満月
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第一章
満月
満月は狼男が出るという、欧州ではそう言われている。
日本にもかつて狼がいたことは私も知っている、今もある場所に僅かながら生き残っていると噂がある。
そして私は今彼氏が満月の夜その狼男になったのを見たが。
「じゃあ最後はデザートのアイス食べようか」
「あの、貴方狼男になったのよ」
満月の夜に同棲していた彼がいきなり毛深くなり顔が狼になったのを見てこう返した、耳もそうなっていて完全に狼だ。
けれど顔立ちに迫力がない、それでテーブルに向かい合って座っている彼にさらに言った。
「変わらないじゃない」
「いや、普段は気を引き締めていて満月の夜にもならないんだ」
「同棲して一年だけれどはじめてよ」
「お酒かなり飲んだらなるんだ」
実はこれまで二人でかなり飲んでいる、ワインが安かったのでそれをかなり買ってパスタやチーズと一緒に楽しんでいたのだ。
「これがね」
「そうなの」
「そうだってことに気付いたのは大人になって飲む様になってからで」
「そうなの」
「後で聞いたら遺伝でね、母方の」
「貴方のお母さん日本人よね」
「代々ね、生まれはね」
私に平然として話す。
「そうだよ」
「それで狼なの」
「ニホンオオカミだよ」
「ああ、その狼ね」
私も言われてわかった。
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