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スーパーロボット大戦パーフェクト 第二次篇

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第六話 フロンティア

第六話        フロンティア
 シャングリラでの戦いを終えジュドー達を迎えたラー=カイラムは次にフロンティアに向かっていた。そこでティターンズの傘下に加わっていたクロスボーン=バンガードのモビルスーツが見られたからだ。
「今度はクロスボーンか」
 ジュドーは艦内の一室でビーチャ達とくつろぎながらぼやいていた。
「何か連中もしぶといな。鉄仮面も死んだってのに」
「本当に死んだかどうかまではわからないぞ」
 ここでカミーユが言った。
「ジャミトフやバスクもドゴス=ギアが沈められても生きていただろう」
「それは確かに」
 皆カミーユの言葉に頷くしかなかった。
「じゃあフロンティアにもあのラフレシアがいるかも知れないわね」
 ルーが口に手を当てながら言った。
「いや、それはないだろう。あんなデカブツとてもコロニーに入りきれないさ。バグを送り込む位だろう」
 ビーチャがそれに反論した。
「もっともそれだけで問題だがな」
「確かに」
 コウの言葉は的をえていた。
「ラフレシアの怖ろしさはそこにもあるんだ」
「ええ」
 皆それに頷いた。
「確かにラフレシアは脅威だけれどな」
 ここで後ろから声がした。
「けれどここにはいないぜ。これは確かな情報だ」
「本当ですか?」
 一同それを聞いて後ろに顔を向けた。そこには金髪で鼻のやや高い男がいた。
「ああ、俺がここに来る前に司令部で聞いた話だ。奴は今ゼダンの門にいる」
「ビルギットさん」
 彼等はその男ビルギット=ピリヨの名を呼んだ。
「こっちに転属になったんですか」
「ああ。ヘンケン艦長の意向でな。攻める方に戦力が必要だってことでな」
「ふうん」
「あっちにはケーラさんがいるしな。それにアムロ少佐も」
「それ程多くの戦力は要らないということですね」
「そういうことになる」
 アムロの名を知らぬ者はいなかった。ロンド=ベル、いや連邦軍を代表するエースパイロットであった。そのパイロットとしての技量は最早伝説の域にまで達していた。
「しかも量産型のF91までもらったよ。ヘンケン中佐も気前がいい」
「それは凄い。いつものジェガンじゃなくて」
「ああ。それだけじゃないぜ」
「他にもあるんですか?」
「オリジナルのF91にビギナ=ギナもだ。もっともこれはパイロットがいないようだがな」
「ええ、まあ」
「俺達もう皆乗っていますし。それもかなりいいのが」
「F91もビギナ=ギナもあたし達には合わないよお。やっぱりキュベレイでないと」
「そうだな。あたしもあの赤いキュベレイが一番いい」
 彼等は口々にそう言った。
「そんなもんかな。俺は量産とはいえF91に乗れてかなり気分がいいんだがな」
 いつもジェガンに乗っている者としてはこれは当然かも知れなかった。
「バニング大尉はどう思われてるかはわからねえがな」
「上機嫌だったよ」
 キースがビルギットに答えた。
「やっぱり大尉もガンダムに乗れて嬉しいみたい。それに操縦も手馴れたものだったよ」
「あの人の操縦は別格だからな。ああ、そうそう」
 ここで彼は何かを思い出した。
「大尉に新兵を紹介しなくちゃいけないんだった」
「新兵?」
「ああ、俺の他に二人来ているんだ。連邦のパイロット養成学校を卒業した二人がな」
「へえ」
 ジュドーもカミーユもそれを聞いて声をあげた。
「専門のパイロットですか」
「ああ。テスト用に機体と一緒にな。残念だがモビルスーツじゃない」
「まあそういったのもあるでしょ。連邦軍だってモビルスーツばかりに頼ってはいられないし」
「ドラグナーの計画もあった筈だ」
 ジュドーとカミーユは口々にそう言った。
「そういうのもありかな。SRXもあったし」
「リュウセイ達元気かなあ」
 中にはかっての仲間達を懐かしむ者もいた。
「それでその二人だけれどよ」
 ビルギットが話を戻した。
「あの男の子と女の子?」
 ここでフォウが部屋に入って来た。
「ああ。知ってるのか?」
「はじめて見る顔だったから。さっきモンシアさんとヘイトさんが艦橋に連れて行ったわよ」
「えっ、もうか!?」
「ええ。何でも挨拶が先だって。ビルギットさんは挨拶は済ませたの?」
「おうな。そうか、もう行ったのか」
 彼は少し残念そうに答えた。
「何か先を越された気分だな」
 何処か悄然としない彼であった。その時艦橋では一組の男女がブライトの前にいた。
 紫の上着に黒いズボン、銀の肩当てを身に着けた紫の髪のまだあどけなさの残る少年と青緑の胸が大きく開いた上着に黒いかなり丈の短いスカートを履いた銀髪の綺麗な顔立ちの少女がいた。少女の方がニ三歳程年上であるようだ。そのせいか彼女が右にいた。
「ゼオラ=シュバイツァー少尉です」
 少女がまず敬礼して答えた。
「アラド=バランガ少尉です」
 少年も答えた。二人共階級は同じであった。
「ブライト=ノア大佐だ」
 ブライトは返礼して答えた。
「このラー=カイラムの艦長を務めている。以後宜しくな」
「はい」
「宜しくお願いします」
 二人はそれに応えた。
「君達二人はパイロット学校を卒業してロンド=ベルに配属されたのだったな」
「はい」
「テスト用の機体と共にか。ビルトビルガーとビルトファルケンだったな」
「はい」
 二人はまた答えた。
「マオ社の製造か。百舌と隼か」
 ブライトはその機体の名を呟いた。ドイツ語で百舌と隼の意味であるのだ。
「いい名前だな」
「大佐もそう思われますか?」
 それを聞いたアラドの目が輝いた。
「あ、ああ」
 ブライトは彼が急に態度を変えたのでいささか驚いた。
「私はそう思うが」
「よかった。何て言われるか不安だったんですよ」
「そうだったのか」
「はい。スクールでは何か古いネーミングだって言われてきましたから」
「ふむ」
 それを聞いてブライトは思うところがあった。確かにかってのドイツ軍の戦闘機の名前を彷彿とさせるものがそこにはあったからだ。
「けれどよかったです。大佐にそう言って頂けると」
「ちょっとアラド」
 ここでゼオラがアラドを咎める声を出した。
「な、何!?」
「大佐の前でそんな態度はないでしょ」
「いや、構わない」
 しかしその程度のことを気にするブライトでもなかった。
「それに私のことは艦長でいいからな。どうも堅苦しいのはこの隊には合わないからな」
「そうなんですか」
「アムロともそうだしな」
 ここで彼は長年の戦友のことを出してきた。
「あいつとは階級や経歴こそ違うがな。それでも砕けて話をしている。中には全く命令を聞かない連中もいた」
 ジュドーや忍達であるのは言うまでもない。
「そうしたこともこの隊には多い。民間人も多いということもあるが」
「民間人も」
 それを聞いたゼオラは思わず表情を変えた。
「あれ、知らなかったのか!?」
 アラドはそんな彼女に対して言った。
「コンバトラーチームもマジンガーチームもそうだぜ」
「そ、そうだったの」
「そう、アラドの言う通りだ」
 ここでブライトが言った。
「彼等は民間人だ。あくまで協力しているという形でな」
「知らなかった」
「それ位常識だろ。そんなんだから頭でっかちって言われるんだよ」
「何よ、あんたには言われたくないわ」
 それを聞いて怒った。
「あんたはどうなのよ。いつも私が助けてあげなきゃ何もできないじゃないの」
「誰が助けてくれなんて頼んだんだよ」
 アラドはそう言われて怒った。
「お節介はいらないんだよ」
「そうしなきゃ何もできないくせに」
「そんなんだから年増って言われるんだろ」
「何ですってえ」
 二人はブライトの前で口喧嘩をはじめていた。バニングがそんな二人を制止した。
「馬鹿者、艦橋で何をやっている」
「あっ」
 二人はそう言われハッとした。
「す、すいません」
 そして慌てて離れた。
「まだ若いとはいえ御前達も将校だ。ならばそれらしい行動を心掛けろ」
「は、はい」
「申し訳ありませんでした」
 怒られて畏まる二人であった。
「わかればいい。では艦長」
 二人を大人しくさせるとブライトに声を向けた。
「うむ」
 それを受けてブライトは頷いた。
「それではパイロット達を集めてくれ」
「わかりました」
 彼は敬礼をして応えた。そして言われるがまま他のパイロット達を艦橋に集めた。全員集まると彼は言った。
「今回の作戦はフロンティアとなった」
「フロンティア」
「またあそこか」
 皆そこはよく知っていた。
「そうだ。クロスボーン=バンガードが接近しているらしい」
 ブライトは皆にそう説明した。
「我々の作戦は彼等の撃退だ。そしてフロンティアを防衛することだ。いいな」
「了解」
 皆それに頷いた。
「これからすぐに出撃してもらう。全機出撃用意は整っているな」
「はい」
 皆頷いた。
「何時でもいけます」
「それなら話は早い。今すぐ出撃する」
「了解」
「敵はもうすぐ側まで来ているらしい。すぐに迎撃態勢をとれ、いいな」
「はい!」
 皆それに答えた。そしてそれぞれモビルスーツに乗り出撃した。ラー=カイラムはフロンティアの前方に展開し、モビルスーツ部隊は四機ずつの小隊を組みその周りに展開する。そして敵を待った。
「来たぞ」
 先頭にいるバニングが呟いた。レーダーに反応があった。
「敵接近中、その数五十」
 彼はラー=カイラムに報告する。
「敵艦二隻、いずれも大型艦と思われる」
「了解」
 それを聞いたトーレスが頷く。
「艦長、敵が来ました」
「うむ」
 その通信はブライトも聴いていた。
「全機攻撃用意、それぞれ攻撃態勢に入れ」
 各機にその通信が入る。
「一機たりともフロンティアに近付けるな。いいな」
「了解!」
 各機から返答が来た。そして敵を待ち受ける。すぐに敵が来た。
「ドレル様、フロンティア周辺に敵が展開しています」
 黒い小型の騎士に似たシルエットのモビルスーツ、ベルガ=ギロスに乗る隻眼の男が隣の赤紫のモビルスーツ、ベルガ=ダラスに乗る紫の髪の青年に尋ねた。
「わかっている」
 その青年、ドレル=ロナはそれに答えた。
「当然と言えば当然だな」
「はい」
 隻眼の男はそれに頷いた。
「それではこのまま進みますな」
「無論」
 ドレルはその問いに対して強い声で答えた。
「それ以外にどうするつもりだ」
「いえ」
「ザビーネ=シャル」
 ドレルは彼の名を呼んだ。
「はい」
「卿とその部隊が先陣を務めよ。よいな」
「わかりました」
「第二陣は私が率いる。そして戦艦は我々の援護に回れ」
「了解」
 戦艦からも返事が返ってきた。
「敵を退けフロンティアを制圧する。そしてそれからべラを手に入れるぞ」
「はい」
「べラがいなければ何もはじまらんからな」
 ドレルはここでこう呟いた。
「では頼むぞ」
「わかりました」
 ザビーネは頷いた。そしてクロスボーン=バンガードはロンド=ベルの前に姿を現わした。
「来たか」
 ブライトは敵機を見て言った。
「援護射撃の用意をしろ。いいな」
「了解」
 トーレスとサエグサが頷く。それと共に主砲が動く。
「間違ってもジュドー達に当てるなよ」
「わかってますって」
 彼等は明るい声でそう応えた。
「もっとも連中が戦艦の主砲にそうそう当たるとは思えませんがね」
「ふふふ、確かにな」
 ブライトもそれは同意であった。
「カミーユもジュドーもかなりの力量だからな」
「はい」
「もう少しでアムロの域に達するのも夢ではなくなるぞ」
「まさか」
「私はそう見ているがな」
 だがブライトはそれにも応えた。
「ただアムロはさらに上の域にまでいくかも知れないが」
「少佐は特別ですからね」
「あれはもう天才ですよ」
「天才か」
「ええ」
 サエグサとトーレスはそれに頷いた。
「あれは間違いないでしょう。ニュータイプってこともありますが」
「それを抜いても凄いですよ」
「確かにな」
 それはブライト自身が最もよくわかっていることであった。
「けれどカミーユとジュドーが凄いのは本当ですね」
 トーレスはここでこう言った。
「それはな」
 サエグサもそれを認める。
「これでシーブックもいれば完璧なんだがな」
「今どうしているかな」
「フロンティアにいるだろ、今も」
 二人はこう話していた。ここで後ろからモビルスーツが一機近付いてきた。
「ん!?」
 まずブライトがそれに注視した。
「ダギ=イルスか」
「はい」
 すぐに女の声で通信が入って来た。
「アンナマリーです。ブライト大佐、お久し振りです」
 茶の髪の青い瞳の黒人の女がモニターに映った。アンナマリー=ブルージュである。かってクロスボーンに所属していたパイロットだ。
「ああ、元気だったか」
 ブライトは彼女の顔を見て声をかけた。
「はい。今回はロンド=ベルに加えて頂きたくこちらに参りました」
「それは何より」
「それで一先ラー=カイラムに入って宜しいでしょうか」
「構わないが。一体どうしたのだ?」
「詳しい話は後で。まずは着艦の許可をお願いします」
「何かあるな」
 ブライトはそれを見て思った。
「わかった。では着艦を許可する」
「有り難うございます」
 それを受けてアンナマリーの乗るダギ=イルスはラー=カイラムに着艦した。その頃にはもう戦闘がはじまっていた。
「おっまかせえ!」
 ビーチャが叫ぶ。そしてビームライフルからビームを放った。
 それでベルガ=ギロスが一機撃墜される。その側にはガンダムチームが展開している。
「ビーチャ、あまり前に出るなよ」
 モンドが彼に声をかける。
「わかってるさ!」
「あたしもいるんだからね!」
 エルの声もする。
「僕も」


 イーノもいた。彼等は四機一組となって敵を倒していた。そこへコウの部隊が来た。コウの乗るGP-03を先頭にキース、クリス、バーニィが続く。彼等は左翼を受け持っている。
 右はカミーユとジュドーの部隊が展開している。そして正面はバニングの小隊が。ロンド=ベルはクロスボーンの部隊を相手に上手く渡り合っていた。
「正面が弱いな」
 だがザビーネとドレルは戦線を冷静に見ていた。
「やはり一個小隊では限界がある。主力を正面に向けろ」
「了解」
 ドレルの指示に従いバニングが兵を動かす。そしてそこに集中攻撃を仕掛けようとする。だがバニングはそれにも動じてはいなかった。
「来るぞ」
 ヘイト達に声をかける。
「わかってますって」
 そして彼等はそれに動じてはいなかった。
「不死身の04小隊を見せてやろうぜ」
「そうですね、久し振りに」
 ヘイトもモンシアもアデルも笑っていた。彼等は危機を前にしてさらに燃え上がっているようであった。そこに黒いモビルスーツ達が来る。四機はそれに対してライフルを向けた。
「やらせんっ!」
 一斉にビームを放つ。それで忽ち何機かが落とされた。ザビーネはそれを見て呟いた。
「流石と言うべきか」
 しかし彼もクロスボーンにおいてそん名を知られた男である。動じてはいなかった。
「私が行く。後ろを頼むぞ」
 部下達に声をかける。だがそこでそれを制止する声があった。
「待て」
 それはドレルの声であった。
「ドレル様」
「私も行く。卿だけは行かせはしない」
「しかし」
「何、死にはしない」
 ドレルはそれに対して笑って答えた。
「死んだとしてもそれはコスモ貴族主義に殉じたものだ。恥ではない」
「左様です」
 これはザビーネも同じ考えであった。
「では行くぞ。そして奴等を倒す」
「ハッ」
 こうしてドレルはザビーネを従える形でバニングの小隊に向かった。既にバニング達は身構えていた。
「私はあの先頭にいるガンダムをやる」
 ドレルはバニングのGP-01を指し示しながら言った。
「卿は他の者の足止めを頼むぞ」
「了解」
 ザビーネはそれに従った。そして彼等は前に出た。
「来たか」
 バニングはそれを見てビームサーベルを抜いた。そしてドレルのベルガ=ギロスに向かった。だがここで思いも寄らぬ助っ人が現われた。
「ムッ!?」
 もう一機ガンダムが姿を現わした。それは小型のガンダムであった。
「このガンダムは」
 ドレルとザビーネはそれを見て驚きの声をあげた。
「久し振りだな、ドレル」
 そこから声がした。少年のものであった。
「シーブックか!」
 二人はその声を聞いて声の主の名を呼んだ。
「その通り」
 その小型のガンダム、F91に乗る青い髪の少年シーブック=アノーが答えた。
「シーブック、貴様もロンド=ベルに戻っていたのか」
「ああ、色々と事情があってな」
 シーブックはそれに応えた。
「貴様等が前にいるのなら戦う。それだけだ」
「面白い」
 ドレルはそれを聞いて笑った。
「貴様がいるということはベラもいるのだな」
「ええ、そうよ」
 ここで若い少女の声がした。
「やはりな」
 F91の後ろを見る。そこには銀色のモビルスーツ、ビギナ=ギナがいた。そこに乗っているのは茶色の髪の少女、セシリー=フェアチャイルドであった。
「久し振りね、兄さん。そしてザビーネ」
「確かにな」
 ザビーネはその言葉に頷いた。
「ならば私達がここにいる理由はわかるだろう」
「ええ」
 セシリーはそれに答えた。
「けれど私の答えはもう決まっているわ」
「そうだろうな」
 それはもうわかっていることであった。二人はそれを聞いても驚かなかった。
「そしてそこにいるのはわかっている」
 ザビーネが呟くように言った。
「アンナマリー」
「わかっていたのね」
 アンナマリーの乗るダギ=イルスも来た。
「貴様が手引きしたのだな」
「手引きといったら聞こえが悪いね」
 彼女はそれに悪びれることなく答えた。
「セシリー様とこの坊やをあるべき場所に導いただけさ」
「フン、戯れ言を」
 ザビーネはそれを鼻で笑った。
「では貴様もいるべき場所にいるということか」
「そうさ。悪いかい」
「我がクロスボーンの鉄の規律は知っているな」
「裏切り者には死を」
「そういうことだ」
 ザビーネはそう答えながら剣を抜いた。
「行くぞ」
 彼はビームサーベルを構えた。そしてそれで切ろうとする。アンナマリーも剣を抜く。しかしその前にシーブックのF91が来た。
「待ってくれ、アンナマリーさん」
「シーブック」
「ここは俺に任せて。アンナマリーさんは他を頼む」
「いいのかい?手強いよ」
「それはわかってるよ」
 彼はモニターでにこりと笑って答えた。
「だからこそここに来たのさ」
「そうかい。わかってるのかい。じゃああたしからは言うことはないね」
「ああ」
「ベラ様もはじめられたみたいだし」
 セシリーは既にドレルのベルガ=ギロスとの戦いをはじめていた。
「あたしも戦いに行くとするか。じゃあ任せたよ」
「はい」
 シーブックは彼女の言葉に頷いた。
「お願いします」
「よしきた。ビルギット」
「おうよ」
 何時の間にか隣に来ていたビルギットの量産型F91に声をかける。
「雑魚を始末しに行くよ。どっちが先にエースになるかかけないかい?」
「面白いな。乗ったぜ」
「よし来た。じゃあ行くよ」
「おうよ」
 こうして二人は周りのモビルスーツの相手に向かった。それには既にバニング達もあたっていた。そして戦局を有利に進めていた。
「むう」
 それを後方のザムス=ガルの艦長は苦い顔で見ていた。
「ドレル様とザビーネ様も動きを止められているな」
「はい」
「我等も迂闊に攻撃はできん。こうまで混戦になっていると」
「ですがラー=カイラムはそれでも的確に援護を行っておりますな」
 これは艦長であるブライトの技量の賜物であった。やはりこうしたものは歴戦の知識と経験がものをいうのである。
「そうだな。それにより我が軍はさらに戦力を減らしている」
「はい」
「どうするべきか。御二方に進言するか!?」
「撤退を」
「そうだ。これ以上戦っても勝利は望めないだろう。ならば」
 彼等はこう話していた。その隣にはもう一隻ザムス=ガルがいる。だがその僚艦が突如として炎に包まれた。
「何だっ!」
 これには彼等だけでなくドレルもザビーネも驚きの声をあげた。
「よし、間に合ったな!」
 炎に包まれ消えていく戦艦の向こうに複数の戦闘機が姿を現わした。
「ラー=カイラム、聞こえるか!?」
 ラー=カイラムに通信が入った。色の黒い金髪の彫の深い顔立ちの男がモニターに出た。マクロスのエースパイロット、ロイ=フォッカー少佐であった。
「スカル小隊、今よりそちらに合流する。返答を求む!」
「スカル小隊が!?」
 マクロスの艦載機である変形メカバルキリーで構成される部隊である。通常は可変翼の戦闘機だがそこからガウォークやバトロイドに変形する独特のメカである。
「そういうこと」
 アジア系の男がモニターに出た。柿崎速雄であった。
「グローバル艦長の命令で。助っ人に来ましたよ」
「そうだったのか」
「うむ」
 ここでいかつい顔の大男が出て来た。ガルド=ゴア=ボーマンである。
「私も派遣させてもらった。また宜しく頼む」
「おい、ガルド」
 アジア系の顔をした茶色い髪の男も出て来た。
「何畏まってるんだよ」
 イサム=ダイソンであった。
「御前らしくないぜ」
「場所をわきまえろ」
 だがガルドはイサムに対し冷静に返した。
「今は戦闘中だぞ」
「だからこそだろうが」
 イサムも負けてはいなかった。
「ハレの場だぜ、ハレの」
「戦闘を何だと思っているのだ」
「今言っただろうが、ハレの場だって。そうそう落ち着いていたんじゃ勝てるものも勝てはしねえよ」
「ではそうして戦死するのだな。誰も悲しむことはない」
「何、御前この前撃墜機数で俺に負けてただろうが。偉そうに言うな」
「あの」
 ここでモニターにまた人が入って来た。
「ブライト艦長、お久し振りです」
 黒い髪の若者だった。一条輝である。
「今回また御一緒させてもらうことになりました」
「僕もです」
 青い髪にサングラスの青年、マクシミリアン=ジーナスである。
「私も」
 赤い髪の美しい勝気な顔立ちの女、ミリアもいた。
「以上七機、宜しくお願いします」
 フォッカーが彼等を代表してまたブライトに挨拶をした。
「で、今のは手土産ってわけです」
 そしてそう言いながら後ろの爆発を親指で指し示した。
「手土産か」
「はい」
「いつもながら派手な手土産だな」
「そうでなくちゃ面白くないでしょ」
「確かにな」
 そう答えるブライトはいささか苦笑していた。
「だがそれなら話が早い。これからも宜しく頼む」
「こちらこそ」
 そして彼等はもう一隻のザムス=ガルに向かった。しかしその前をクロスボーンのモビルスーツ達が守りを固めている。
「ここは守り抜け!」
「ドレル様とザビーネ様が戻って来られるまで持ち堪えよ!」
 彼等は口々にそう命令する。そして迫り来るバルキリー達に備えた。
「よし、スカル小隊突撃だ!」
「了解!」
「少佐に続くぞ!」
「はい!」
 フォッカーと輝の指示に従いバルキリー達が突っ込む。そしてまずはミサイルを一斉に放つ。
 複数のミサイルが煙を吐きながら複雑に飛ぶ。そしてそれぞれの敵に目標を定め突っ込んでいく。
「クッ!」
 クロスボーンの兵士達はそれをかわそうとする。だがミサイルの動きは速く、到底よけきれるものではなかった。次々と被弾し、炎の塊と化していく。
「まだだ、まだやられたわけじゃない!」
 それでも踏み止まる。しかしそこに新手が来た。
 紫のメカと青いメカであった。二機のメカはそれぞれ絡み合う様に飛びながらクロスボーンの部隊に向かって来た。
「ゼオラ、いいか!?」
 紫のマシンから声がした。アラドのものである。
「それはこっちの台詞よ!」
 青いマシンからすぐに返ってきた。ゼオラのものである。
「アラド、遅れないでよ!」
「俺が何時遅れたんだよ!」
「いつも遅れてるじゃないの!」
 そんなやりとりをしながらクロスボーンの部隊向かって突き進む。クロスボーンの部隊はその前に立ちはだかる。
 しかしそれはゼオラの乗るビルトファルケンのライフルの前に倒されていく。
「やらせないわよ!」
 ミサイルも放たれる。それもまた敵を襲った。こうして道を開いた。
「今度は俺だ!」
 アラドの乗るビルトビルガーが剣を抜いた。
「食らえっ!」
 それでクロスボーンのモビルスーツを両断していく。ZZのハイパービームサーベルに匹敵する威力であった。
「何かすげえのがいるな」
 フォッカーはそれを見て思わず呟いた。
「はじめて見る機体だがありゃかなり凄いぜ」
「そうですね」
 輝がそれに同意した。
「だが中にいるパイロットはまだまだこれからだな」
「これからですか」
「ああ。筋はいいがな。ちょっとばかり若いな」
「はあ」
「それもなおっていくだろうな。こいつは将来が楽しみだ」
 二人は瞬く間にクロスボーンのモビルスーツ部隊を退けた。そしてザムス=ガルに向かう。
「行くぞゼオラ、あれでいく!」
「わかったわ!」
 ゼオラがそれに応える。
「あたしの方はいいわよ!」
「よし!」
 アラドはそれを聞いて頷いた。そしてエンジンを全開にした。
「行くぞ、ツインバード・・・・・・」
「ストラァーーーーーーイク!」
 二人はほぼ同時に叫んだ。そして機体のリミッターを解除して戦艦に特攻した。
「いけええええええっ!」
 アラドは接近用の武器で、ゼオラはライフルやミサイルで総攻撃を仕掛ける。それで戦艦にダメージを与えた。
「うおおおおっ!」
 攻撃を受けたザムス=ガルは揺れた。艦の至るところから火を噴いた。
 それは艦橋においても同じであった。艦長は一度宙に浮き床に叩き付けられた。
「グハッ!」
 口から空気を吐き出した。背中を鈍い激痛が走った。だがそれでも彼は何とか立ち上がった。それは艦長としての責務であった。
「被害状況を知らせよ!」
 彼は立ち上がると周りにそう叫んだ。それを受けて一人の将校が伝えた。見れば頭から血を流している。
「大破です。これ以上の戦闘は・・・・・・」
「そうか」
 彼はそれを受けて頷いた。
「ドレル様とザビーネ様に通信を開け」
「はい」
「その必要はない」
 だがここでモニターが開いた。そしてドレルとザビーネが出て来た。
「これ以上の戦闘は無理だ。撤退するぞ」
 ドレルが彼にそう伝えた。
「わかりました」
 艦長はそれに頷いた。そしてこう言った。
「それでは先に退かせて頂きます。最早これ以上の戦闘は」
「うむ。致し方あるまい。我々も今から撤退に入る」
「ハッ」
 艦長は敬礼した。そして周りに対して言った。
「撤退!弾幕を張りつつ後退せよ!」
「了解!」
 皆それに頷いた。こうしてザムス=ガルは大破しつつも戦場を離脱しにかかった。
「逃げるつもりか!」
「やらせるもんですか!」
 ゼオラは尚も追おうとする。だがここでフォッカーからの通信が入った。
「止めときな、お嬢ちゃん」
「けど」
「これ以上追うとかえって藪から蛇を出しちまうぜ。まあここは大人しく逃がしてやるんだな」
「いいのですか?」
「ああ。どのみちここでの戦いは俺達の勝ちだ。敵さんもあれだけ痛めつけられりゃ当分は来ないさ」
「少なくともクロスボーンはね」
 輝がここで言った。
「あくまでティターンズの一部隊だけれど」
「それでも大きいぜ」
 フォッカーがそれに対して言った。
「クロスボーンは連中の中でもかなり大きな部隊だからな。それに大きなダメージを与えておくと当分楽になる」
「そういうものでしょうか」
「輝、御前はちと心配性過ぎるんだよ」
「少佐が楽天的過ぎるんですよ」
「おやおや」
 フォッカーは輝の反論に思わず肩をすくめさせた。
「まあそれはいいさ。そこの坊やとお嬢ちゃん、わかったな」
「はい」
「わかりました」
 二人、ゼオラは渋々ながらもそれに答えた。
「ただ少佐」
「何だい」
「あたしはゼオラって名前があるんです。お嬢ちゃんじゃありません」
「わかったよ、お嬢様」
「同じじゃないですか」
「おっと、そうだったか。ははは」
 フォッカーの明るい笑い声と共に戦いは終わった。ロンド=ベルはフロンティアの前で集結した。
「さっき話した通りこれからこっちでやらせてもらいますね」
 フォッカ^はブライトに対してそう言った。
「宜しくな」
 ブライトは微笑んでそれに応えた。
「君達が来てくれると何かと心強い」
「それは有り難い御言葉です。何せ前の戦いじゃ一緒に楽しくやらせてもらいましたからね」
「そうだな。そしてそれはこれからもだ」
「はい。まあ気楽にやりましょう」
「うん」
 ブライトとフォッカーは手を握り合った。次にシーブックとセシリーが出て来た。
「また戦いに参加するのだな」
「はい」
 二人はブライトの問いに答えた。
「その為にここに来ました」
「クロスボーンがある限り私は彼等と戦わなくてはいけないようですから」
「そうか」
 ブライトは感情を顔には出さなかった。
「色々とあるようだが頼むぞ」
「はい」
 二人は頷いた。こうしてシーブックとセシリーもロンド=ベルに加わることとなったのである。
「また賑やかになってきたな」
 ジュドーは皆がホールに集まったのを見てそう言った。
「これで獣戦機隊とかが入るともっと騒がしくなるな」
「地上で大空魔竜のチームと合流したらしいよ」
 輝が彼に対してそう答えた。
「あ、そうなんですか」
「ああ、だからいずれ一緒に戦うことになるかも知れないな」
「ふうん、何か嬉しいような懐かしいような」
「ジュドーと忍さんの声って似てるもんね」
 ここでプルが言った。
「御前とプルツーの声もそっくりだろうが」
「だってあたし達双子だもん」
「そうそう」
「厳密には双子じゃねえんだが」
 ジュドーは二人の反撃にいささか閉口しつつそう呟いた。
「そういえばフォッカーさんの声も竜馬さんの声に似てますよね」
「おっ、そうか!?」
「それに洸さんにも。本当にそっくり」
「ううむ、よく言われるけれどな」
 ルーとエルの言葉に首を頷かせていた。
「俺の声は結構パイロット向きなのかも知れんな」
「ははは、確かに」
 それを聞いて皆笑った。
「シーブックさんとバーニィさんもそっくりだし」
「あ、それは
「よく言われるよ」
 二人はここで口を揃えた。本当にそっくりであった。
「他にも結構いるよね。雅人さんとショウとか」
「ショウはトロワにも似ているよな」
 モンドとビーチャもそれについて言及した。
「ビーチャの声はアストナージさんに似てるな」
 コウの指摘も鋭いものであった。
「あとヒイロとマサキ」
「あいつ等今どうしているかな」
 そんな話をしていた。だがアラドとゼオラは今一つその話に入り込めないでいた。
「声ってそんなに似ているものなのかな」
「そうなんじゃないの?よくわからないけど」
 ゼオラは少しキョトンとしていた。
「そういうものよ」
 ここで金髪にスラリとした長身の女がゼオラに話しかけてきた。
「私も結構色んな人に声が似てるって言われるから」
「ニナさんはそう言われることが多いな、確かに」
「そういえばそうね」
 カミーユとフォウがそれに同意した。
「私は案外そう言われることがないけれど」
 ファは少し残念そうであった。
「ニナさんって声変えられるしね」
「よく知ってるわね」 
 そう言われて彼女は少し戸惑った。
「けれどそれはエマさんだって同じよ」
「私も!?」
 ニナに話を振られたエマは少し驚いていた。
「ええ」
「そうかしら。私はそうは思わないけれど」
「エマさんの声でリィナの声に似ているような気がするな」
 ここでジュドーが言った。
「似てる?」
「そうかしら」
 リィナもエマもそれには懐疑的であった。
「全然違うように思うんだが、ジュドー」
「そうですかね。俺はそうは思わないけれど」
 カミーユの言葉にも首を振らなかった。
「似てますと、二人の声は」
「そういうものかしら」
 エマはまだ首を傾げていた。
「ブライト艦長と万丈さんの声ならわかるけれど」
「あれで何回聞き間違えたか」
 皆それで困ったような顔をした。
「他にもマックスとバーンの声がそっくりだったし。一瞬あいつが二人いつかと思ったわ」
「ははは、すいません」
 クリスの言葉にマックスは笑って謝罪した。
「クリスさんの声も綾波に似てるよな」
「そうかしら」
 キースの指摘にクリスは半信半疑であった。
「こうしてみると本当に声が重なるよな」
「うんうん」
 皆そうした話をしていた。ここでブライトがやって来た。
「よし、皆揃っているな」
「はい。次の作戦ですか?」
「そうだ。よくわかったな」
「ここにいるとね。どうしてもそうなりますよ」
「そうぼやくな。次の作戦は合流だ」
「合流」
「そうだ。ドラグナーの試作機三機をこちらで引き受けることになった。その機体及びパイロット達と合流することになった」
「はあ。場所は何処でしょうか」
「ここからすぐの宙域だ。あちらから指定があった。三日後に合流したいとのことだ」
「じゃあそれまで休めますね」
「うむ。期日までこのフロンティアに停泊し英気を養うことにしたい。皆それでいいな」
「はい!」
 一同喜んでそれに答えた。
 こうして戦士達は束の間の休息に入った。だがそれは本当に束の間の休息であった。彼等はまた戦場に向かわなければならないのだから。

第六話    完



                                 2005・2・8

 
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