インフィニット・ストラトス~黒き守護者~
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痴女と酒酔い
「あの……これはどういうことでしょうか?」
俺は今、山田先生にのしかかられている。凄いぜ! 姉妹を合わせれば三人目だやっほー!―――なんて言えるわけがない。
「先生は怒っているんですからね!」
山田先生は頬を膨らませていた。
今日は日曜だったらしく、先生たちも交代で業務に当たっているらしい。
「起きてきて早々悪いが―――って、山田先生……」
「こうでもしないと風宮君はその名の通り逃げるでしょう?」
だからと言ってのしかかる………あ、こう言えばいいか。
「山田先生、いい加減にしないと襲いますよ」
「それは困りますね……色々と……」
顔を赤くしながら離れていった。
「……それで先生、懲罰メニューというものを受け取りに来ましたけど」
「今回はそれについては特に被害がなかったということで見送りになった。いくら勝手な判断とはいえ、な」
それは納得いかないといった感じだろう。まぁ、命令無視しているし裏で何かあったと思えばいいか。
「そういえば、一夏はどうしてます?」
自分が専用機が戻ってきて喜んでいるだろう能天気のことを尋ねる。
「ああ、至って普通だな。まるであんな事件がなかったかのようにな」
あいつ、もうちょっと危機感を持って欲しいんだけど。
「お前の言いたいこともわからなくはないが、周りのことを考えると言わないほうがいいと思ってな」
どうやら俺の思考を読んだらしく、織斑先生がそのように言った。
「ですが、そんな悠長に言えることもなくなってきましたよ」
一夏を狙う組織までもが出てきた。予想は出来ていたが、本人がいつもの調子だと意味がない。楯無にもう少しキツくしてもらうか。
「それと風宮、お前はどこまで記憶が戻っている?」
「少なくともある程度は。それとも聞きたいのはシヴァについてですか?」
「ああ。あいつはただの人間ではないだろう?」
「その答えにはyesだけ答えましょう。それでは」
それだけ言って俺は寮監室から出た。
―――ぐ~~
そういえば、ここ一週間はまともに口に入れてないな。何か食べに行くか。
■■■
食堂に着くと、一夏たちいつものメンバーが騒いでいた。
俺はそれを無視して購買で売っているおにぎりをいくつかって自分の部屋に戻る。
「………」
そこでは何故か楯無がいて、浴衣を着ている最中だった。
俺はすぐにドアを締めて部屋番号を確かめる。うん。間違っていない。そして今の半裸は自業自得だ。
そう結論付けて俺は再度ドアを開けると、そこにはまだ着替え中の楯無がいた。さっきより酷く下着が丸見えだがどうでもよかった。
いつも通りにテレビを点けてアニメを見ていると、
「何か、コメントは……?」
「自分の部屋で着替えろよ」
「あれ? そこは普通「俺を誘ってんの?」とか言わないの!?」
「お前が痴女なのは既に知っているからな」
楯無は泣き出したので俺はテレビを消した。
「さっきからうるさいんだけど。そんなに一夏を誘惑したいのならしに行けばいいだろ」
「実は今回はちょっと事情が違うんだなぁ~」
ニヤニヤしながら俺に接近してくる楯無に、俺は困惑どころかため息しか出てこない。
「………どうせなら、簪さんの浴衣・上目遣いのコンボが良か―――」
―――ヒュッ
俺の横に剣が通過した。
楯無の瞳に光はなく、ISを部分展開して蛇腹剣《ラスティー・ネイル》が握られている。
「どういう意味かしら?」
「そのままの意味だ。簪さんの浴衣姿は―――」
「待って! 簪ちゃんの浴衣姿を見たことあるの!?」
「ああ。夏休みに絡まれているのを見て理不尽な喧嘩に巻き込まれていたから」
「……………」
楯無は絶句していた。
「あれ? どうした?」
「……ううん。………今は外に誰もいないわよね?」
「ああ。特に気配は感じないが」
「………実はね、更職家っていうのは―――」
そして聞かされたのは更職家が暗部の組織だということで、あの時は謀反が起きて簪さんと本音が狙われていたということらしい。
「なるほど。俺があそこにいたのはタイミングが良かったってことか」
「そういうことよ」
「なるほどな。敵もそれなりには訓練されていたわけか」
「え? それなりって……?」
「いや、勝つことには何の苦労もなかったからさ」
そう答えると楯無は複雑そうな顔をした。
「んで、それはともかく―――いつまでISを展開しているつもりだテメェ」
―――ミシミシ
「あ、痛ッ! でも、これが癖になるぅ!」
「だってさ、簪さん」
と、いつの間にか後ろにいた簪さんに振る。
「………え?」
「風宮君、私のことは簪でいいよ」
「じゃあ、俺のことも祐人って呼んでくれ」
「うん!」
いつもみたいにおどおどせず、今はすごくテンションが高かった。
そして足元には―――ウイスキー・ボンボンが落ちていた。
「あ、これはヤバいかも」
そう口にしたとき、酔った簪が楯無に近づいて、
「どういうことかな、お姉ちゃん。また祐人を誘惑しようとしたの? そして夫にして強い子孫を残そうとしたの? それとも―――祐人としたかったの?」
「ちょっ、簪ちゃん! 落ち着いて!」
「この胸? この胸で祐人を誘惑しようとしたの? そんなに私との差を見せつけて楽しいの?」
「祐人君! どうにかしてぇ!」
「あ、いや………」
さすがに今のは無理というか………
「いいもん、いいもん! 祐人がお姉ちゃんと結婚してもいいんだもん! 上目遣いで逆に襲えばいいんだもん!!」
中からオレンジジュースを出してコップに注ぎ、それを簪に渡す。
「簪」
「あ、ありがとう」
そして簪は飲んで―――倒れそうになったところで俺は受け止めた。
「……何したの?」
「睡眠薬。そっちの方がてっとり早いと思ってな。………さすがに今日ばかりは容認してくれ」
「……うん。今回ばかりは仕方ないね」
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