インフィニット・ストラトス~黒き守護者~
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マジで夜に舞う姫たちと騎士2
ここは観察室。そこには文化祭で優勝したので一夏と祐人を手に入れた生徒会メンバーが祐人を除いて揃っていて、そのほかには更識簪と織斑千冬、山田真耶がいた。
「何で祐人は反撃してんだよ!」
「何を言っている。それが普通だ」
「普通って―――」
「相手は武器を持っているんだぞ。それも本物の、な」
「それにおりむー。かざみんはまだ本気を出してないよ~」
「そういう問題じゃないんだよ、のほほんさん」
男が女に手を出すのはおかしい―――そんな持論を持っている一夏だからそう言えるが、ここにいる女勢はそんなことはどうでもよかった。一夏以外は―――本気で手を出したらIS学園から入院者が続出するのを知っているからだ。特に千冬、真耶、本音というメンツは血がほぼない状態で生きているのも関わらず、壁を吹き飛ばし、床をへこます光景を目にしている。例え何らかの装置を使っていたとしても、身のこなしの時点でどれだけ強いかはわかる。それに1組の女子たちは誘拐されたためにその光景を見たため、女はISが無ければ本当に無力で、今でも立場が上なだけだということを改めて知った。少なくとも―――風宮祐人が相手では例え惨めでも逃げなければならないと知っていた。
それに簪も目の前で裏切ったとはいえ今まで部下として自分と同じように体を鍛えてそれなりにも名が通っている人間をいとも簡単に無力化している光景を目にしているのだ。ちなみにだが、一度実家に帰った際に様子がおかしいと感じた両親が話を聞くとすぐに連れて来いと言ったとか言わなかったとか。
千冬は―――人間としてはどうかと思うが―――祐人の実力を測ると同時に『女尊男碑派』の女たちの目を覚まさせるという意図もあるので止めていないのだが。
「とにかく、俺は止めてくる!」
「止めておいた方が……いい。今の織斑くんだと……無理」
「ええ、無理ね」
「で、でも―――」
「―――止めておけ、一夏。そもそも、私の攻撃を受けて何もしないお前に風宮を止めることはできん」
『そうそう、あなたみたいなゴミレベルには永遠には無理よ』
「待て。何故貴様もここにいる」
いつの間にか現れたシヴァに対し、千冬はシヴァを睨む。
『そう殺気立つのは止めてくれないかしら。別に私はこのIS学園を壊そうとして来ているわけじゃないのよ』
「例えそうだとしても、許可されていない者が不用意に入るのはどうかと思うがな。それよりお前は何者だ? どうしてIS学園のセンサーや監視カメラに何も映らずここに来れる?」
『祐人が全て知っているわ。まぁ、彼が話す気がないなら私も静観するだけよ』
「だとしても、勝手に入られるのはお姉さん的にもいただけないのよね~」
『忠告しておくけど、あなたは戦わない方がいいわ。私が相手だとそこのゴミよりすぐに片付くから』
何気ない一言に、その場にいた全員は驚く。楯無は国家代表。それを一夏より簡単に片付くと言うのだから当然だ。
(まるで鈴みたいな奴だな………)
彼女の雰囲気に一夏はそう思ったが、シヴァはそれを感じてくないを投げた。
『今のは忠告よ最初の適合者。今度あんな口だけ女と一緒にしたら殺すわ』
その瞳は本気だと言いたげだった。
「口だけって………」
『実際そうじゃない。私の方が強いと言ったときは高が雑魚の分際でって思ったわよ。それがあの金髪狙撃手と二人で真耶に負けるし、そもそも黒眼帯相手を相手にしている時は祐人が止めていなければ出場出来ていない状況よ』
「………」
シヴァの言葉に一夏は押し黙る。それは一夏も知っていたからだ。
『つまり、どっちにしても姉にすら勝てないあなたはここで静観するしかないってわけ。まぁ、あのゴミと同レベルの頭をしているあなたにはお似合いよ』
「いや、俺は束さんと違って天才じゃないぞ」
『………そういうことにしておいてあげるわ。それじゃあね』
そう言ってドアからシヴァはドアから出る。
姿が見えなくなったところで千冬が追跡しようとしたが、既にその姿はなかった。
■■■
「あーもう! アイツどこに行ったのよ!!」
鈴音が気絶が回復して祐人を探し始めたのだが一向に見つからなかった。
あの後、全員が怯んでいる間に祐人はその場から離脱したのだが、全員からすれば憧れの生徒会長を襲った犯罪者。それに制裁を加えるため―――と同時に一夏との同室券を持っている祐人を探していたのだが、誰も見つけられていなかった。
「ここにいたのか」
凰の後ろから1組の男子二人を除く専用機持ちがそれぞれ武器を調達し直して現れた。
「な、なによ! アタシは―――」
「安心しろ。私たちはお前と同盟を組みに来た。共に一夏と同室になるチケットを風宮から奪うためにな」
箒の提案に鈴音は即座に拒否する。
「悪いけどお断りよ! アイツはアタシ一人で倒してやるわ!」
「それが難しいから鈴を探していたんだよ?」
「そうですわ。それに鈴さん一人ではまず無理だと思いますわよ。さっきも倒されていましたし」
「あの男を屈服させるには教官を倒せるくらいの陣形を組まなければならん」
それをシャルロット、セシリア、ラウラが否定し、鈴音は唖然とした。
「さっきのは油断しただけよ!」
「いや、その思考は捨てろ」
「なによ! 相手は男一人よ!」
「そうか。なら貴様は血液が満足にない状態ですら壁を壊せる力―――もしくはそれを行うことができる武器を持っている相手に生身で勝てると言うのだな」
ラウラの発言に鈴音はまさかという顔をするが、誰一人としてそれを否定しない。
「……マジで?」
「これは機密事項となっているから他言無用だがな。相手は知っているだけ得をする。私自身、よく死んでないなと思えるほどだ。それにお前はあの女と風宮の関係を誤解しただろう? よく気絶だけで済んだな」
「………」
ラウラはしれっと言うが、鈴音は顔を引つらせた。
そしてすぐに冷静になった鈴音は同盟を組むことを宣言してある提案をする。
「じゃ、じゃあ、あの日本の代表候補生を人質にするってのは?」
「無理だ(ですわね)(だね)(だな)」
その提案を箒、セシリア、シャルロット、ラウラは却下した。
「どうしてよ」
「仮にそうした場合、布仏が「骨を全部粉々に砕くまでISで踏みつけられるよ~」と言っていた」
箒がそう言うと鈴音が唖然とする。
「それに何か言いたい気持ちはわからなくもないですが」
「実際に彼がキレて壁が吹き飛んだ瞬間を見た僕らは肯定するしかないんだよねぇ」
「それにどこか姉さん―――」
―――ブルルルル
急に箒の携帯電話が震え出し、それが着信だとわかった箒は電話に出る。相手は祐人だ。
「どうした風宮」
『篠ノ之さぁ、今お前の姉と俺を同列に扱おうとしなかったか?』
それが聞こえていたのか、その場にいた全員が沈黙した。
「……気のせいだ」
『そうか。お前にこれを言うのは間違っていると思うが、お前の姉と同列に扱うな。じゃあな』
そう言って祐人は電話を切った。
後に彼女は「その声は千冬さんが一夏を叱るときの目を連想させる」と語った。
「……恐るべき直感力ですわね」
「そうだな」
この時、ここにいた全員が戦慄したのは言うまでもない。
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