金木犀の許嫁
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第七十二話 また来る時までその一
第七十二話 また来る時まで
白華と豊のお見合いが終わり夜空達は伊賀を後にすることになった、日程は予定通りであり夜空は真昼に神戸に戻る日に行った。
「じゃあまた電車に乗って」
「それで神戸まで帰るわ」
「そうよね、神戸から伊賀に行くにも」
「旅行よね」
「そうよね」
姉にまさにと答えた。
「行ってみると」
「実感したわね」
「ええ、そう簡単には行き来出来ないわね」
「昔はもっと凄かったよ」
佐京がここで夜空に言ってきた。
「電車は通っていないしね」
「自動車もないし」
「だからね」
「大変だったわね」
「伊賀は山に囲まれてるし」
このこともあってというのだ。
「かなりね」
「大変だったわね」
「そうだよ」
こう話した。
「やっぱりね」
「昔はね、ただいい場所だよね」
「ええ」
笑顔でだ、夜空は佐京に答えた。
「よかったわ」
「そうだよね」
「来年もお邪魔するのよね」
「母方のお祖母ちゃんがいるから」
「だからなのね」
「白華のことがなくても」
それでもというのだ。
「毎年ね」
「こちらにお邪魔するわね」
「そうなるよ」
「じゃあまた来年」
「お邪魔させてもらいましょう」
「そうしようね」
「それじゃあ」
「かつては敵の本拠地が実家になるなんてね」
真昼はにこりと笑って話した。
「面白いわね」
「はい、ですが思えば」
幸雄はその真昼に話した。
「後藤又兵衛さんは大坂の陣の後一時大宇陀に逃れていました」
「幸村さんと合流するまで」
「奈良のあの場所に」
「宇陀市ですね」
「あちらは伊賀にわりかし近いですから」
「敵地の傍にですか」
「一時とはいえ身を隠していました」
そうだったというのだ。
「今思えば大胆ですね」
「そうですね」
真昼も確かにと頷いた。
「言われてみますと」
「幾ら当時は交通の便が不便で」
「伊賀と大和もそれなりの距離がありましたね」
「しかも奈良県、大和といえば柳生家です」
「柳生十兵衛さんの」
「幕府の武芸指南役のお家ですね」
真昼は幸雄に応えた。
「そうでしたね」
「そうです」
幸雄はその通りだと答えた。
「その柳生家の本拠地です」
「あちらもありますね」
「宇陀と柳生も離れていますが」
「同じ国の中なので」
「見付かれば危うかったです」
そうだったというのだ。
「公には大坂の陣で討ち死にしたとなっていましたが」
「八尾の方で戦っていて」
「実は一旦落ち延びていて」
「後で薩摩の方に落ち延びたんですね」
「密かに」
「それで余生を薩摩で過ごしましたね」
「幸村公、十勇士の方々と共に」
幸雄は真昼に話した。
ページ上へ戻る