ハッピークローバー
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第百七十六話 暖衣その十二
「そうして飲んでね」
「そうするわ」
富美子は確かな声で頷いた。
「これからはね」
「そうするのよ、それとね」
「それと?」
「いや、最近思うけれど」
焼酎を飲みつつ話した。
「あんたの飲み方はいいわよ」
「楽しく飲んでるのね」
「溺れてないし自棄にもなっていないし無理にもね」
「飲んでいないのね」
「本当に楽しく飲んでるから」
だからだというのだ。
「いいと思うわ、そうした飲み方してね」
「わかったわ、いい飲み方しているのなら」
富美子は笑顔で応えた。
「この飲み方でいくわね」
「酔うのを楽しんでお酒やおつまみの味もね」
「楽しむのね」
「そうしたらいいわ」
また焼きそばを食べて話した。
「飲むならね」
「そうするわね、しかしね」
「しかし?」
「お姉ちゃんとお話するとね」
富美子も焼酎を飲みつつ話した。
「色々わかるわ」
「私なんかのお話が?」
「真実衝いていてね」
「そうかしら、私なんてまだ若輩者よ」
美奈代は自分に褒めて言う富美子に笑って返した。
「鼻タレといっていいわよ」
「そうなの」
「もう七十八十の人なんてね」
それこそというのだ。
「私なんかよりずっとね」
「色々わかってるの」
「知っててね、私達の何倍も生きてきて」
そうであってというのだ。
「色々なものを見聞きして経験して学んできているから」
「それでなのね」
「読んだ本の数だってね」
そちらもというのだ。
「私達とは比較にならないし」
「それでなのね」
「もうね」
それこそというのだ。
「全くよ」
「違うのね」
「そうよ」
こう話すのだった。
「本当にね」
「やっぱりお年寄りは凄いのね」
「長生きされているだけにね」
「だからお話は聞くことね」
「私なんかよりもね。ただね」
ここで姉はこうも言った。
「まともな人に限るわよ」
「お年寄りでも」
「やっぱりそこは人それぞれでね」
「まともじゃない人もいるわね」
「ドキュンがそのまま歳を重ねてもね」
それでもというのだ。
「ドキュンのままでしょ」
「そうね」
富美子もその通りだと頷いた。
「結局は」
「いい風に人生を積み重ねてるとね」
そうであると、というのだ。
「その言われることもね」
「確かなのね」
「けれどそれがね」
「ドキュンがそのまま大人になって」
「お爺さんお婆さんになってもね」
「碌な人じゃないのね」
「老害って言うでしょ」
美奈代はこの言葉も出した。
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