大阪の病院の幽霊
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第六章
「幽霊はね」
「いますね」
「そうだよ、ずっとね」
「昔も今も」
「これからもね」
「人がこの世にいるなら」
「そうだよ、この二人もこうしてね」
今も漫才の練習をしている二人を見て話した。
「ずっとね」
「漫才をしていますね」
「幽霊になっても。テレビに出ている今の芸人さん達も」
「観て欲しいですね」
「お笑いの本質も変わらないんだよ」
昔も今もというのだ。
「笑わせるだよ」
「観る人を」
「有名になって儲けるんじゃなくてね」
「笑わせるですね」
「笑わせたらね」
そうすればというのだ。
「有名になれるしね」
「お金もですね」
「自然と入るんだよ」
「後から来ますね」
「その後から来るものをね」
それをというのだ。
「最初からね」
「観てですね」
「そればかりになるとね」
それならというのだ。
「面白くないんだよ」
「笑わせるつもりがないから」
「だからだよ」
そうであるからだというのだ。
「本当にね」
「今の人達は面白くなくて」
「テレビも観ないんだよ」
「皆ですね」
「だからね」
それでというのだ。
「変わるものは変わるけれど」
「変わらないものもある」
「そうしたことをわかっていきたいね」
「そういうことですね」
「全く。今の芸人の子達に見て欲しいよ」
老婆は心から思った。
「この二人をね」
「幽霊になっても笑わせようと漫才をしている」
「それで多分天国に行ったらね」
「その時はですね」
「テ国の人達を笑わせてるよ」
そうだというのだ。
「絶対にね」
「お二人はそれぞれこの病院でお亡くなりになっていますが」
「それも縁だね」
「そして今もお二人で漫才をしておられる」
「練習もしてね」
「それで天国に行ったら」
「笑わせてるんだよ、こうしたものを見て欲しいよ」
テレビに出ている芸人達にとだ、こう言ってだった。
老婆は退院した、そしてネットでのやり取りをする様になった由希にユーチューブでどの芸人が面白いかを紹介する様になった。テレビの芸人達のことは語らないが。
大阪の病院の幽霊 完
2025・7・30
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