よく言うぜ」
 オザワはそこで軽く口を歪めて笑った。
「ミンメイさんだって激しい曲はあるだろうが」
「うっ」
 それを言われて言葉が詰まった。
「結局御前は年増が好きなだけなんだよ」
「ミンメイさんは年増じゃねえ!」
「ミレーヌちゃんから見れば充分に年増だ!」
「手前もう許さねえ!」
「それはこっちの台詞だ!」
 こうして彼等は激しい戦いを行っていた。戦局はその間に推移しシュテドニアス軍は徐々に戦線から退いていっていた。だがその損害は決して無視できないものであった。
「こんな時にそのオーラシップとやらは動かへんのかい」
「三隻共損傷が激しいようです」
「まあ理由は幾らでも言えるわな」
 ロドニーはそれを聞きながらそう呟いた。
「あのドレイクとかいうおっさんは信用でけへんけれどな」
「閣下もそう思われますか」
 何とこの参謀も同じ考えであった。彼もドレイク達が信用し難い人物達であるということを見抜いていたのだ。
「特にあのビショットとかいう王様の横におる女やな」
「はい」
「あいつは信用でけへんで。よからぬもんを感じるわ」
「そうですな。そしてあのショットという男も腹に一物あります」
「どうせここに送られたんでラ=ギアスで何かしようっちゅう腹づもりやな。うちの軍を利用して」
「はい」
「連中には気をつけとけや。いきなり背中からブッスリいかれるで」
「わかりました」
 彼等はそんな話をしながら作戦の指揮にあたっていた。ロドニー達も戦線から離脱しはじめていた。それを受けてオザワもタダナオとの戦いを止めて撤退していた。
「また今度だ!」
「返り討ちにしてやるぜ!」
 こうして彼等は戦いを止めた。そしてオザワのジンオウはシュテドニアス軍に入り姿を消した。
「さて、と。今回はこれ位でいいな」
「ああ」
 マサキ達も戦果に満足していた。追撃するのを止めようとしたその時であった。
「!!」
 エレが突如として何かを感じた。ハッとした顔になった。
「エレ様!」
「どう為されたのですか!?」
 エレブ達が彼女に駆け寄る。だがエレはそんな彼等を手で制した。
「私なら大丈夫です」
「しかし」
「いいですから。それより新しい敵が迫ってきております」
「敵!?」
「ドレイク達か!?」
「いえ、違います」
 エレはドレイク達かと思う彼等に静かにそう語った。
「オーラが違います。これは・・・・・・」
「これは」
「地上人のものです。それもかなり強い」
 そう言うと同時に後方からカークスの通信が入って来た。
「精霊レーダーに反応!巨大な航空物体が三隻!」
「何っ!」
 それを聞いて全軍一斉に警戒態勢に入った。
「右から来るぞ!総員警戒態勢!」
 カークスの指示が下る。それを受けて全軍既に戦線を離脱したシュテドニアス軍にかわってそちらに顔を向けた。そこには三隻の巨大な戦艦があった。
 オーラシップとはまた違う意味で変わった形の艦ばかりであった。黄色く、先端にラムを取り付けたものと青く胴体が二つあるように見える艦、そして白い白鳥に似た艦の三隻であった。彼等はゆっくりとこちらに向かってきていた。
「また変なところに来てしまったな」
 白い艦の艦橋にいる金髪の男がそう言った。マントを羽織り、手には深紅の薔薇を持っている。顔立ちは中世的な整ったものであった。
「だが空に舞うあのマシンの雄姿、まさに」
 そこで目を閉じ、薔薇を上に掲げる。そして言葉を続けた。
「美しい・・・・・・」
「ふん、またそれか」
「いい加減他の言葉を覚えられんのか、お主は」
 だがここですぐに突っ込みが入った。金髪の男はその言葉を聞いて少し憮然とした。
「二人共私の美学に介入はしないでもらおうか」
「何が美学だ」
 青い艦の艦橋にいる男が言った。右に眼帯をし、肩には烏を止まらせている。それだけでかなり怪しい雰囲気を漂わせていた。
「わしにも美学はあるが貴様とは違うからな」
「おお、その通りじゃ」
 黄色いラムを付けた艦にいる青っぽい肌の大男がそれに同調した。
「わしにとってはかみさんが一番じゃがな」
「フン、ケルナグールは相変わらずよのう」
「カットナル、そういうお主はどうなのじゃ」
 青い肌の男と隻眼の男は互いに言い合った。それを見て金髪の男はクールな顔でその二人に対して言った。
「二人共、話の途中だが」
「むっ」
「何かあったのか、ブンドル」
「つい今しがたゴッドネロス様からご指示があった」
「何と」
「何かあったのか」
「目の前の敵を倒せとのことだ」
 ブンドルは二人に対してそう言った。
「ほう奴等とか」
「そうだ。そしてその技術を手に入れととのことだ。いけるな」
「無論だ」
「戦いとあっては断る理由もないわ」
 二人は既に戦う気でいた。すぐに艦載機を出す。
「ブンドル、そっちもインパクターを出せ」
「うむ」
 三隻の戦艦から小型の戦闘機が出される。そして戦闘態勢に入った。
「では行くがいい、ドクーガの戦士達よ」
 まずはブンドルが口を開いた。
「おい、ブンドル」
「わしが言おうと思っていたのに」
「悪いがこうしたことは先に言った者勝ちなのでな。言わせてもらった」
 ブンドルは二人の抗議を悠然と聞き流した。そして言葉を続ける。
「戦いに向かうその姿・・・・・・美しい」
 そしてまた美しいという言葉を口にした。それが合図となりドクーガはラングラン軍に攻撃を仕掛けてきた。すぐに全軍ラングラン軍に殺到する。
「よし、行け!」
「奴等を皆殺しにするのだ!」
 カットナルとケルナグールも指示を出す。それをラングラン軍は隊を組んで待ち構えていた。
「とりあえず何処のどいつかわかんないけれど敵なのは間違いないみたいね」
 リューネがマサキの横に来てこう言った。
「そうだな。こっちに向かってくるところを見ると」
「降りかかる火の粉は払わなくてはならない」
「出来ることなら避けたいけれど」
「ここはやるっきゃないみたいね」
 魔装機神のそれぞれのパイロット達も隊を組んでいた。そして構えをとる。
「行くぜ、そっちがやる気ならこっちもやってやるだけだぜ!」
「おう!」
 マサキの言葉に応え全軍攻撃態勢に入った。そして敵に対して攻撃を開始した。
 まずは四機の魔装機神とヴァルシオーネがいつも通り突っ込む。そして散開し攻撃を開始した。
「いっけえええーーーーーーーーーっ!サイフラァーーーッシュ!」
「サイコブラスターーーーーーーーーッ!」
 サイバスターとヴァルシオーネから光が放たれる。それがまず敵を討つ。
「メギドフレイムッ!」
「ケルヴィンブリザード!」
「レゾナンスクエイクッ!」
 他の三機も攻撃を仕掛ける。それで敵を討つ。これにより二十機近くが撃墜される。それにより出来た穴に他の魔装機やオーラバトラーが突っ込む。それで一気に勝負をかけてきた。
 戦局はラングラン軍に優勢となっていた。三隻の戦艦に乗る男達はそれを見て互いにそれぞれの反応を見せていた。
「ぐうう、トランキライザーは何処だ!」
「はい、こちらに」
 カットナルは部下から薬を受け取っていた。そしてそれを鷲掴みにし一気に口に入れて噛み砕く。
「ふうう」
 そしてそれを飲み込んで一息ついた。安心した顔になった。
「何だあいつ等は、出鱈目に強いではないか!」
 それから叫ぶ。ブンドルはそれを聞いて呆れた顔になっていた。
「相変わらずだな、カットナル」
「フン、おかげさまでな」
「そう言うと思っていた。しかし」
「言いたいことはわかっておるぞ」
「そうか。だが言わせてもらおう」
 だからといって話を終わらせるようなブンドルでもなかった。半ば強引に話を続ける。
「ケルナグールも相変わらずだな」
「そうだな」
 見ればケルナグールはロボットを殴ってうさ晴らしをしていた。彼はもう怒りを身体で現わしていた。
「何だあの連中は!こうなったらわしが行くぞ!」
「まあ待て」
「落ち着くのだ」
 前に出ようとするケルナグール艦を二人が止めた。
「今は出るべきではないぞ」
「戦いははじまったばかりだ」
「しかしだな」
「ケルナグール、宴はこれからだ」
 ブンドルが言った。
「まだ彼等も出ていないではないか。今からそんなに騒いでどうする」
「おい、待てブンドル」
 それを聞いたカットナルが声をかけた。
「どうした」
「そんなことを言っていると前に何か出て来たぞ」
「む!?」
「あの光は」
 ケルナグールもそれを聞いて顔を前に向けた。するとそこには緑の光があった。
「噂をすれば何とやらだな」
「全くだ」
「何かいつもこうした出方だのう、あいつ等は」
 三人はそんな話をしながらその光を見守っていた。光はラングラン軍と三人の手勢との間で輝いていた。
「あの光は」
「まさか」
 マサキ達はその光を見て声をあげた。そしてこの前見た光を思い出していた。その時中から現われたのは。
「ここにいたか、ドクーガ!」
「やっぱりな」
 皆それを聞いて呆れが混じった声でぼやいた。
「あれ、何かリアクションが変よ、真吾」
「折角ヒーローが出て来たってのに寂しいね、こりゃ」
「というかあんた達の行動パターンって何かありたきりなのよ」
「そうそう、もうちょっと奇をてらわないとあきられちゃうよ」
 リューネとミオが彼等に突っ込みを入れる。だがそれを受けてもへこたれる三人ではなかった。
「やれやれだな。有り難味がないというか」
「正義の味方への出迎えも最近あれだわね」
「まあ最近その正義の味方もインフレしてるわけだが」
「インフレじゃないんじゃないのか、キリー」
「こういう場合デフレじゃないの?」
「あれ、そうだったかな。俺は経済にはあまり詳しくはないんだけれどね」
「この場合インフレでいいぞ、キリー」
「い、そうか真吾」
「じゃああたしが間違えてたわけね、あ~~あ」
「・・・・・・おい」
 自分達で話を進める三人にマサキが口を入れた。
「ん、何だ」
「あの時の少年じゃない」
「また会えて光栄だな」
「それはいいとしてあんた達何でここにいきなり現われたんだ?バゴニアに行ったんじゃなかったのかよ」
「行ったことは行ったさ」
「けれど今はここにいるの」
「連中を追いかけてね」
「連中?まさかあれか」
「そういうこと」
 三人はマサキがサイバスターで指差した方を確認して頷いた。見ればそこにはあの三隻の戦艦がいた。
「あれがまさかドクーガっていう連中か?」
「ああ。世界経済を影に牛耳る悪の組織だ」
「またわかり易い組織ね」
「今時珍しいというか」
 シモーヌとベッキーがそれを聞きながら突っ込みを入れる。
「それでそのドクーガの野望を阻止するのが俺達の役目だ」
「これもわかり易いかしら」
「というかありたきり」
 ミオも言う。
「もっと凝った設定でないと最近受けないよ」
「ううむ、困ったなあ」
「今更そんなの変えられないしね」
「ここはキャラクターで目立つしかないな」
「・・・・・・まあキャラは立ってるな」
 ショウがそれを聞いて呟く。
「嫌になる程な。そこにいる旦那は俺と同じアメリカ人みてえだが」
「ん、アメリカ人がいるのか」
 キリーがそれに反応した。そしてトッドに顔を向けた。
「ん、ああ」
「何だ、オーラバトラーにいたのか」
「トッド=ギネスっていうんだ。宜しくな」
「おう、俺はキリーだ。前話したよな」
「そういえばそうだったかな」
「覚えていてくれよ、俺はこれから有名になる男なんだからな。もっともその前からあまりよくないことで知られていたけれ
どな」
「ブロンクスの狼ってな」
「あの頃のキリーは相当だったらしいわね」
「止めてくれよ、昔の話は」
 真吾とレミーに言われて少し照れたふりをする。
「あの頃の俺じゃないからな」
「へえ、あんたニューヨーク出身か」
「まあな。そういうあんたはどうなんだ」
「俺はボストン出身だ」
「ほお、いいところにいるな」
「といっても落ち零れだがな」
「いやいや、謙遜はいいぜ」
「へえ、トッド、あんたボストン出身だったんだ」
 ベッキーがそれを聞いて言った。
「そういやあんたはイロコイだったよな」
「まあね」
「あたしも一応アメリカ人だよ。移民だけれどね」
「リューネもかい」
「ポーランドからね」
 実はポーランドからアメリカへの移民は多いのである。アメリカは元々イギリスからの移民によって建国された国であるが人種の坩堝という言葉通り多くの国からの移民とその子孫から構成されている。原住民であるネィティブ=アメリカンやイヌイット以外は他の国から来た者達である。その中でロシアやドイツ、オーストリアからの弾圧を逃れてアメリカに移民してきたポーランド系の者もいるのである。その数はかなりのものである。
「ポーランド系か。ちょっと見えねえな」
「あれ、そうかなあ」
「どっちかっていうとカルフォルニア辺りのヤンキーみてえだ」
「おう、そういやそうだな」
 キリーとトッドは意気投合したかのように声を合わせてそう言い合った。
「好き勝手言ってくれるね、あんた達」
「ん、気を悪くしたか」
「だったらすまねえ」
「まあ別にいいけれどね」
 しかしそのようなことを特に気にするリューネでもなくそれはすぐに済ませた。
「それはそうとして早いとこそのドクーガって連中何とかしないといけないんじゃないの」 
 リューネはドクーガに顔を向けてそう言った。
「おっと、そうだった」
「何かいつものことだから忘れちゃってたわ」
「忘れたいってのもあるけれどな」
 ゴーショーグンはそう言いながらドクーガに顔を向けた。
「ふふふ、マドモアゼル=レミー」
 ブンドルはゴーショーグンを見ながら悠然と語りかけてきた。
「やはり私達は赤い糸で結ばれているのだよ」
「また勝手なこと言って」
 しかしレミーはそれを軽くあしらう。
「いい加減諦めなさいよ」
「ふ、相変わらず気が強い」
 だがブンドルも負けてはいない。
「しかしその気の強さもまた・・・・・・」
 そしてまたもや薔薇を高く掲げて言った。
「美しい」
「何かワンパターンね」
「そういえばそうだな」
「たまには別の芸も見せないと飽きられるぜ」
「ふ、何とでも言うがいい」
 それで怯むブンドルではなかった。
「ゴーショーグンよ、今日こそ決着を着けようぞ」
「おう、わしもだ」
「わしも入れろ。我等は三人揃ってなんぼではなかったか」
「そうだったか、ブンドル」
「どうも世間ではそう思われているらしいがな」
 三人は口々にそう言いながら話を続けている。
「だがそれはかえって好都合なのだぞ、二人共」
「それはどういうことだ、ケルナグール」
「三人揃えば何とやらというであろう。では行くぞ」
「わかったようなわからんようなだが」
「しかしそれでもゴーショーグンとの決着を着けるのには都合がいいな」
「よし。それではわしも行くか」
「私もそうさせてもらうか。さて」
 ブンドルはここで後ろに控える部下達に顔を向けて言った。そして三隻の戦艦は前に出て来た。
「来たな」
「ようやくおでましね」
「何だかんだ言っても来てくれるとはサービス精神旺盛ですな」
 ゴーショーグンの三人は相変わらずの態度であった。しかし魔装機やオーラバトラーのパイロット達は違っていた。すぐに戦闘態勢に入っていた。
「来たぞ!」
「散開しろ!」
 それぞれの小隊ごとに散る。そして互いに連携をとりつつ周りの敵を倒し、戦艦に近付いていく。ブンドル達はそれを見据えつつ部下達に指示を下す。まずはブンドルからであった。
「攻撃の前にだ」
「はい」
「曲を。そうだな」
 ブンドルは話をしながら考え込んだ。だがすぐに決断しまた言った。
「青く美しきドナウがいいな」
「わかりました」
 部下達はそれを受けてCDを取り出す。そしてそれでプレーヤーにかけた。そしてスイッチを入れた。
 優美な、だが戦場には相応しくない曲が戦場を支配した。皆それを聞いて思わず拍子抜けした。
「また訳わかんねえ奴等だな」
「まさかあの曲を聴きながら戦うつもりなのかしら」
「どうもそうらしいな」
 皆戸惑いながらも彼等を取り囲みはじめていた。ブンドルはそれを見ながら余裕の笑みであった。
「ふふふ、どうやら私の崇高な美の哲学に感動しているようだな」
「いや、違うぞブンドル」
「あれは呆れているのだ」
 カットナルとケルナグールは冷静に周りを見てそう答えた。
「そんな筈はない」
「いや、それがあるのだ」
「自分の趣味が全ての者に受け入れられるとは思わない方がよいぞ」
「それはわかっているつもりだが」
 それでもブンドルは負けてはいなかった。
「私の崇高な趣味は凡人にはわからないのだからな」
「・・・・・・好きに言っておれ」
「それより戦うぞ」
「うむ」
 こうして三人も戦いに入った。周りから迫る魔装機やオーラバトラーに対して攻撃を仕掛ける。しかしそれはことごとくかわされてしまう。
「ヘッ、当たるかよ!」
 マサキが得意な顔でそう言う。そしてファミリアを出した。
「これはおつりだぜ、とっときな!」
「おいら達はお金かよ!」
「心外だニャ!」
 シロとクロは文句を言いながらも敵に向かう。そしてカットナル艦に攻撃を仕掛けた。
「ぬうう、ファンネルを使うとは!」
 彼はここで認識を間違っていた。これはファンネルではなかったのだ。全く別のものであった。しかしケルナグールはそれを知らなかったのだ。
「小癪な真似を!」
 しかえしとばかりにビームを放つ。だがそれはかわされグランガランに向かって行った。
「急速降下!」
 それを見たシーラの指示が下る。カワッセはそれに従い舵を切る。
「了解!」
 そしてビームをかわした。かすりはしたがそれはオーラバリアにより弾かれてしまった。それを見てケルナグールはさらに激昂した。
「おのれ、あの城みたいな船は何なのだ!」
「ええい、黙って戦争ができんのか!」
 それを聞いたカットナルが怒り狂った声でカットナル艦のモニターに出て来た。
「それでよく連邦政府の議員が務まるのう!」
「貴様にだけは言われたくはないわ!」
 カットナルはトランキライザーを噛み砕きながらそう返した。
「さっきから隣で五月蝿いと思っておったのだ!いい加減辺りを殴ったり蹴ったりするのは止めろ!」
「これがわしのやり方だ。口を挟まないでもらおう!」
「ではわしのやることにも口を出すな!」
「何!」
 二人は口喧嘩をしながら戦闘の指揮をとったいた。見ればケルナグール艦はグランヴェールの攻撃を受けていた。
「これで・・・・・・どうだっ!」
 巨大な炎の柱を放つ。グランヴェールの切り札の一つ電光影裏であった。炎により敵を焼き尽くす攻撃である。
 それがケルナグール艦を直撃した。艦が大きく揺れたがそれでもケルナグールは艦橋に仁王立ちして立っていた。
「この程度でわしが倒れるとでも思ったか!」
「ふ、流石に丈夫だな」
 それを聞いてブンドルがモニターに出て来た。
「それは褒めておこう」
「ブンドル、皮肉もいいがな」
 ケルナグールはそんな彼に言い返した。
「お主もかなりやられているのではないのか」
「この程度で私が倒れるとでも思っているのか」
「いや」
 ケルナグールはその言葉に首を横に振った。
「貴様がそう簡単に死ぬような男ではないことはわし等が一番よく知っておるわ」
「ふ、そうだったな」
「だがゴーショーグンが来ておるぞ。油断するな」
「わかっている」
 彼はそれに答えた。
「今こそマドモアゼル=レミーとの赤い糸を確かなものとする時」
「あんたも懲りないねえ」
「しつこい男は嫌われるわよ」
「そういうこと」
 それを聞いてブンドル艦のすぐ側にまでゴーショーグンを移動させていたキリー、レミー、真吾は言った。そして構えをとった。
「グッドサンダーチームはストーカーお断り!」
「あまり付きまとうと訴えられるわよ!」
 そして空に出て来た巨大な砲を手に取った。
「スペースバズーカ!」
「真吾、いっちゃって!」
 そしてそれをブンドル艦に向ける。砲身から巨大な光が放たれブンドル艦を直撃した。
「やったか!」
「お見事、真吾」
 しかしそれでもブンドルとその艦は健在であった。悠然と宙に浮いていた。
「その程度では落ちんよ」
 反撃に転じようとする。だがここで通信が入った。
「何だ、二人共」
「ん、通信を入れたのは貴様ではないのか」
「わしではないぞ」
 だが二人はモニターに出てすぐにそう返答した。ブンドルはそれを聞いて首を傾げた。
「どういうことだ」
 だがすぐにわかった。ブンドルだけでなく三人はそれを聞いて頷いた。
「撤退だ」
「うむ」
「戦いの途中で残念だがな」
 それを受けて残っていた艦載機を収めた。そして後ろに退きはじめた。
「ん、撤退するつもりか」
「ドクーガ、何処に行く!」
 ゴーショーグンが追おうとする。しかしそれに対して三人は言った。
「また今度会った時に思う存分やってやるわ!」
「だから楽しみにしておれ!」
「マドモアゼル=レミー、続きはまた今度は」 
 そして彼等はそのまま撤退した。退き際もまた美しい撤退であった。ブンドルの言葉を借りればそうなる。
「逃げたか」
「何か手強いけれど何処か抜けた連中だったね」
 マサキとリューネはそれを見届けた後でそう言い合った。
「まあドクーガはあんなもんさ」
「そうそう、それで何時出て来るかわからないのよね」
「神出鬼没ってやつだ」
「・・・・・・あんな目立つ奴等がか」
 タダナオはそれを聞きながらそう呟いた。いささか呆れた様子であった。
「で、これからあんた達はどうするんだ」
 そこでマサキが三人に尋ねた。
「またお別れかい」
「そういうこともできるけれどな」
 真吾がそれに答えた。
「けれど今は君達と一緒にいさせてくれないか。事情が変わってね」
「事情が」
「そう、大人の事情なの」
「正確には子供の、かな」
 レミーとキリーが茶化をまじえて言う。
「君達さえよかったら同行させてもらいたんだが。いいかい」
「こちらは構わないが」
「ただ将軍が何て仰るか」
「私は別に構わないが」
 ヤンロンとテュッティにカークスがそう答えた。
「ゴーショーグンの戦いは見せてもらった。是非とも我が軍に協力してもらいたい。責任は私が持つ」
「これで決まりだな」
「ああ」
 こうしてゴーショーグンはラングラン軍に参加することとなった。彼等はグランガランの艦橋にてあらためて自己紹介をした。そこには主立った者達が集まっていた。
「北条真吾」
「レミー島田」
「キリー=ギャグレー」
「以上三人でグッドサンダーチーム。ゴーショーグンのパイロットだ。これから宜しく頼む」
 真吾が三人を代表して言う。
「おう、宜しくな」
「皆さんの参加を歓迎します」
 一同を代表してマサキとシーラが三人を迎えた。そして他の者も挨拶をする。それが終わってから真吾は一人の少年とロボットを彼等に紹介した。
「あれ、この子は」
「これがその大人の事情ってわけ」
「子供の事情だろ、レミー」
「固いことは言いっこなしよ」
「それで君の名は」
「真田ケン太です」
 少年はヤンロンに問われてそう名乗った。
「ずっとゴーショーグンに一緒に乗っていました」
「そうだったのか」
「しかし何故」
「それは私が説明しましょう」
 ここでケン太の横にいたロボットが前に出て来た。
「ロボット?」
「はい。私はOVAといいます」
 そして自らの名前をそう名乗った。
「OVAっていうのか。それで何故彼はゴーショーグンに乗っていたんだい」
「はい、それは」
 それを受けて説明をはじめた。OVAはこれまでのいきさつについて語りはじめた。
 ケン太は真田博士という高名な学者の息子であった。父の研究、そして自分自身をドクーガに狙われそこをグッドサンダーチームに救われたのだ。その際父は死亡している。ドクーガが彼を狙う理由はビムラーという謎のエネルギーにあった。ドクーガはそれを狙っているのであった。それが為にグッドサンダー隊はケン太を守る為に世界を転々としているのであった。
「もしかしてあんた達は急に出たり消えたりするのもビムラーの力か」
「ああ、その通りだ」
 真吾が答えた。
「俺達はそれを使って世界中を飛び回ってるのさ。そしてドクーガの奴等と戦っている」
「それでそのドクーガってのは何なんだ。悪の組織だってことはわかるが」
「大昔より世界を裏から支配してきた組織です」
 OVAがそう答えた。
「大昔から」
「はい。今では世界経済を操っていると言われています」
「それでか。ここに出て来れたりする技術があるのも」
「おそらくは」
「何かえらく変わった連中のようだけれど注意する必要があるね」
「何か敵がどんどん増えてくなあ」
 プレセアがここでぼやいた。
「まあそういうもんだけれどな、戦争ってのは。しかし」
 マサキは義妹の言葉を聞きながらぼやいて言葉を続けた。
「あの三人はまたヘンテコリンな奴等だったな」
「おお、あんたもそう思うか」
「俺達も最初見た時そう思ったんだ」
「特にあのブンドルってのは目立つでしょう」
「・・・・・・目立つってレベル超えてると思うけど」
「プレセアの言う通りだな。あそこまで訳わかんねえのは見たことねえ。しかも三人ときたもんだ」
「だが手強いことには変わりはないな」
 アハマドは落ち着いた声でそう言った。
「あの三人はかなりの手練れだ。それはわかっているな」
「ああ、まあな」
「ならばそれだけだ。手強い者を倒す、それだけでいい」
「アハマドはいつもクールねえ」
「戦いですからな、セニア殿」
「そういう割りきりがいいねえ」
 どうやらキリーもそれに共感を覚えているようであった。
「何か色々な人がいるね、ここは」
「まあな。そういうあんた達も結構なものだが」
 タダナオがここで三人に対して言った。
「言ってくれるな」
「坊や、名前は何ていうのかしら」
「タダナオ、栗林忠直ってんだ。宜しくな」
「ああ、こちらこそ」
「宜しくね、坊や」
「その坊やってのは止めてくれよ、お姉さん」
「ふふふ、中々できてるじゃない」
 レミーはそれを聞いて大人の女の笑みを浮かべた。
「お姉さんだなんて。見所あるわ」
「むっ」
「こらこらレミー」
 真吾が入ってきた。
「からかうのはよせ」
「あら、からかってはいないわよ」
「刺激が強過ぎるぜ、レディ」
 キリーも入る。
「あまりそうしたことは控えた方がいいってもんだ」
「心配してくれるの、キリー」
「お望みとあらば」
「じゃあ止めておくわ。タダナオ君ね」
「はい」
「これから宜しくね、個人的に」
「了解」
「タダナオに勝つなんてやるわね」
「ホント。あの人やるね」
 リューネとがベッキーそう囁き合う。彼等もタダナオのことはよくわかっているのだ。
「さてと」
 三人は話を終えるとあらためて言った。
「部屋に案内してくれるかな、よかったら」
「雨露さえしのげれば何処でも」
「ゴーショーグンの中だけは勘弁してね。もう飽きたから」
「わかっている」
 カークスは三人の言葉に笑いながらそう答えた。
「それでは彼等をそれぞれの部屋に案内してくれ」
 そう言って部下の一人に声をかけた。それを受けてその部下が三人に声をかける。
「こちらです」
「了解」
 こうして三人はそれぞれの部屋に入った。こうしてラングラン軍にあらたな仲間が入ったのであった。
 
「そうですか、彼等も」
 紫の髪の男は神殿の礼拝堂で話を聞いていた。暗い、石の柱が林立する部屋であった。
「はい。御主人様のお話通りでしたね」
 小鳥が彼にそう話していた。
「これでこっちはあらかた揃っちゃいましたね」
「そうですね」
 男は小鳥にそう答えた。
「後は最後の詰めです。ところでチカ」
「はい」
「彼等はどうしていますか」
「ドレイク達ですか」
「ええ」
「それならそろそろですね。ルオゾール様がそっちに向かっておられますから」
「そうですか」
「連中がいなくなったらシュテドニアスの奴等慌てふためきますよ」
「そうでしょうね」
「そこで御主人様の登場ですね」
「チカ」
 ここで彼は小鳥の名をまた呼んだ。
「はい」
「あれの用意もできていますね」
「勿論ですよ」
 チカはそう答えた。
「何時でも出られますよ」
「それは何より」
 男はそれを聞いて満足そうに笑った。
「それでは私も行きますか」
「いよいよですね」
「ええ。それでは貴方も来なさい」
「えっ、私もですか!?」
 チカはそれを聞いて驚きの声をあげた。
「私はちょっと・・・・・・」
「嫌なのですか」
「いや、そういうわけじゃないんですけれどね。都合がありまして」
「言っておきますが貴方は私のファミリアなんですよ」
「それはわかっていますよ」
「ならいいですね。どのみち私が死ねば貴方も消える」
「はい」
「そういうことです。問題はありません」
「それはそうですけれどね」
 それでもチカはまだ不満そうであった。それも大いに。
「何も貴方をハイ=ファミリアにして出すことはしませんよ」
「元々あれにはそんなの装備されていないじゃないですか」
「今のところはね」
 彼はここでこう言った。
「ですがまだ改造の余地はありますよ」
 男は楽しむようにしてそう言った。
「まだまだね」
「驚かさないで下さいよ」
 チカはその言葉にたまりかねてこう言った。
「そんなのできるわけがないじゃないですか」
「ふふふ」
 だが男はそれには答えずただ笑うだけであった。澄んではいるが何処か闇を潜ませた笑いであった。
「まあ話はそれ位にしまして」
「はい」
「行きますよ。歯車を動かす為に」
「わかりました」
 こうして男とチカは神殿を後にした。そして静かに目指す場所に向かうのであった。
 これから暫くしてシュテドニアスで大事件が起こった。何とドレイク達が急に姿を消したのだ。それもオーラバトラー一機、人一人残さず。
 それを受けて大規模な調査が開始されたが結局真相はわからなかった。そして事態はそれどころではなくなっていたのだ。ラングラン軍が遂に国境にまで迫っていたのだ。
 これを受けてシュテドニアス軍は兵を総動員して防衛にあたった。何としても国境を越えさせるわけにはいかないからである。侵攻した国が逆に攻められるなぞ笑い話もいいところであるからだ。
「何としても奴等を追い返せ!」
 指示が下る。そして彼等は戦場に向かうのであった。ラングラン軍を雌雄を決する為に。


第十三話   完



                                     2005・3・13


 
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