ソードアート・オンライン stylish・story
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第十五話 工房
第48層 リンダース リズベット武具店
「ふわ~~あ、今日はお客さん来ないわね」
武器工房のテーブルに肘を着き、欠伸を掻きながら一人の少女が座っていた。
この少女こそ、この武具店の店長【リズベット】だ。アスナの数少ない友人で彼女の武具や防具のメンテナンスをやっている。鍛冶スキルも高く、彼女の作る武器は性能が良い為、武器を買いに来る人は少なくはなかった。
「オーダーメイドの武器も無かったし・・・今日は閉めようかしら?」
リズベットが店を閉めようと立ち上がると・・・
カランカラン
と客が店内に入った音が聞こえた。
「あ!お客さんが来たみたいね。接客も仕事の内っと」
リズベットは身だしなみに異常がないか確かめると武器が展示してある接客場に笑顔で入った。
「リズベット武具店へようこそ!」
リズベットが挨拶を言った瞬間・・・
ブオン!!
と低い音が部屋に響く。
その音の正体は真紅のコートを身に纏っている一人の男子が大剣を右手一本で軽々と素振りをしていた。
(うそ・・・あの大剣を片手で扱ってる!?)
リズベットは驚愕の念を抱えていた。自分が作ったから言える事だがあの大剣はどう見ても片手で扱える代物ではなかった。しかしそれを男子は軽々と振っていた事に信じられないと言う表情を浮べていた。
その男子はリズベットに気が付いたのかその剣を掛けてあった壁に戻すと彼女と向き合う。
「おっと失敬失敬!良い武器だったからよ。ちょっと素振りさせてもらったぜ?」
「あ、ありがとうございます」
「流石アスナが紹介するだけの事はあるみたいだな」
「えっ!?アスナと知り合いなんですか?」
「まあな。俺はシュウって言うんだ。今日は武器のメンテをして欲しくて来たんだが?頼めるか?この武器だ」
(シュウ?何処かで聞いた名前ね)
シュウは背中に仕舞っていたリベリオンを外すと、テーブルの上に置く。
リベリオンはこの前のラフコフの襲撃の時にかなり耐久値が減ってしまっていた。そしてメンテをしてくれる良い武具店がないかアスナに聞くとここが良いと聞き、出向いてきたと言う訳だ。リズベットは初めて見る大剣リベリオンに顎を抱える。
(リベリオン・・・【反逆】って意味よね?こんな大剣・・・初めて見る。でもメンテは出来そうね)
リズベットがリベリオンを持ち上げようとするが・・・
ガタン!!
とリベリオンの重さに耐え切れずに地面に落としてしまう。それを見たシュウは慌てて、リベリオンを広い上げる。
「おいおい!無理はするなよ!?この剣は少し普通の剣と違うんだからよ?」
シュウは右肩にリベリオンを担ぐとリズベットの様子を心配していた。
(マスターメイサーの私でさえ、持ち上げる事が出来なかったのに・・・この人の筋力数値って一体どれ位あるのよ!?)
「それで、お願い出来るか?」
「重かったですけど大丈夫です。新品同様にしてみせます!!」
「おっ!頼もしいね。期待してるぜ?んじゃメンテ代金は・・・」
シュウが代金を払おうとすると、他のお客が入ってきた。そして直ぐにリズベットの元に頼み込んだ。
「あの・・・槍のオーダーメイドをお願いしたいんですが?お金とレベルは大丈夫なのでここで作れる最高の槍を作って下さい!!性能は攻撃力が高ければ構いません!!」
その客は攻略組みのメンバーの一人らしく攻撃力を優先とした槍の作成を依頼してきた。
「槍ですか・・・。最近金属の相場が上がっていまして・・・」
「そうですか。分かりました・・・では改めて」
当然、武器を作るには金属などの鉱石が必要だった。しかし最近の金属の採掘が少なくなり、相場が上がってきていた。良い武器を作るにはそれなりの良い金属を用意する必要があるのだが、それには大金を支払う必要があった。
しかしリズベットが何かを思い出し、提案を出す。
「そう言えば。第58層の南に巨大なゴーレムがいるって聞いた事があります。そのゴーレムの眼が金属で鍛えたらそれなりの武器を作る事が出来るって聞いてますが・・・」
「第58層ですか。僕の力じゃ無理ですね。それにモンスターが強力になってきてるし、諦めるしか・・・」
最前線は60層までに達していたが、モンスターの凶暴性は変わらなかった。二人とも諦めた時にシュウが提案を出す。
「そうでもないと思うぜ?」
「えっ?・・・って、貴方はシュウさんじゃないですか!!先日の攻略にはお世話になりました!!」
「シュウ。攻略。真紅のコート・・・ああっ!!もしかして便利屋デビルメイクライの店主で、【真紅の狩人】で有名な、あのシュウさん!?」
今更思い出したのかリズベットは声を張り上げる。シュウは頭を掻きながら、答える。
「まあな」
「って事は・・・あっ!さっきの依頼。お引き受けします!!金属は何とかして手に入れてみます!!」
「・・・なるほど。分かりました!!では、お願いします!!」
この時シュウの脳裏には一つの事しか頭になかった。リズベットが交渉を成立させると攻略組みはお礼を言い、作戦会議があるとかで出て行ってしまった。それを確認したリズベットはシュウに商談を持ちかける。
「あの・・・シュウさん」
「敬語じゃなくて良いぜ?普通にシュウって呼んでくれ。そっちの方が親しみやすいし、俺も嬉しいってモンだ」
曇りの無いシュウの笑顔にリズベットは少し顔を赤くすると頷く。
「・・・そう。なら私もリズって呼んで?」
「了解。んで、話は何となく分かるぜ?金属の入手の手伝いだろう?」
「そう。それに金属を手に入れるにはマスタースミスがいないといけないみたいだし、シュウは私の護衛役って事で、便利屋デビルメイクライに依頼するわ。報酬は・・・」
「待った。報酬は俺に決めさせてくれ。そうだな・・・今回の修理費をチャラにしてくれ」
「えっ!?そんな事で良いの!?」
普通、護衛となるとかなりの報酬を要求される事になるのだが、シュウはメンテ代を無しにしてくれるだけで良いみたいだった。
「良いんだ。俺がそうしたいんだからよ。けどな、護衛をするには構わねぇがこれだけは約束してくれ」
さっきの笑顔とは別にシュウの顔には真剣な表情を浮べていた。リズベットはその表情にに息を呑み、聞き耳を立てる。
「俺が危険だと思ったら真っ先に逃げるか転移結晶で離脱しろ。それが条件だ」
「わ、分かったわ」
リズベットが了解するとシュウが表情を和らげ、自分の右手をリズベットに差し出す。
「商談成立だ。これから少しの間だがよろしく頼むぜ?リズ」「こちらこそ。シュウの腕に期待してるわね」
二人は握手を交わし、商談が成立した。
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