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西遊記

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第十二回 玄奘西方に旅立つのことその七

 菩薩は二太子と共に雲に乗って宙に上がり金色の光を讃えたまま姿を消しました、そこにいる人々は誰もが南無観世音菩薩と何度も唱えました。
 そして菩薩と二太子が去ってからです、皇帝は言いました。
「それでだが」
「はい、西方に行き」
 魏徴がすぐに応えました。
「そのうえで、ですね」
「経典を譲り受ける者はいるか」
「お願いします」
 すぐにです、玄奘が皇帝の前に跪いて申し出ました。
「拙僧を行かせて下さい」
「玄奘殿がか」
「はい」
 是非にという口調でした。
「お願いします」
「そして天竺まで」
「行きます」
「天竺までは遠いですぞ」
 皇帝は玄奘にこのことを告げました。
「十万八千里もあり」
「承知の上です」
「その道中危険も多いが」
「何でもです」
 魏徴も言ってきました。
「魔王とその臣下の達も多いとか」
「天竺までの道にか」
「そう聞いています」
「そうなのか、ではだ」
 皇帝は魏徴のお話を聞いて言いました。
「軍を以てだ」
「玄奘殿の護衛としますか」
「そうするか」
「それがいいかと」
 魏徴は皇帝の言葉に頷いて答えました。
「玄奘殿のことを考えますと」
「そうするか」
「いえ」
 ですがここで現所が言ってきました。
「それには及びません」
「まさかと思うが」
「はい、私は一人で行きます」
 皇帝に毅然として答えます。
「そうします」
「賊どころか魔王が多くいてもか」
「御仏のご加護がありますので」
「菩薩様のか」
「それを信じ」
 そうしてというのです。
「大雷音寺まで参り」
「三蔵を持って帰るか」
「そうします」
「だが危うい」
 皇帝は玄奘の決意を聞いても惑いと迷いを見せて答えました、それは玄奘の身のことを気にかけてのことです。
「長い旅になるしのう」
「いえ、軍なぞとんでもない」
「そのことですが」
 ここでまた菩薩がこっそり出てきてそっと言いました。
「人の旅ではないので」
「だからですか」
「人がついても意味がありません」
 そうだというのです。
「運命の旅ですので」
「では軍は不要ですか」
「むしろ魔王の軍に散々に敗れ異国で命を落とし」
 軍の将兵の人達がというのです。
「無駄に犠牲を出すだけです」
「そうなりますか」
「そしてです」
 そうなりというのです。 
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