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ドリトル先生とサーカスの象

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第六幕その五

「ケニーだってね」
「幸せになるべきだったね」
「あんな酷い一生じゃなくて」
「それで今生まれ変わっていたら」
「今度こそね」
「幸せになるべきよ」
「絶対にね、道具と言ったけれど」
 それでもと言う先生でした。
「道具にだって心があるからね」
「だから粗末に扱わない」
「心ある人はそうするし」
「象だってね」
「大事にしないとね」
「どんな命もね」
 先生は心から思って言いました、そしてです。
 そのうえで、です。研究室に戻ってまた象の論文を書きますが家族のその絆を思ってそうして言うのでした。
「象の家族愛、仲間への意識はね」
「凄く強いよね」
「家族思いで仲間思い」
「そうした生きものだよね」
「心優しい」
「そうなんだ、だからね」 
 それでというのです。
「引き離すだけでもね」
「酷いことだね」
「ケニーみたいに」
「そんなことをしたら駄目だね」
「家族思いということからも」
「そうだよ、ケニーのお母さんもね」
 その象もというのです。
「悲しかったよ」
「絶対にね」
「そうだったよね」
「子供さんと引き離されて」
「そうなって」
「ずっと心配だった筈だよ」 
 ケニーのお母さん象はというのです。
「ケニーがどうなったか」
「それでどうなったか知ったら」
「とても悲しかっただろうね」
「辛かっただろうね」
「あんな酷いことになって」
「その筈だよ」
 本当にというのです。
「ケニーのことを知ったかどうかわからないけれど」
「知ってたかもね」
「やっぱりね」
「あんな酷いことになったって」
「そうね」
「そうだったかもね、そしてね」
 それでというのです。
「とても辛かったんじゃないかな」
「そうだよね」
「引き離されて虐待されて」
「道具として扱われて」
「弱っていたのにショーをさせられて」
「それで死んだんだから」
「僅か三歳でね」
 赤ちゃんだったというのにというのです。
「そうだったからね」
「僕達でも悲しく思ってるし」
「お母さんならもっとだよね」
「まして象は家族思いだから」
「そんな生きものだから」
「尚更だよ、本当に酷いお話だよ」
 先生は心から言いました。
「象の家族愛の強さから見てもね」
「大体象って三歳だとまだ赤ちゃんで」
「お母さんに甘えたい年頃で」
「お母さんだって大事にしたかったのに」
「まだまだ一緒に痛かったのに」
「ケニーも酷いことになってお母さんも辛い思いをして」
 そうであってというのです。 
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