レトロ感覚
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第二章
「これだね」
「そうですね、そっちもです」
「いいんだね」
「はい」
敢えて暗くされた木造のものも入った店の中でだ、長倉は答えた。
「僕も飲みましたから」
「それじゃあね」
「カウンターでいいですね」
「うん、飲もう」
「コーヒーを」
二人で話してそうしてだった。
二人でカウンターに並んで座った、そうしてコーヒーを注文したが味は。
「いいね」
「そうでした」
「しっかりと作ってるね」
「豆から。お砂糖もです」
「ちゃんとしたものでね」
「凝ってますよ」
「確かに。メニューの書き方も」
オーダー表を見て話した。
「昔の。一九二〇年代のだよ」
「アメリカですね」
「日本語の訳も入っているけれど」
それでもというのだ。
「そうなっていてね」
「風情がありますね」
「うん、これはね」
まさにというのだ。
「わかっている」
「そうしたお店ですね」
「曲のオーダーは出来るから」
「出来ますよ、こちらに」
長倉は店で演奏出来る曲のオーダーを出した、昭和の百貨店の屋上であった百円で曲がかかる場所と同じ様だった。
「それもレコードで」
「また凝ってるな」
「レコードってところが」
「それがいいよ、ではね」
「音楽もですね」
「注文するよ」
「そうしたらいいです、僕はたまたまです」
長倉は自分のことをコーヒーを手に話した。
「大学の頃ジャズを聴いて」
「好きになったんだね」
「それ以来ですが」
「私もだよ、大学の頃にたまたま」
「聴いて」
「好きになってね、この雰囲気もね」
昔のジャズの雰囲気で満ちた店の中で話した。
「好きですね」
「それで、ですね」
「本当にね」
実際にというのだ。
「だからこうしてだよ」
「僕が紹介したお店にですか」
「来てみたんだ、じゃあ注文しよう」
「音楽も」
「そうしよう」
笑顔で言って実際にだった。
前川は曲も注文した、そして二人で音楽も楽しんだ。生演奏も行われ前川は心から楽しんだ。その中で。
「おや」
「何か」
「いや、あのポスターは」
カウンターに座る自分達の前にあるそれを見て言った。
「モンローだね」
「マリリン=モンローですね」
「時代が違うね」
「モンローは戦後ですからね」
「うん、一九二〇年代じゃないよ」
その色気漂う美女を見つつ話した。
「彼女はね」
「そうですね」
「もっと言えばジャズともね」
「離れていますね」
「うん、けれど」
そのモンロー、モノクロの彼女を見つつ話した。
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