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ドリトル先生とサーカスの象

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第四幕その八

「太郎と名付けたらしいよ」
「そうなんだ」
「うん、太郎も他の子もね」
「死んだんだね」
「死なせられたよ、仕方なくね」
「戦争だったから」
「死なせる方もとても辛かったけれど」
 それでもというのです。
「食べものがなかったから」
「どうしようもなかったんだね」
「あの戦争は日本はせざるを得なかったけれどね」
「そうなんだ」
「さもないと日本はどうなっていたかわからないし」
 それにというのです。
「避けようとしても避けられない」
「そんな状況だったんだ」
「だからね」
 それでというのです。
「戦争になったけれど」
「もう二度とだね」
「戦争になって」
 そしてというのです。
「あの象達、他の生きもの達の様にね」
「死なせられる生きもの達がいない様に」
「団長さんは名付けたんだよ」
「そうだったんだ」
「平和はね」
 それはというのです。
「何があっても守らないといけないよ」
「先生達が守るのかな」
「日本のね。僕は日本人になったからね」
「日本の平和を守るんだね」
「日本人皆が努力してね、そしてね」
「僕は平和に生きて」
「幸せになるんだ、その願いを込めてね」
 そうしてというのです。
「君は名付けられたんだよ」
「そうだったんだ」
「平和は何よりも尊いよ」
 先生は心から言いました。
「僕も団長さんも思うことだから」
「じゃあこの名前をだね」
「好きならね」
「ずっと好きでいてね」
「そうしてね」 
 太郎に笑顔で言いました、そのお話の後でこの時も一緒にいた皆は先生にしんみりとして言いました。
「第二次世界大戦のことは忘れられないね」
「忘れたら駄目だね」
「大勢の人が犠牲になって」
「イギリスもそうで」
「日本もだしね」
「そしてね」
 先生はキャンバスの中を歩いて研究室に戻る中で言いました。
「人間だけじゃなくてね」
「生きものもだね」
「大勢犠牲になってるよね」
「あの戦争では」
「どの戦争でもね」
 先生はとても悲しいお顔で言いました。
「命は犠牲になってきているよ」
「人もそうで」
「あらゆる生きものもだね」
「そうなってきているね」
「そして動物園もね」
 こちらもというのだ。
「同じだよ、戦争はあらゆるものを犠牲にして」
「動物園にいる皆も」
「そうなるね」
「悲しいけれど」
「そうだよね」
「いつもね」
「天王寺動物園でもだったね」
 先生は大阪のこの動物園のお話をしました。 
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