ドリトル先生とサーカスの象
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第四幕その九
「慰霊碑があったね」
「うん、僕達も見たよ」
ホワイティが最初に応えました。
「先生と一緒に何度か行ってるけれど」
「その都度見ているね」
トートーも言います。
「あの慰霊碑は」
「いつも黙祷してるね」
老馬はそうしている時を思い出します。
「そうだね」
「どうしてあの慰霊碑があるか」
「あの戦争で死なせるしかなかったんだよね、皆」
オシツオサレツは二つの頭を項垂れさせて言いました。
「東京の上野動物園もそうで」
「大阪の天王寺動物園でもね」
「戦わないといけない時はあっても」
それでもとです、ダブダブも項垂れて言います。
「犠牲になるのは悲しいわね」
「けれど犠牲になった命のことは忘れない」
「そうしないと駄目よ」
チープサイドの家族も言います。
「それであの慰霊碑があって」
「ずっと鎮魂されているんだね」
「そして忘れられない様にしているんだね」
チーチーもいつもの明るさはありません。
「犠牲になった命のことを」
「そして戦争の悲しさと平和の有難さ」
ガブガブも今は悲しいお顔です。
「そうしたことも伝えているんだね」
「団長さんもわかっているんだね」
ジップはサーカスの団長さんのことをお話しました。
「平和の素晴らしさ、戦争の悲しさを」
「そうしたことからもわかるわね」
ポリネシアも団長さんのことを思いました。
「あの人は確かな人よ」
「そうだよ、あの人は確かな人だよ」
先生もそうだと言います。
「お話してもわかるし」
「あの子を太郎って名付けたことからもわかるね」
「心ある人だよ」
「確かにね」
「若しもウクライナみたいな状況になったら」
先生はこの国のお話をしました。
「もう何があってもね」
「戦うしかないね」
「あんな状況になったら」
「もうね」
「それしかないね」
「そう、けれどね」
それでもというのです。
「犠牲になる命のことは忘れないで」
「そして悼む」
「そうした気持ちもないとね」
「とても駄目だね」
「何かあると戦争だ皆殺しだと言う人は」
そうした人はといいますと。
「間違いなくね」
「そうしたことがわかっていないね」
「考えもしていないね」
「戦争がどんなものか」
「どれだけの命が犠牲になるか」
「わかっていないよ、まして自分は安全な場所にいて」
そうであってというのです。
「日本だと自衛隊にも所属していていない」
「実際に戦わない」
「そんな人が戦争しろとか言ってね」
「命を粗末にする様だとね」
「間違ってるよね」
「そう、間違っているよ」
先生は断言しました。
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