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『もしも門が1941年の大日本帝国に開いたら……』

作者:零戦
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第六話

 
前書き
ハルバートを持つ死神が登場です。
盗賊に犯される母娘を救ってみました。 

 



 伊丹大尉の第三偵察隊が駐屯地を出て二日後、第三偵察隊から緊急連絡があった。

「ドラゴン……龍が目的地の森を焼いているだと?(龍って火を吐いたか?)」

 檜垣中佐は報告を聞いて唸った。

「(……異世界だから覚悟していたが……まさか龍が出るとはな……)……取りあえず応援を送るか。伊丹が何をするか分からんからな。それに報告だとエルフを保護しているし、無駄に死なせるわけにはいかんな」

 檜垣中佐は溜め息を吐いて人選をする。ちなみに第三偵察隊は炎龍が破壊した村で生き残りであるエルフの女の子を保護していた。

「待てよ……確か陸戦隊の摂津中尉はヒルデガルド王女の面倒を見ていたな。道案内をしてくれるかもしれんな。太田大佐に具申してみるか」

 檜垣中佐はそう呟き、伝令を呼んだ。




「何か伊丹少佐に予言されたみたいで怖いなおい……」

 樹はそう呟いて九四式六輪自動貨車に乗り込む。

「まぁ特地を行けるんですからいいじゃないですか」

「そうですよ」

 水野と片瀬はそう頷く。

「こんな物が動くのか?」

 道案内人をする事になったヒルデガルドが九四式六輪自動貨車を見ながら呟いた。

「……いいか。んじゃあ出発や」

「了解っす」

 片瀬が運転する九四式六輪自動貨車は走り出した。

「オォッ!? 動いたッ!! 動いたぞッ!!」

 ヒルデガルドは子どものように目を輝かせてはしゃいでいる。

「ちょっと黙っとれヒルデガルド。それで水野、応援は他にはいるのか?」

「外の門で準備しているようです」

「それならいいか。流石に俺らだけで行くのは死にに行くようなものだ」

 樹はそう言った。

「それで中尉、自分らが目指すのはコダ村でいいんですよね?」

 運転している片瀬が樹に聞いてきた。

「あぁ、伊丹大尉の第三偵察隊はコダ村を経由して目的地の森へ向かったらしいからな。俺達はコダ村付近まで行って第三偵察隊と合流予定や」

 樹は片瀬にそう説明する。

「それにしてもドラゴンだろ? やはり装甲は硬いんすかね?」

「可能性は十分あるやろな」

 片瀬の指摘に樹はそう言った。

「いざとなったら肉薄してアンパンでやらないとあかんかもな」

「……それは嫌ですよ」

 摂津の言葉に片瀬はそう言った。ちなみにアンパンとは九九式破甲爆雷の事である。

「それじゃぁ出発するか」

 集合した防御陣地の門には九四式六輪自動貨車が三台いた。その三台には陸軍の九八式二十ミリ高射機関砲を荷台に設置したのが二台、四一式山砲を載せたのが一台いた。

「四一式はドラゴン……じゃなくて龍対策ですかね」

「だろうな」

「……暗くなりますね」

 空は既に闇に包まれようとしていた。

「連絡が来るのが遅かったからな」

 樹は知らなかった。

 あの死神と出会うのが夜中だという事を……。


「それと私はヒルダで構わないぞ。国の皆もそう言ってたからな」

「そうか、ならヒルダと呼ぶからな」


 コダ村の住人が集団で逃げ出す一日前に、三人の家族がコダ村から逃げ出していた。

 三人だけでは危険だとコダ村の村長達は言っていたが、夫はそれを聞かずに妻と娘を連れて一足早くにコダ村から逃げ出した。

 しかしそれは間違った判断であり逃げ出してから二日目の夜に十数人の盗賊に襲われた。

 夫は首をはねられて即死して、妻と娘は今まさに盗賊達に奪われようとしていた。

「お頭ぁ。これは中々の上物ですぜ」

 したっぱの盗賊が捕らえた妻と娘を見て盗賊のお頭に言う。

「まぁ待てお前ら。最初は俺からだぜ」

 お頭は震える妻と娘を見ながらニヤリと笑う。

「母さん……!!」

「エミリア……」

 妻と娘は身体を抱きしめる。

ブオォォォォォンッ!!

「あん?」

 その時、何かの音が聞こえた。

「な、何だありゃッ!?」

 盗賊のしたっぱが声をあげた。南西の方向から光が近づいてきたのである。

「お、落ち着け野郎どもッ!!」

 ざわめくしたっぱ達に盗賊のお頭は落ち着かせようとするが光はドンドンと近づき、盗賊達を引いたのである。

「ぐぎゃッ!!」

「グアッ!?」

 光は物体であった。

「な、何だこりゃッ!!」

 盗賊のお頭がそう叫んだ時、物体の扉が開きタンと盗賊のお頭の頭を撃ち抜いたのである。

「水野ッ!! 凪払えッ!!」

「了解ですッ!!」

 樹が叫び、荷台にいた水野兵曹長が九九式軽機関銃の引き金を引いて盗賊を掃射していく。九九式軽機関銃の七.七ミリ弾は盗賊達の鎧を貫き、次々と倒れていく。

「おのれ盗賊どもめッ!! か弱き女を犯そうとしやがってッ!!」

 ヒルデガルド――ヒルダが剣を抜いて逃げようとする盗賊の後ろから斬りつけている。

 摂津中尉が盗賊に強襲してから五分が経つと、盗賊達は全て地面に倒れていた。

「……作戦終了やな……」

 樹は目を凝らして辺りを見ていたが作戦終了を告げた。

 樹は目を凝らして辺りを見ていたが作戦終了を告げた。

「大丈夫ですかッ!?」

 車上にいた水野兵曹長が荷台から降りて妻と娘に問う。

「は、はい」

 妻は物体から人間が降りてきた事に驚きつつも頷いた。

「中尉、もう一人は……」

「……あかん。もう亡くなっている」

 倒れていた夫の様子を見ていた樹は首を横に振った。

「あなたッ!!」

「父さんッ!!」

 亡くなった夫に妻と娘が抱きつき、涙を流す。樹達は気まずい雰囲気にどうしようとなかった。

 だが水野兵曹長は鉄帽で目元を隠して二人に近づいた。

「……奥さん、旦那さんの墓を作りましょう」

「……はい」

 涙を流して妻は水野兵曹長の言葉に頷いて夫から離れた。娘はまだしがみついていたが妻が「離れなさい」と言うと渋々と頷いて夫から離れた。

「穴掘るぞ。片瀬、シャベル持ってこい」

 樹は運転席にいた片瀬に指示を出す。

 そして樹達は亡くなった夫のために墓を作ったのである。

「黙祷……」

 樹の言葉に水野兵曹長達は手を合わせる。妻と娘は片膝を地面につけて夫の冥福を祈った。

「私もぉ祈っていいかしらぁ?」

 その時、樹の後ろから声がした。樹が振り返るとそこには黒いゴスロリの服を着た少女がいた。右手には少女には重すぎるハルバートを持っている。

「ロ、ロゥリィ・マーキュリーッ!!」

 少女を見たヒルダが叫んだのであった。






 
 

 
後書き
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