六十年前
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第二章
「色わからないしな」
「だからね」
「カラー欲しいな」
「そうだよね」
こんな話をした、そして弟を駄菓子屋に連れて行きもした。
そこから歳月が流れてだ、令和になり。
すっかり歳を取った学は今は神戸で暮らしている悟が実家に帰ったのを受けて一緒になんばパークスに行った、そこでこんなことを言った。
「球場があったなんてな」
「もうわからないよな」
弟は笑って応えた。
「わし等が子供の頃は」
「そうだよな」
「南海と阪神のシリーズ観たな」
「そうだったな」
「その南海もな」
このチームもというのだ。
「今はな」
「大阪じゃなくてな」
「福岡だからな」
「ソフトバンクになって」
「ダイエーからな」
「変わったな」
「ああ、それで覚えてるか?」
学は隣を歩く悟に尋ねた。
「カラーテレビ欲しいってな」
「ああ、話してたな」
「父ちゃんが言ってな」
「そうだったな」
「次の年に買ったな」
「あの時本当に嬉しかったな」
「そうだよな」
こう言うのだった。
「夢中になって観たな」
「毎日な、それがな」
弟は笑って応えた。
「今じゃテレビなくてもな」
「スマホで観られるからな」
「電車に乗っていてもな」
「そうなってるしな」
「あとな」
悟はさらに言った。
「洗濯機とか冷蔵庫とかな」
「父ちゃんも母ちゃんも欲しいって言ってな」
「必死にお金貯めてたんだよな」
「お前が生まれた頃な」
「そうだったんだよな」
「あの時本当にな」
学は悟に共になんばパークスの二階の外の部分を歩きつつ話した。
「どれも高くてな」
「そうそうだよな」
「買えなかったんだよ」
「そうだったな」
「それがな」
「安くなったんだよな」
「どんどんな、今じゃな」
それこそというのだ。
「どの家にもな」
「全部あるな」
「そうだけれどな」
そうなっているがというのだ。
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