ドリトル先生とサーカスの象
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第五幕その七
「カブトムシ、コオロギ、アリ、バッタと色々ですが」
「訳してもいますか」
「そして辞典も作っています」
「それぞれの虫の言葉も」
「日本では秋に虫達が鳴きますね」
「はい、いいものですよね」
団長さんは笑顔で答えました。
「あの声は」
「実はです」
「実は?」
「僕は最初そうは思えなかったのです」
先生は真面目にお話しました。
「あの音色が素晴らしいものだと」
「そういえば」
団長さんも言われてはっとなりました。
「日本人とギリシャ人以外は」
「そうです、ああした虫の音色を聴きましても」
「音楽とは思えず」
「雑音としかです」
「思えないですね」
「そのことはお聞きになったことがありますね」
「学生時代に」
その時にというのです。
「聞きました」
「八条学園におられたので」
「今我々がいる八条学園は世界中から人が集まってきます」
団長さんはこのことをお話しました。
「ですから」
「世界中の人の考えや嗜好も聞けますね」
「それで聞きました」
「虫の音色はです」
「日本人とギリシャ人以外は素敵な音楽に聴こえず」
「雑音に聞こえます」
「そうですね」
団長さんは先生に答えました。
「これが」
「それで僕もです」
「最初は雑音でしたか」
「ですか彼等の言葉を学んでいるうちに」
そうしているうちにというのです。
「素敵な音楽とです」
「感じる様になりましたか」
「そうです」
こう団長さんに答えました。
「今は」
「そうですか」
「そして日本に来て」
そうしてというのです。
「日本に親しみまして」
「秋に彼等の音色を聴いて」
「本格的にです」
「音楽だと感じる様になりましたか」
「若し虫達の言葉を学ばず日本に来なければ」
そうすればというのです。
「とてもです」
「音楽とはですね」
「思いませんでした、それで言葉がわかる虫達もいますので」
それでというのです。
「会話も出来ます」
「それでは情報収集も楽ですね」
「そうですね、ですが個人情報に興味はありません」
先生はこのことをきっぱりと断りました。
「人のプライベートは侵害しない」
「立ち入らないことですね」
「個人情報もです」
「そうなのですね」
「それが紳士としてです」
「あるべき姿ですね」
「そう考えていますので」
だからだというのです、先生は団長さんに温和ですが確かな表情と声でこのことをお話していくのでした。
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