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ハッピークローバー

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第百七十六話 暖衣その十

「本当にね」
「破天荒な飲み方は駄目ね」
「自棄とかね」
「無頼派的な飲み方?」
 富美子はここでこう言った。
「太宰さんや安吾さんみたいな」
「そうそう、やっさんもそうなるしね」
「そんな飲み方は駄目なのね」
「暴れたには中原中也さんもだけれどね」
 詩人である彼もというのだ。
「この人太宰さんと仲悪かったけれど」
「あれっ、知り合いだったの」
 富美子はこのことを知って驚いた。
「太宰さんと中也さんって」
「そうだったのよ」
「へえ、それは知らなかったわ」
 姉に意外といった顔になって言葉を返した。
「そのことは」
「それで飲んでね」
「仲悪かったの」
「中也さんが怒って絡んで」
「太宰さんって気が弱いのよね」
「喧嘩する人じゃなかったわ」
 太宰はというのだ。
「それでね」
「言われっぱなしだったの」
「中也さん酒癖悪いし」
 そうであってというのだ。
「酔って絡んでね」
「太宰さんと仲悪かったの」
「それで暴れて」 
 中原中也はというのだ。
「出入り禁止になったお店多かったそうよ」
「中也さんも破天荒だったのね」
「十代で女の人と同棲しているのよ」
 美奈代は彼のそのことも話した。
「それこそね」
「破天荒の極みね」
「それで飲み方もね」
「そんな風だったの」
「それで詩も残して」
「あの人も若くしてよね」
「そう、お酒のせいじゃなかったと思うけれど」
 それでもというのだ。
「飲み方はね」
「無頼だったのね」
「無頼な飲み方、破滅的な飲み方はね」
「しないことね」
「ずっと楽しく飲みたいでしょ」
「ええ」
 富美子は即座に答えた。
「私もね」
「だったらね」
 それならというのだ。
「楽しく明るく飲む」
「暴れないで」
「無茶な飲み方はしないことよ」
「そういうことね」
「冗談抜きで飲み過ぎ身体に悪いでしょ」
「肝臓壊すわね」
「身体のあちこちをね」
 悪くするとだ、美奈代は語った。
「心臓にも悪いし中毒にもなって」
「アル中ね」
「日本酒だと糖尿病、ビールだと痛風もでしょ」
「あるわね」
「脳にもくるしね」
「坂口安吾さんみたいに」
「脳出血とか脳梗塞の原因にもよ」 
 酒の飲み過ぎはというのだ。 
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