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西遊記

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第十二回 玄奘西方に旅立つのことその九

「この環をどうぞ」
「三つありますね」
「どう用いるかはその時にお話します」
「必要となった時に」
「おそらく頻繁に用いねばならぬ御仁もいるでしょう」
「頻繁に?それに御仁とは」
「それもおいおい」
 その時にというのです。
「お話させてもらいます」
「そうですか」
「錫杖と袈裟とです」
「この三つの環をですね」
「お渡ししましたので」
 それでというのです。
「後は山あり谷ありになりますが必ずです」
「拙僧はこちらに戻れますか」
「はい」
 間違いなくというのです。
「洪福寺の山門の奥の松が東を向けば」
「あの松が」
「その時がです」
 まさにというのです。
「玄奘殿がこの国に戻られる時です」
「ではその松がそうなれば」
 魏徴が応えました。
「私達は」
「お迎えの準備をして下さい」
「それでは」
「その時は必ず来ますので」
「玄奘殿は必ず戻って来る」
「そうですので」
 菩薩は断言しました。
「ご安心下さい」
「その時が来るからですね」
「左様です」
「それは何より、ではです」
「朝廷はですね」
「待ちます」
 そうするとです、皇帝が答えました。
「是非共」
「そうして下さいますか」
「無論、そして玄奘殿」
 皇帝は玄奘に微笑んで告げました。
「それでなのですが」
「それでとは」
「はい、これからは他人行儀でなく」
 微笑んだまま言うのでした。
「兄弟となりましょうぞ」
「何と、万歳老と義兄弟ですか」
 玄奘は皇帝の申し出を理解して仰天して言いました。
「何と恐れ多い」
「いえ、こちらこそ」
 皇帝の方こそ畏まって言います。
「玄奘殿程の高僧とです」
「義兄弟になるならですか」
「身に余る光栄」 
 そうだというのです。
「前世は相当な方でしょうし」
「前にもお話したかも知れません、いや他の方だったが」
「そこは少し曖昧ですか」
「長い間何かとお話していることなので」
 それ故にというのです。
「多くの人に」
「朕にもですか」
「お話していなかったかも。ならここで」
「お話して下さいますか」
「皇帝陛下にも。実はです」
 皇帝にそっとお話します。
「玄奘殿の前世は釈尊の二番弟子でして」
「そうなのですか」
「元々です」
「非常に徳と学識のあるですか」
「そうした方でして」
 それでというのだ。 
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