サルエスラ
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第一章
サルエスラ
スペインに行きたい、その風景と食べものとフラメンコとワインそれに闘牛にサッカーを楽しみたいと思ってだった。
ドイツで鉄道会社で駅員をしているハンス=クロック一八〇以上の背でやや太った金髪を後ろで撫でつけ青い目を持つ彫のある顔の彼はこの国に来た、それでガイドのエルシド=コステロ黒い癖のある髪に浅黒い肌に黒い目を持つ面長で一七〇位の背の痩せた彼に言った。
「兎に角明るく楽しく賑やかな」
「そうしたものをご覧になられたいですね」
「如何にもスペインという様な」
コステロに真顔で話した。
「そうしたものをです」
「ご覧になられたいですね」
「飲んで食べて」
そうもしてというのだ。
「スペインを満喫したいです」
「それではです」
コステロはクロックの話を聞いて流暢なドイツ語で応えた。
「そうした場所にです」
「案内してくれますか」
「はい」
笑顔で答えた。
「今回のツアーでは。他の参加者の方々も言っておられますし」
「如何にもですね」
「スペインという場所に行って観て」
そうしてというのだ。
「飲んで食べてです」
「楽しみたいとですね」
「言われていてそうしたツアーですので」
「お願い出来ますか」
「はい」
明るい笑顔での返事だった。
「それでは」
「ではお願いします」
クロックは微笑んで応えた、そしてだった。
闘牛を観て有名な観光名所を案内してもらい明るい日差しを楽しんだ、そして夜はカルパッチョにパエリアにガスパチョにだった。
イベリコ豚のオニオンソースで味付けしたステーキを食べてだった、クロックはコステロに赤ワインを飲みつつ言った。
「一日に五回も食べて」
「お腹一杯ですね」
「そうなりました、それに」
レストランの舞台で行われているフラメンコを観て言った。
「音楽もいいですね」
「如何にもスペインですね」
「まるで」
クロックは微笑んで言った。
「カルメンですね」
「あの歌劇ですね」
「あの作品のなかにいる様です」
「闘牛もご覧になられて」
「そのこともありまして」
実際にというのだ。
「そう感じています」
「まだこれからですよ」
コステロはクロックに赤ワインスペイン産のそれを飲みつつ話した。
「これからです」
「舞台に行くんですよね」
「サルエスラを」
それをというのだ。
「観に行きましょう」
「サルエスラですか」
クロックはその劇について述べた。
「聞いたことはありますが」
「言うならスペイン語の歌劇です」
コステロは笑って話した。
「そうなります」
「そうですね」
「いいものですよ」
笑ったままこうも言った。
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